04 動き出した歯車は
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「あの…、イミテさんは大丈夫なんですか…?」
イエローが少し遠慮がちにグリーンに聞いた。
宿まで急いできたため、説明をする暇がなかったのだ。
もちろんイエローは、イミテのことだけでなくグリーンのことも説明されていない。
大ざっぱな説明もなく、ただレッドに「休めるところを探そう。」と言われてここまできたのだ。
それでも真っ先にイミテの体を心配するのは、イエローの優しい性格の表れだろう。
「女将に言ったのを聞いていなかったのか?ただ寝ているだけだと。」
「え、いや…、聞いてたけど…、心配だったので…。」
ギロリと自分を少し睨みつけるようにして答えたグリーンに、イエローはほんの少し近寄りがたい感覚を覚える。
「グリーン。もっと普通の言い方できないのかよ。」
「……普通なつもりだが?」
「まったく…。悪い、イエロー。そいつ、悪気があるわけじゃないんだ。根はいい奴だから、怖がらなくていいぜ。」
「あ…はい!えっと……、グリーンさんっていうんですか?」
「……ああ。」
そっけなく答えるグリーン。
イエローのことを警戒しているのだろう。
そんな様子を見てレッドがため息を1つつき、変わりに答える。
「イエローには昨日泊まった宿でちょっと話したよな?そいつが俺が一緒に旅してる奴。」
「あ…!じゃあ、グリーンさんが、大地の能力者…なんですね。」
レッドは昨日の夜、自分が旅をしている理由と、旅することになったきっかけ―…つまり、故郷であるマサラタウンを追い出されたことをイエローに話していたのだ。
レッドは「ああ。」と頷く。
「で、グリーン。こっちがイエロー。光の能力者。」
「光の…?お前はイミテとはどういう関係だ?」
「あ、僕は…」
まだ男装して軍隊にいたときの名残があるのか、イエローの一人称はあれからずっと僕だ。
それから数十分かけてイエローとレッドは今までの成り行きをグリーンに説明した。
「…そして、イミテが追っ手に見つかったところを俺が見つけたというわけか…。」
「グリーン。それで…お前は、なんでイミテのこと知ってんだ?俺達と一番親しかったってどういうことだよ?」
「……。」
グリーンは戸惑う。
イエローも聞いているこの状況で、どこまで話していいのか分からない。
だいいち…、
「気づいていると思うが、イミテはお前の記憶喪失に関係している。頭痛は大丈夫なのか?」
レッドはいつも昔のことを話すと頭が痛くなる。
「……。」
図星のようで、レッドは黙り込んだ。
「自然と思い出すのを待ったほうが無難だ。」
「俺もそう思う、けど……」
レッドはうつむき、拳を握りしめてこらえるように言った。
「もう…泣かせるのは嫌なんだ。」
イミテが見せた涙は、レッドの胸に痛くやきついていたのだ。
あんな顔、2度とさせたくない。
そう、強く思った。
「…記憶喪失って?」
寝ていたはずのイミテが、ゆっくりと体を起こしながらたずねた。
「イミテさん!」
イエローは小さな子供のように嬉しそうにイミテのそばに寄る。
「大丈夫ですか!?どこも怪我してませんか?」
「イエロー、大げさ。大丈夫だよ。…っ。」
ベッドから降りようと縁に手をついたイミテが顔を歪めた。
「あー…ごめん、イエロー。怪我してたみたい。お願いしてもいい?」
イミテは自分の右手を見つめて言った。
その手首に少し深い切り傷ができている。
おそらく先ほど軍隊に腕を強くつかまれた時にできたものだろう。
「もちろんです!動かないでくださいね。」
イエローは傷口に手をかざす。
彼女の手元が光ったかと思うと、傷がみるみるうちに消えていった。
「(これが光の能力…)」
グリーンも興味があるようで、その様子を遠目で見ている。
「はい!終わりました!」
「(傷跡すら残らない…。)ありがとう。イエローの力、初めて見たけどすごいね。」
「えへへ。」
ほめられたことと役に立てたことに、イエローは嬉しそうに笑う。
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