08 その目に映る僕らの姿は
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日、カーテンから差し込む光でレッドは目を覚ました。
「……。」
左腕で目をおおい、光をさえぎる。
しばらくそのまま布団の中でぼーっとしていたが、だんだんと意識がはっきりしてきて昨日のことを思い出していた。
昨日は城から無事に脱出した後、一昨日と同じ宿に泊まったのだ。
布団の中でぐーっと大きく伸びて、そして部屋の中を見回したが、
「(あれ…?)」
奥の部屋にあるベッドで寝ていたはずのイミテとイエローの姿がなく、隣の布団で寝ていたグリーンの姿もない。
「(寝過ごした…!?)」
一気に目が覚めて、レッドはベッドから飛び起きる。
すると、ちょうどその時ガチャッという音がして扉が開いた。
「あ、起きてたんだ。おはよう、レッド。」
入ってきたのは食事の乗ったお盆を手にしたイミテだった。
「…おはよ。」
彼女は手際よくローテーブルに食事を並べていく。
「それ、朝食?」
「うん。女将さんが作ってくれたやつ。」
「何でイミテが用意してんだ?」
「1人で人数分運ぶの大変でしょう?イエローも手伝ってるから、たぶんもうすぐスープ持ってくると思うよ。」
「ふーん。だから誰もいなかったのか。まさかグリーンも手伝ってんのか?」
「グリーンはニビシティまで偵察に行ってる。」
「へっ!?1人で!?起こしてくれれば俺もついていったのに…」
「レッドは昨日ので顔見られたから偵察は無理だよ。」
昨日グリーンも城に侵入したわけだが、なるべく軍人に顔を見られないように行動していた。
一度、門に向かう時に大勢の軍人の横を通ったが、あの時は混乱していたし何より辺りが暗かったため大丈夫だったのだろう。
「それに、気持ちよさそうに寝てたから寝かせとけって、グリーンが。」
「え…」
「何かいい夢でも見た?幸せそうな顔してたけど。」
イミテが微笑しながらレッドにたずねる。
「(夢…。たしか…)マサラタウンの草原で俺とグリーンが剣の修行してる夢…だったなあ、たぶん。」
「マサラの夢か…。」
イミテがポツリと繰り返す。
目を細めて懐かしそうに。
「で、その少し遠くで誰か…女の子が花をつんでて。」
「え…?」
「幸せそうに笑いながら、俺達に向かって…手、ふってた。」
そう、たしかそれは自分達と同い年ぐらいの少女だった。
夢の中で、マサラの木々や花はすごく鮮明に再現されていたのに、不思議なことに彼女だけは蜃気楼のようにもやがかかっていてよく分からなかった。
だから顔ははっきりとは分からない。
そして特に何をしたというわけではない。
でも、穏やかで優しくて……幸せな夢だった。
「……。」
イミテはそれを聞いて黙りこむ。
その少女とはきっと―…いや、確実に自分のことで、レッドが見た夢は、昔の…マサラで過ごしていた時の日常だ。
「イミテ…?」
「…うん。」
今はまだ思い出してくれなくてもいい。
………それだけで、じゅうぶんだ。
.