05 思い出せるのは残酷な過去
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「ハハハ!」
この場には不謹慎な笑い声が辺りに響いた。
男の、笑い声だ。
「お前、こいつらの娘か。こりゃあ、傑作だ。来いよ。確かめさせてやる。」
男は近づいて、イミテの腕をグッとつかんだ。
「痛…!」
「!なにすんだよ、お前!」
「邪魔だ!」
「っ!」
レッドがそれを引き離そうとするが、力で勝てるはずもなくあっけなく振りはらわれた。
それを見たグリーンが思わず刀の柄に手をかけたが、「グリーン!よさんか!」というオーキド博士の言葉に、ピタリと手を止めた。
「レッドもグリーンも…今はこらえるんじゃ…!」
「「……っ!」」
ただ固唾をのんで黙って見ていることしかできない。
そんな現状に2人は悔しそうに顔をゆがめた。
「ほら、見てみろよ。」
「…っ、」
男に半ば引きずられるような形で、両親の目の前までやって来たイミテ。
しかし、イミテはギュッと目をつむっていた。
「せっかく連れてきてやったのに、なんだ、その態度は!?」
「…っ!」
男はいらだったように声をあげたが、イミテは肩をビクリと震わせ、よりいっそう固く目をつむる。
(見たくない)
(知りたくない)
そんなイミテの様子を見て、男はニヤリと笑った。
「だったら…こうすれば死んでるって、嫌でも分かるな!」
「!?」
突然、ぬるりとした感覚がイミテの手に伝わった。
男が無理矢理イミテの手をつかみ、血をさわらせていたのだ。
「い、嫌…!」
イミテはあわてて手を引っ込めようとするが、男の手がそれを許さない。
「離して!!」
手を振りはらおうとして、イミテは…目をあけてしまった。
「ッ!」
間近にある…嫌でも目にはいるのは、自分の両親の血に染まった姿。
どこから血がでているのかも分からないぐらい、真っ赤に染まっている。
肌は青白く、生気は全く感じられない。
(―…死んでいた)
「い…嫌…!やめて!!」
バッと男の手を振りはらい、イミテは後ろに尻もちをつくように倒れた。
彼女の手には、べったりと血がついている。
「!」
自分で確認した。
もう目をそむけることはできない。
「……っ、」
紛れもない事実に、イミテの目から涙がこぼれた。
肩を震わせて音もなく静かに、まるでその悲しみと同化するように、彼女は泣いていた。
「…っ、イミテ!!」
その様子を見て堪えきれなくなったように、レッドが走り出した。
すぐさまグリーンも続く。
「レッド!グリーン!」
オーキド博士の言葉など、もう彼らの耳には届いていない。
「イミテ!」
レッドがギュッと、血がついているほうの彼女の手を握った。
「……な…で…?」
「え…?」
「なんで…お母さんと、お父さん…なの…?」
涙が頬を伝う。
それはポロポロと落ちて地面に染み込み、色を変えた。
「クク…。俺が殺したんだ。夫婦して俺様に刃向かったからな。」
男が淡々と真実を告げた。
情もなく、無機質に、言った。
「っ、許さない…!絶対に…!!」
イミテの中で何かがはじけたように、彼女は勢いよく立ち上がった。
「やめるんじゃ!イミテ!」
「イミテ!」
オーキド博士やレッドの制止も虚しく、イミテはかついでいた矢立てから矢を1本をとる。
「!」
男が銃を向ける暇もないくらい早く、矢を勢いよくはなった。
……しかし、その矢は男に当たることなく、数十センチ左の壁に突き刺さる。
「あぶねえなあ…ガキが。しっかし、こんなへなちょこの矢が当たると思ってんのかよ。ハハハ!」
男は声をあげて高らかに笑った。
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