05 思い出せるのは残酷な過去
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お前の両親は、この町を守るために戦ったんだ。皆、感謝してる…。無駄死になんかじゃない…。」
「知らない!そんなの知らないよ!さっきだって町の人達、何もしてくれなかったじゃない!」
「そんなことない。長老は今、レッドを助けようとしてる。町の皆も同じ気持ちで、長老の家に向かったんだ。」
「それは、男が動けなくなって安全になってからでしょう!?皆、後から優しいふりし始めて…。偽善だよ、こんなの…!」
「イミテ…」
「絶対に感謝なんかしてないじゃん!絶対に、自分のことしか考えてない…!ひどい、よ…」
ポロポロと、イミテの目から涙がこぼれる。
グリーンは正直、とまどっていた。
イミテは人を疑うことを知らないような本当に純粋で、いつも楽しそうに笑っていて、マサラタウンが、マサラの皆が大好きだったのに。
彼女が、そんなことを言うなんて。
きっと今、彼女の心は何も信じられない。
大きな大きな、傷がついた。
「分かった…、分かったから。もう…、何も言うな…。」
少しでも、少しでも。
その傷が癒えるように。
想いを伝えるように。
グリーンは優しくイミテを抱きしめた。
これ以上、傷つかないでほしい。
これ以上、人を嫌わないでほしい。
「……うっ、ひっく…」
その後しばらく、イミテの泣き声だけマサラタウンに響きわたる。
イミテが落ち着いてきたころ、グリーンは彼女の両親の遺体の上に自分の上着をかぶせた。
するとそれを見ていたイミテが重い口調で話しかける。
「ねえ、グリーン…。」
「…このほうがいいだろ?」
「違うの。そうじゃなくて…。……レッドも、いなくなっちゃうのかな…?」
イミテは消えそうな声でつぶやいた。
グリーンは一瞬驚いたが、すぐにフッと笑うとイミテの頭を優しく撫でる。
「そんなわけないだろ。アイツはかなりしぶといからな。すぐに元気になる。」
「そう…、だよね。」
「様子、見に行くか?」
「ううん。私、こんな顔じゃ見にいけないからさ。その人のこと見張ってる。グリーン、行ってきて…?」
泣いて真っ赤になった目と鼻を指差して、イミテは言った。
「だが…」
グリーンは男をにらんで言葉をにごす。
「何もしねーよ…。縛られてるんだしよ。」
男は不機嫌そうに言った。
「平気だよ。ね?」
イミテがそう言うと、グリーンは「すぐ戻る」と言い歩きだした。
グリーンが完全に見えなくなった頃、男が口を開く。
「まさかお前みたいな小娘が能力者だったなんてな。緑の能力か。また、やっかいな…。」
「話しかけないで。」
「クク…。なあ、お前の両親がどんなふうに死んだのか聞きたくないか?」
「っ!うるさい!!」
イミテの言葉など無視して男は話し続ける。
「お前の親父さん、弓矢がうまいよな。危うくあたりそうになったぜ。その危機を俺がどう乗り越えたと思う?」
「うるさいってば!!」
男はニヤリと笑うとわざと声を張り上げた。
「人質だよ!人質!近くにいたやつをとっつかまえてよお、動くと殺すぜって言ったんだ。お人好しだよな、お前の親父さん。すんなり言うこと聞いてくれたぜ?」
ハハ、と男は笑う。
「……。」
イミテは何を言っても無駄だと思ったのか、その事実にショックをうけたのか、黙りこんだ。
.