05 思い出せるのは残酷な過去
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そういえば、殺される前親父さん言ってたな。『妻と娘だけは殺さないでくれ』って。…だから俺は、お前の母さんを殺してやったんだよ!目の前でな!」
「……っ!」
「あの時のあの男の顔…傑作だったぜ!ハハハハ!」
イミテは懐から短剣を出し、男の首元にあてた。
「それ以上言うと…殺す!!」
彼女の目にはまた、うっすらと涙が浮かんでいた。
「そういきり立つなよ。せっかくだから、もう1ついいこと教えてやるよ。能力者について。」
「……。」
「能力者をかくまった町は罰をうける。それがこの国の掟だ。」
「そんな嘘、私が簡単に信じるとでも思ってるの?」
「嘘、か…。まあ、信じなくてもいい。そういえば、たしかトキワの森だったな。あそこも焼き払われたんだ。能力者がいたからな。」
イミテは顔をしかめる。
トキワの森という単語に、聞き覚えがあったからだ。
「(確か前に長老が家にきてお父さんと話してた時…ついにトキワの森も…って言ってた。まさか…、掟って本当の話し…?)」
「目的は能力者を捕まえるためだ。ほうっておいたら反抗された時に不利だけど、見方にすれば心強いだろ?」
トキワの森の能力者は捕まらなかったみたいだけどな、と男は付け足す。
「親父さんと同じで、お前も見るからにお人好しそうだな。」
「そんなことない…!」
イミテの言葉を聞いた男はニヤリと笑い、少しだけ首を前に動かす。
すると、イミテが突きつけていた短剣が男の首にかざり浅く切れて、血が流れ出る。
「や…!」
イミテは驚いて、短剣を落とした。
「ほら、な。人を傷つけることに慣れてない。」
「そんなの、」
「…お前がここにいたら町の皆は死ぬぜ?」
「!」
イミテの表情がこわばったのを、男は見逃さなかった。
「お前、軍人になって俺の国の城を守れ。」
「っ!そんなの嫌に決まってるで「そうすればこの町にはもう手をださない約束してやる。」
イミテの言葉を男が遮る。
「…交換条件ってこと……?」
村のために、自分を差し出す。
それが男が言っている意味。
「お前に選択肢はないと思うけどな。」
男の言うとおりだった。
自分がここにいたら、周りの皆にも被害が及ぶ。
それにこれを断ったとしても、またしばらくしたら軍隊が攻めにくるだろう。
いくら能力があるとはいえ自分1人じゃ、守りきれない。
「どうする?」
「………。」
イミテは無言で頷いた。
(だって、他に道なんてないんだから)
数十分後、グリーンが戻ってきた。
「イミテ、レッドはなんとか大丈夫そうだ。まだ意識はもどらないが…、」
…しかし、そこにはイミテも男も誰もいなかった。
「イミテ……?」
つぶやいてみてもそれは辺りに悲しく響くだけ。
「……!」
彼はふと岩の上に1枚の紙切れを見つけた。
すぐにそれを手に取り、目を通す。
急いでいたのか、その内容は殴り書きだ。
「…!」
読み終えたとたん、グリーンは走り、辺りを探すが、すでに誰もいなかった。
.