07 おぼろげな記憶の中で
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3人の姿が見えなくなったところで、イミテはくるりと向きを変え、改めてタケシと向き合う。
「もしかしてずっとそこにいた?」
「…いや。俺は裏門を担当していて、騒ぎを聞きつけてこっちに来た。だから今来たばかりだ。」
「そう。……わざわざ、ごくろうさま。」
イミテがスッと弓を構え、それに対抗するようにタケシも鉄の槍をかまえた。
「私はもう、この城には戻りたくない。かつての仲間に会って、自分の意志で動ける居場所を探したいって…そう、思えるようになったから。」
「……。」
「だから、力づくでここを抜け出してみせる。」
それは、力強い言葉だった。
タケシはその様子を見てフッと笑みをうかべる。
「……いい表情(かお)だな。」
そうつぶやくと彼は槍を手放した。
必然的に槍は地面に落ち、カランカランという音が響く。
「…!?」
「俺はお前を連れ戻すつもりはない。」
「え…?」
「軍人として城の警備をしていた頃とは大違いだ。イミテ。お前、そんな意思の強い目するんだな。」
イミテは芯が通った性格のため、城にいた頃も凛とした眼差しをしていたが…、今はそれとはなんとなく違う。
その瞳からは以前のような生を否定し人を拒絶するような悲観的な意思はもはや全く感じられず、穏やかで澄んでいて清らかだ。
いや、これが彼女の本来の姿なのかもしれない。
こんなにも穏やかで、凛としていて、綺麗で―…。
「行け、イミテ。」
タケシはまた目を細めて笑うと、優しい口調でそう言った。
「なんで…!?」
「言っただろう?連れ戻すつもりはない…と。」
「…私を逃がしたら困るのは自分自身だよ?」
「人の心配より自分の心配をしろ。それに、俺は平気だ。どうせ誰も見てない。」
その言葉を聞きイミテが周りを見渡すと、たしかに軍人達は炎を消すことに一生懸命で、ここにタケシが来たことにすら気がついていないようだ。
「……。」
でもやはり納得いかなそうなイミテに、タケシは言う。
「ただお前を逃がすための条件が1つある。」
「条件…?」
「この先、後悔しない道を生きろ。必ずだぞ、いいな。」
「……。」
タケシは正門を指差して続けた。
「イミテはじゅうぶん頑張った。もう自由になっていいんだ。…さあ、早く行け。」
「私、は…」
イミテは言葉につまってうつむいた。
でもしばらくしてバッと顔をあげる。
その瞳はやはり、澄み切っていて綺麗だ。
「無駄にしないから、絶対に。……ありがとう。」
そう言って、イミテは一回深々とお辞儀をした。
反動でフサア…と彼女の長い髪がやわらかくゆれる。
イミテはその後すぐに、正門に向かって走って行った。
「(よかったな…。)」
イミテが無事に門から城の外に出たのを見届けて、タケシはそう安堵のため息をもらす。
するとそこに、
「お前…、脱獄者を逃がしたな?」
「!」
………あの男が。
「イミテ!」
正門をくぐりぬけたイミテの腕を、レッドがパシッと掴んだ。
「レッド…!?先に行ってって言ったのに。」
「何かあったらすぐに行こうと思ってさ。1人じゃさすがに危険だろ。それに4人だと目立つから、グリーンとイエローには先に行ってもらった。」
「まあ…たしかに。」
イミテはどことなく力なく笑った。
彼女の心の中は今、城で過ごした今までの思い出が一気にあふれ出てきて、複雑なのだろう。
城で経験してきたことは、やりきれないことや苦しいことが大半だったろうが、その中で学んだこともたくさんあったハズだ。
「さ、早くグリーンとイエローのとこに行こうぜ!」
そんなイミテの様子を見て、レッドは彼女の頭をふわりと優しくなでて言った。
「うん。」
イミテは、穏やかな笑みを返す。
月明かりに照らされたその表情は、とても綺麗なものだった。
暗がりの中で得たのは
無駄なものばかりじゃなかった
ふりむかず、足も止めず、
キミに手を引かれて
キラキラと輝く、未来を目指す
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