06 透きとおる音色に
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「…城から逃げ出したんだってな。」
無機質に響く、男の声。
その手には剣が握られていることから、剣で矢をはらったのだろう。
「それを知ってるってことは、捕まえにきたの?」
「まあな。王の命令でお前を探してた。『殺してでもいいから捕まえてこい』って言われてな。ククッ…。」
「!」
男の笑い方は数年前と全く変わっていない。
「まさかお前が逃げ出すとは思わなかった。やはり命が惜しくなったのか。」
「……。」
「逃げて、どうするつもりだ?お前を受け入れてくれる場所なんてないことぐらい、分かってるだろ?」
男は冷たい表情とともに言う。
「この先、お前の居場所はない。」
「…ッ!」
イミテの表情がギリッと歪んだのを見て、レッドがバッとかばうように立つ。
「何でお前がそんなこと言うんだよ…!居場所なんてなければつくればいいだけだ!」
「!お前…!…そういうことか、ははははは!」
レッドを見て、男は高らかに笑い始めた。
「イミテ。お前が心変わりした理由は大切な仲間が迎えに来てくれたからか。クク。くだらない友情ごっこをしてるなんて、相変わらずガキだなあ。お前らは。」
「(相変わらず…?誰だ、コイツ…。)」
まるで自分のことを知っているような話しぶりをする男。
しかし、レッドは彼が誰なのか全く思い出せないし…見覚えすらない。
「それにしても生きてたとはなあ…。しぶといやつだ。」
「…お前、」
「……友情ごっこなんて、そんな軽いものじゃない。」
今度はイミテが一歩前に出て言う。
「私は城にはもどらない。絶対に。」
強く、言う。
「それに、私もレッドもあの日より強くなった。あの頃とは違う。」
イミテは今度は自分の足元に向けて矢を放つ。
その矢から出た蔓が、男に向かって伸びていく。
「おっと…!本当、便利な能力だな。」
男は余裕の表情を浮かべ、その蔓をよける。
「だが、俺のが完全に優勢にいることを忘れるな。無線機で今の状況を伝えれば、何十人もの軍がここに集まる。」
「!」
その言葉にイミテは蔓の動きを止める。
男はニヤリと笑うと、蔓を飛び越えイミテの方へと走ってきた。
さすがに動かれていては的が定まらない。
それに気づいたレッドが剣をふると、炎の能力によって剣から火の粉が飛び散る。
「!」
男はあわてて距離をとった。
「お前も能力者、か…。やっかいだな、お前ら…。」
男は少し考えこみ、ダッとレッド達がいるのとは反対方向へと走りだした。
その突然の行動にレッドとイミテは武器を構えて警戒する。
「身構えなくてもいい。さすがに軍人が来る間能力者2人を足止めするのはキツいからな。まあ…今は見逃してやるよ。」
その言葉は本当らしく、男はじゅうぶんな距離をとって建物の柱に隠れるように身をひそめていた。
いつでも逃げられる状況だ。
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