08 その目に映る僕らの姿は
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その後は特にハプニングもなく、辺りが薄暗くなり始めた頃、ハナダシティについた。
城下町をぬけ、少し歩くと大きな城が見えてきた。
「お。あれか?」
「ええ!よかった、無事に着いて。…ねえ、お礼もしたいし、城に寄っていってくれないかしら?」
「……へ!?」
予想もしていなかった展開に、レッドが思わず声をあげる。
「一般人、城の中にいれていいのか?」
「今はお父様もお母様もいないし、この城で一番権力があるのは私だからいいの。」
カスミはにっこりと笑って言う。
護衛達は思わず顔を見合わせたが、こうなってしまっては何を言っても無駄だ、と、客人をもてなす準備にはしった(城の中にいる女中に連絡したり、門番に伝えたり…だ)。
「それに友達を家に招待して何が悪いの?」
ウインクとともに言ったカスミに、レッドはハハッっと苦笑する。
「護衛が言ってた通り、おてんばなお姫様だなー、カスミは。」
「今はおてんばは関係ないでしょ!」
少し頬をふくらませたカスミを見て、また苦笑。
「どうする?」
レッドはふりかえってイミテ達に聞いた。
「………。」
グリーンは険しい表情をしている。
彼としてはいつニビシティの情報が伝わるか分からないから、一刻も早くこの町を出たい。
しかし、ここで上流階級の者の誘いを断るのは端から見てあまりにも無礼にあたるのだろう。
「グリーン。」
そんな彼の考えを察したのか、イミテがカスミ達には聞こえないように声をひそめて言う。
「ニビからハナダまでは距離がある。とりあえず形だけでも、誘いは受けたほうがいいと思うよ、私は。」
「…そうだな。」
「何の話しだ?」
「後で説明する。」
レッドにそうサラリと返し、グリーンはカスミに「先を急いでいるから長居はできないが、いいか?」と聞いた。
「ええ、もちろん!夕飯だけでも食べていって。」
カスミは嬉しそうな表情を見せ、「ごくろうさま。門を開けてちょうだい。」と門番に言う。
ゴゴゴ…という音をたてて開いた門の先に見えたのは、何十人もの兵が片膝をついている姿。
馬車はその真ん中をさっそうと進む。
城に入ると、これまた何十人もの女中がいた。
「食事の準備をお願い。この方達を丁重におもてなしして。」
「はい、カスミ様。お食事のご用意ができるまで、客間にお通ししたほうがよろしいでしょうか?」
「まかせるわ。じゃあ私は着替えてくるから、それまでくつろいでて。」
「ああ。」
女中が客間に案内しようとして歩き出したとき、カスミが優しい口調で後ろから声をかけた。
「また食事のときにいろいろ話しましょう。私、もっとアナタ達と仲良くなりたいわ!」
人なつこい笑みとともに。
「やっぱカスミって王女様だったんだな~…。」
紅茶の入ったいかにも高価そうなティーカップを眺めて、レッドがつぶやいた。
「カスミさんって全然そんな感じしませんよね。すごくよくしてくれるし。社交的っていうか、壁がないっていうか。」
「今日知り合った私達のこと、“友達”って言ったぐらいだもんね。」
「ちょっとビックリしたけど、でも仲良くなりたいって言われて…すごく嬉しかったです。」
イエローが頬を赤らめてはにかむ。
「仲良くなりたい…か。」
イミテは思わず復唱した。
「?どうした?」
「…何でもない。」
カスミのあの言葉には、純粋に仲良くなりたいという意味だったのだろうか?
山賊に襲われたあとから、カスミはレッドを盗み見していた。
そしてほんのりと頬を染めるその様子は、まるで恋をしているようで。
少なからずとも、レッドに対する好意も含まれていたのではないのかと、イミテはそう感じていたのだ。
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