05 思い出せるのは残酷な過去
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「そうそう。コイツらみたいになりたくなけりゃ、大人しくしてな。」
男はちらりと後ろに目をやる。
その視線の先には、黒ずんだ液体となにかの塊があった。
いや―…、黒く見えるけど目を凝らして見れば、それは“赤”で。
その上の大きな塊は、人、だった。
それも2人。
邪魔になって端に寄せられたかのように、ひっそりと横たわっている。
「………え?」
イミテは何度も、何度も…自分の目を疑った。
しかし何度見ても、変わらない。
むしろ嫌な予感が確信に変わっていく。
……ドクン、ドクンと胸の鼓動がうるさいぐらいに身体中に響いている。
『行ってきます!』
『あら、早いわね、イミテ。もう出かけるの?』
『うん!レッド達に弓の腕前を見せにね。』
『あらあら、まだ早いんじゃないの?怪我でもさせたら大変よ。』
『大丈夫さ、母さん。俺が直々に教えたんだ。できるに決まってる。』
『もう!お父さんは自信過剰ですよ!』
『お母さん!絶対上手く行くから信じてて!』
『イミテも…そういうとこお父さんにそっくりなんだから…。』
『……やっぱり、まだダメ?』
『いいえ。イミテなら大丈夫!私の子供だもの!頑張ってきなさい。』
『母さんも自信過剰な気がするけどなあ…。』
『あはは!それじゃあ、お父さん、お母さん!行ってきます!』
『『行ってらっしゃい。』』
頭によぎるのは、数時間前の会話。
こんなにも鮮明に思い出せる、お父さんとお母さんの優しい笑顔と、ふわりと自分をつつみこむような優しい眼差し。
どうして?
なんで?
今朝、笑って送り出してくれた、お母さんとお父さんが……、
どうして、あんなところにいるの―…?
まさか、そんなはずない。
だって、お父さんは強いから。
弓をひけば一発もはずさないし、どんなに遠くのものだって当ててたじゃない。
お母さんだって剣術を習ってたし、なによりお父さんが守ってくれる。
言葉にはしないけどお母さんを見るときのお父さんの表情はすごく優しくて、温かくて…大好きだったから。
絶対に、ありえない。
2人が、死ぬ、なんて―…。
(どうして、お父さんもお母さんもピクリとも動かないの…?)
「―…ッ!お父さんっ!?お母さん!!」
イミテは思わず彼らのところに駆け寄ろうとしたが、
「イミテ!!行くんじゃない!」
オーキド博士が大声を出してイミテを止めた。
そして「もう、何をしても…遅い。」と静かにつぶやいた。
「っ!嘘つかないで!!そんなわけない!絶対…絶対違う!!」
「嘘じゃない!聞きなさい、イミテ!」
「聞きたくないよ!そんなの!!」
本当は分かってる。
オーキド博士がいつにもまして、真剣な口調で言うから。
地面に染み込んだ血の量がすごいから。
でも、認めたくない。
誰かに否定してほしいんだ。
「イミテ…」
レッドも、そしてグリーンも、かける言葉が見つからずただ呆然としていた。
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