05 思い出せるのは残酷な過去
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「!?」
レッドは信じられないといった様子だった。
なぜならイミテはさっきまで百発百中ともいっていいほど、的をはずさなかったのだから。
「ど…どうして……?」
しかし1番驚いているのはまぎれもなく、イミテ自身だ。
グリーンがイミテの右腕をつかんで言う。
「見てみろ。」
「……っ、」
イミテの腕はガタガタと震えていた。
怒りからか、それとも悲しみからか。
恐らく両方が入り混じった、複雑な気持ちなのだろう。
「……離して!!」
イミテはグリーンの腕を振りはらい、再び弓を構える。
「次は…はずさない…!このままじゃ…お父さんとお母さんが…!私が…やらなきゃ…私が……っ、」
イミテは涙を流しながらそう言った。
今、彼女の心を支配しているのは、…恨みだ。
「イミテ!!復讐なんて考えるなよ!」
レッドがイミテの肩をつかんで大きく揺すった。
いつもは穏やかな彼が、今はこんなにも厳しい目をしている。
「イミテのお父さんとお母さん…イミテがそんなことしてほんとうに喜ぶと思うか!?」
「じゃあどうすればいいの!?お父さんもお母さんもアイツに…。ただ黙って見てるなんてできないよっ!!」
イミテもレッドと同じくらい、激しく叫ぶ。
「…だからって復讐なんて…!」
「やだ…。お父さんもお母さんもいなくて、私…、1人になったんだよ…?あの男が…ものすごく憎い。殺してやりたい…!」
「イミテ…!」
「だって、この気持ちどうしろっていうの…!?悔しくて、仕方ないよ…!」
イミテの叫びは、辺りに悲しく響く。
そんなイミテを見て、レッドは彼女を自分の元へと抱きよせた。
「1人じゃない!俺も、グリーンもいるから…!1人じゃないんだ。」
「…っ、」
「イミテ、復讐なんてしたって、自分が虚しくなるだけだ!!」
「…っ!そんな、目の前に、いるのに…!こんなに近くに…っ!」
「…イミテ!」
レッドはギュッとイミテを抱きしめた。
自分の思いを伝えるかのように、優しく、優しく…。
「…―!」
イミテはレッドの胸に顔をうずめて、声を押し殺して泣いていた。
ギュッと、レッドの服を握って…
まるで憎しみをも押し殺すかのように―…。
「友情ごっこか。」
男がゆっくりと歩み寄ってきた。
イミテは男の声にビクッと小さく肩を震わせ、レッドの服をギュッと掴む。
レッドはイミテに「大丈夫だ」と一言言うと、そっと体を話す。
「なんだよ。もう反抗しないから…。」
「そんなことを言ってるんじゃねえんだよ。これからの問題じゃなくて、その女、俺に向かって矢をうったよな?」
「……。」
「それがどうした?」
今だに震えたまま声が出せないイミテ(おそらく怒りと悲しみを必死にこらえているのだろう)に変わり、グリーンが答える。
「クク…、俺を刃向かった罰として……、殺す!」
「なっ……!」
「!」
男はニヤリと笑うと銃口をイミテに向けた。
「イミテ!よけろ!!」
「え…、」
―――バン!
「っ、」
銃声と同時にズザッという音がして、イミテが地面に倒れ込んだ。
「イミテ!」
「痛…ッ、」
でも、彼女はすぐに体をおこす。
「無事か!?怪我は!?」
「う、ううん…。平気…。」
不思議なことに、イミテには左腕と左足に少し擦り傷ができただけだ。
銃弾はあたってないようで、グリーンはほっと胸をなで下ろす。
直後、「きゃあああ!」という声が聞こえた。
イミテではない。
叫んだのはマサラの人だ。
それに促されるように、ザワザワと皆が騒ぎ出す。
「え…?」
その方向に目をやれば、
「レッ、ド…!?」
レッドのお腹辺りから鮮やかな血が流れている。
「レッド!!」
出血が多く、彼の服はどんどんその血の色に染まっていく。
そう、レッドは撃たれる瞬間、イミテを突き飛ばしていたのだ。
…自分が犠牲になる覚悟で。
.