09 犠牲あっての幸福
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「イミテさん…」
イエローが弱気にイミテの名前を呼んだのに気づいて、イミテは「大丈夫だから。」と優しく言う。
そしてまた男達のほうに向き直り、真っ直ぐ言い放った。
「興味ない。どいて。」
「おー。最近のやつにしては珍しく威勢がいいねえ。」
「ま、そんな強気でいられるのも今のうちだけどな。」
1人の男がイミテの肩に触れようとした…が、
「ぐほっ!?」
お腹に強烈な蹴りをくらい、思わずその場にうずくまった。
「気安く触らないでくれる?」
「てめえ…!力で勝てると思ってんのか!?女だからって手加減しねえぞ!」
懐から短剣を取り出す男達。
イミテはふう、とため息をつき弓矢に手をかけた。
「な…!弓で剣に勝てるとでも思っ…て……」
男が言い終える前にイミテは矢を放ち、男の持っていた短剣にあててはじき飛ばした。
「命中力には自信があるから。…それでもやる気なら相手になるけど?」
男達は一瞬にして顔を青ざめ、舌打ちをしながらも道をあけた。
…力量の違いを悟ったのだろう。
「行こう、イエロー。」
「はい!」
しばらく進むと、港が見えてきた。
「そろそろ路地裏からでよっか?」
「ここまで来れば人ごみもなくなってるハズですもんね!」
「じゃあ次に大通りに続いてる道があったらそこから、」
「あれ?イミテさん、あの人…、何してるんでしょうか?」
「ん?」
ふと前を見れば、道の真ん中に仁王立ちしている男がいた。
真っ黒なフードつきのマントをかぶっているため、顔は見えない。
いかにも怪しいが、引き返すと遠回りになる。
「……イエローは少し離れてて。」
そう言ってイミテはその男に近づいた。
「そこ、どいてくれないかな?私達、港に行きたいんだけど。」
男はギロリとにらみつけるようにイミテを見る。
「ここはマチス様の支配地だ。無断で通すわけには行かない。今すぐ立ち去れ。」
「(マチスって、誰…?)マチスだか何だか知らないけど、路地裏は誰のものでもないでしょ?怪我したくなかったらどいてくれる?」
イミテがそう言い、弓に手をかけようとした瞬間……、
ダン!と大きな音が路地裏に響いた。
「…!」
「イミテさん…!」
その音は男がすきを見てイミテに攻撃をけしかけたからで、
今、イミテは壁に押し付けられたうえ両手を頭の上でおさえつけられていて、身動きがとれない状況になっている。
「イミテさん!!」
イエローが慌ててかけよろうとするが、
「動くな。」
男がそれを許すはずがない。
「さっきの言葉、そっくりそのまま返す。俺に勝てると思ってるのか?しょせん弓矢使いは、両手が使えなければ何もできない。」
抑えつけてる手に力がこもり、イミテは顔をゆがめるが、すぐに余裕の表情を見せる。
「もちろん、勝てると思ってるけど?私の武器、弓矢だけじゃないから。」
「なに…?」
「イミテさんを離してください!」
声のしたほうを向けば、そこには短剣を構えるイエローがいた。
それは以前、護身用として買ったものだ。
「他の武器とはアイツのことか?そんなもので勝ったつもりになるなんて…甘いな。」
男は黒い手袋をはめている片手をイエローに向けた。
「……?」
その不可解な行動にイエローが思わず首を傾げた、次の瞬間、
「!?」
カランカラン、と数メートル離れたところまで短剣がはじきとばされた。
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