08 その目に映る僕らの姿は
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「カスミ、怪我…!」
それは本当に、無意識的ななものだった。
カスミが怪我をしているのを見て、イミテは思わず彼女に近寄ろうとしたのだが……、
「来ないで…!!」
「っ…、」
そんな拒絶の言葉とともに、イミテは頬に鋭い痛みを感じた。
それはカスミがグラスの破片を投げたからで、ツーと、イミテの頬からは血が流れた。
「ち…近寄らないでよぉ!!化け物!!」
カスミは涙を浮かべながら、そう叫んだ。
「カスミ、聞いて…、」
「い、嫌…!」
イミテが近づくが、カスミは震えながら後ずさりをする。
「何かあったんです…か…?」
カスミの叫び声を聞きつけてイエロー達が部屋に入ってきたのだが、中の様子を見て思わず動きを止めた。
「イミテさん…!頬…!」
イエローはすぐにイミテの頬の傷に気が付いて、彼女のそばへとかけよる。
「お前……」
女中の持っている指名手配の用紙とカスミの隣にあるガラスから成り行きを推測したのだろう…、グリーンはカスミを睨みつけた。
「カスミも手、怪我して「早く…、早くでてってよぉ!!」
レッドがカスミの怪我に気づき近寄ろうとしたが、彼女が示したのは拒絶の反応で。
「……行こう。」
それを見たイミテはポツリとそうつぶやいた。
「え…?」
「ここにいても、怖がらせるだけだから。」
心なしかいつもより低い口調で言い、イミテはスタスタと部屋を出る。
「行くぞ。レッド、イエロー。」
グリーンも荷物を持ってイミテの後に続いたため、レッドとイエローも居心地の悪い空気が漂う部屋を出て行った。
結局、今日はハナダシティから離れた場所で野宿をすることになった。
「イミテさん、大丈夫でしょうか?」
イエロー達が焚き火の周りに集まって座っている一方で、イミテは少し離れた場所でぼんやりとどこか遠くを見つめていた。
「そっとしておけ。」
グリーンはそう言ったが
「…俺、様子見てくる。」
やっぱり気になってレッドはイミテのところに歩いて行った。
「イミテ。」
「……レッド。なに?」
「ここ寒くないか?あっちで火、あたろうぜ。」
「平気。もう少ししたら戻るから。」
「ありがと。」と、付け足したイミテの横顔に、カスミにつけられた傷はない。
イエローが光の能力で治したため、傷跡も残らずにすんだ。
「…気にしてんのか?カスミに言われたけと。」
レッドはストンとイミテの隣に座って聞く。
「ううん。そんなんじゃないよ。」
イミテはいつもと同じ表情で、口調で、淡々と返した。
「……そっか。」
レッドもそれ以上は追求せず、イミテが見ているのと同じ方向をぼんやりと眺める。
「(はあ…)」
イミテは心の中でため息をついた。
カスミに言われた拒絶の言葉を気にしているわけではない。
カスミの反応に、傷ついているわけでもない。
…だって今までも、それが当たり前だったから。
理解してもらえるなんて初めから思ってない。
だけど……
「(一瞬……、ほんの一瞬だけ、カスミなら受け入れてくれるかもって思ったんだけどなあ…)」
今回は心のどこかで期待してしまった自分がいて。
“何か困ってることとかあったら…頼ってね?”
だから何となく、いつも以上に虚しく感じている……ただ、それだけだ。
「きっと、カスミは悪くないんだよなあ…。」
レッドがふいにそんなことをつぶやいた。
「え…?」
「あれが普通の人の反応だから、俺達はそれを責められない。」
「……うん。そうだね。」
そう―…、それが普通。
それが当たり前。
「能力者に対する…あんな反応が普通になってるような、この時代の考え方がおかしいんだ。」
レッドはポンっと1回優しくイミテの頭を撫でると、スッと立ち上がった。
「俺が、変えてみせるさ。絶対に。」
レッドのその呟きは独り言のように小さく、でも…しっかりとイミテの耳に届いた。
月がより一層強く光り、
雲の合間から小さな一番星が顔を覗かせた、
そんな夜の出来事
もっともっと
強くなれるよ
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