08 その目に映る僕らの姿は
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
コンコン、というノック音のあと、
「おまたせ。」
薄ピンクのドレスに白いベールを羽織ったカスミがあらわれた。
「うわあ…!すごくよく似合ってます!」
その可憐な姿に、イエローは素直に感嘆の声をもらす。
「ふふ、ありがとう。なんだか照れるわね。食事の準備ができるまで、もう少しかかるみたいだから待ってて。」
「うん、分かった。」
「…。食事だけじゃなくて泊まっていってくれてもかまわないのに。どっちにしろハナダシティの宿に泊まるんでしょう?」
「いや…。」
グリーンは曖昧な返事を返した。
とにかくハナダシティを一刻も早く出るのが最善の策だから、今日は野宿をするか、運良くハナダの郊外に宿を見つけられればそこに泊まるかになるだろう。
そんな現状を口にしたら絶対に不審に思われる。
「せっかくですし、お言葉に甘えてもいいんじゃないですか?」
「だよなあ…。グリーン、一泊ぐらいいいんじゃないか?」
彼の心情を知る由もないイエローとレッドは納得がいかなそうだ。
「……レッド、イエロー。ちょっとこい。」
そんな彼らに説明するため、グリーンは席を立って部屋の外へと向かう。
扉を閉めるとき、グリーンはイミテに目配せをした。
カスミを見張っててくれ、という意味なのだろう。
「騒々しくてごめん。とりあえず泊まるのは遠慮しとくよ。夕食だけお言葉に甘えさせて。」
「ええ…。何かすぐにでもハナダを出なきゃいけない理由があるの?」
「ううん。ただ早く次の町に行きたいだけだよ。」
なんとなく悟ってそう聞いてきたカスミに、イミテは至って自然な様子で接する。
「イミテ達って、なんのために旅してるの?」
「………。」
核心をつかれ、イミテは口を閉ざしてしまった。
親戚の家がこの先の町にある、とか数日後に出航する船に乗らなければいけない、とか…何とでもウソはつけたはずなのに。
……カスミになら、
「ごめんなさい!言いたくなかったら言わなくていいわ。ただ私ができることがあるなら、力になりたいと思っただけだから。」
真実を告げても平気かもしれないと、
心のどこかで思っていたのかもしれない。
「何か困ってることとかあったら…頼ってね?」
にっこりと、優しい笑顔をうかべたカスミ。
「カスミは、さ…」
―………もしも彼女が自分達が能力者であることを、受け入れてくれたとしたら…。
バタン!
そんな音とともに荒々しく扉が開いた。
「カスミ様!」
入ってきたのはレッド達ではなく、1人の女中。
よほど急いで来たのか、息を切らしている。
「そんなに慌てて…どうかしたの?」
「カスミ様!今すぐソイツから離れてください!早く!」
女中はかすかに震えながらも、イミテを指差し大声で言った。
「ちょっと、落ち着い「ソイツは…能力者なんです!」
「え……?」
「さっき二ビから指名手配の知らせが届いて…!元ニビの軍人で、脱獄者なんです!!」
バレてしまった―…。
「っ…!(兵を呼ばれる前に、ここから逃げないと…!)」
最悪の事態に、イミテは焦りを覚えながらも、とりあえず弓矢を手にとった。
「な、何する気!?武器を捨てなさい!カスミ様!早くこちらへ!!」
「……。(どうしよう…。)」
状況としてはカスミを人質にとってこの城から脱出するのが最善なのだが…、さすがにそれはしたくなかった。
「(いったん、レッド達と合流して……)」
そんなことを考えていると、ガシャンと後ろでガラスの割れる音がした。
見れば、カスミが床に膝をついていてそのすぐ近くに割れたグラスが落ちている。
「!カスミ様!」
その破片で切ったのか、カスミの手首からはポタポタと血が流れおちていた。
.