06 透きとおる音色に
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「イミテ。もう少しお前に、仲間との時間を過ごさせてやる。」
「…もう少しって、どういう意味?」
「今日お前らの動きを見ていて確信した。お前ら、王に復讐するつもりだろう?」
「「!」」
レッドとイミテは思わず顔を見合わせる。
今日1日監視されていたなんて、全く気が付かなかった。
このぶんだとイエローはもちろん、グリーンでさえも気づいていないだろう。
「だが残念だ。王は明日の明け方から遠征に行くそうだぞ?復讐する機会は今夜しかない。」
「遠征…!?」
「………。」
レッドは驚いて声をあげたが、イミテはジッと男を睨んだままだ。
「イミテ。お前はそれを見過ごせない。俺はお前が必ず城に来ると確信している。」
「(なるほど。さっきのもう少しの意味は…)」
「この場は見逃して、その時に改めて捕まえてやるよ。」
「(…やっぱり。)…そんな見え見えの罠にひっかかる人、早々いないと思うけど?それに、遠征っていうのもどうせウソでしょ。」
「クク…。嘘だと思うなら、城に行って確かめればいいだろう?」
「……らちがあかない。行こう、レッド。」
男がいる道とは別の道を選んで、歩き出したイミテ。
「せいぜい残り少ない時間を有意義に過ごすんだな。クク…。」
男は、そんな彼女の様子をまるであざ笑うかのように言うと音もなく路地裏に身を隠した。
「なあ、イミテ。あの男の話、嘘じゃない可能性って全くないのか…?」
「…なんで、そんなこと言うの。」
宿に向かって歩いている最中、レッドがポツリとつぶやいた言葉に、イミテは彼の方を全く見ずに返した。
「俺は、一度確認したほうがいいと思う。もし遠征が本当だったら…、」
「必要ないよ。罠に決まってる。」
「…でも、あんな状況で嘘つくメリットがあの男にあったのか?あの嘘は時間かせぎで、話してる間に仲間を呼んだとかなら納得いくけど、一向に追っ手もこないし…。」
レッドの言うことは確かに道理にかなっている。
イミテも気づいている。
遠征というのは本当の可能性が高いと。
きっと今ニビシティは死刑囚が脱獄した、という話でもちきりだ。
民衆の恐怖や不安は、王や軍隊に向けられ反乱が起こるかもしれない。
だからこそ事態が収まるまで遠征をして身を隠す。
…など、いかにもあの身勝手な王が考えそうなことだ。
でも……、
「………。」
イミテは無言のまま。
レッドは昔の…いや、マサラが襲われた時の記憶がない。
だから仕方ないことは分かっている。
でも、彼がこんなにもすんなりとあの男の言うことを信じようとしているのはやはり…辛くて。
「(私は、世界で一番あの男のことを憎んでいるのに…。)」
理不尽だと思いつつ、苛立ってしまいギュッと拳を握った。
「……イミテ、聞いてるか?」
「聞いてる。…そんなに気になるって言うなら、行こうか。城に。」
イミテは振り向いて、言った。
それは半ば投げやりになったような感じで、口調と表情はいつもより冷たい。
辺りが暗くなってきたせいか、イミテがそれをうまく隠したせいか、レッドは彼女の変化に気がつかなかった。
「ああ。きっちり確かめよう。」
だからレッドはいつもと変わらない、意志のある強い口調で言う。
ほんの少しの思い違いをかかえ、2人は城に向かって来た道を歩き出した。
この判断が、吉とでるか、凶とでるか。
まだ、誰もしらない。
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