31 守るための武器とは
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「グリーンの言う通り、マサラタウンが襲われた理由は、奴隷となる人を集めるため。だから老人と子供は殺すように命令されたって…あの男は言ってた。」
あの男、とはマサラタウンを襲った男のことをさす。
「ニビシティの軍人になってから、急にそんな命令が下された理由をずっと調べてた。そしたらある時…ニビシティの王が誰かと会談していて。相手の姿は見ていないけど、声の調子が似てる…、あの時の相手はアンタだったんでしょう?」
それは疑問ではなく、確信に近かった。
それに対してサカキは何も答えなかったが、そんな彼の背中を見ながらイミテは続ける。
「『目的は果たせなかったが、結果的に緑の能力者が手に入った。』って言っているのを聞いて、その目的っていうのはマサラタウンから人を集めることしかなくて、そう思ってたけど…。なんとなく腑に落ちなくて。でも、今のを聞いてはっきり分かった。」
しだいにイミテの話す声が低く、重くなっていく。
今それに気づいているのはレッドとグリーンぐらいだろう。
「目的は、“闇”の能力者を手にいれること。その闇の能力者の候補を探しだすこと。そのために、まだ能力のでていない能力者を危機的状況に追い込んで能力を発動させようとして、マサラタウンを襲撃した。…違う?」
これも、決して聞いているわけではなかった。
イミテはそう確信していた。
全ては息子を見つけるためにやったこと。
そうするしかなかったのだろう、とイミテは心の中で思う。
国に捜索を依頼してしまうと、サカキの息子、ということを利用していろいろと動く者達がでてきてしまうから。
息子を危険な目に合わせない一番の方法が、周りに事実を知られないようにして裏で動くことだったのだ。
サカキは息子を救うために、自分ができる最善をつくしたまでで。
でもその代償に、たくさんの人達がきずついた。
イミテの両親も。
サカキが息子を探すためにそんな制度を作らなければ、マサラタウンが襲われることもなく、
今も、生きていたはずなのに。
「(イミテ…先輩…?)」
ゴールドは、そこでようやく気づいた。
たぶん、イミテは今怒っているのだろうと。
衝動的なものじゃない、ずっと心の奥でふつふつと燃えていたような静かな怒りだった。
ゴールドが思わず振り向けば、イミテは何ともない、涼しい顔をしていて。
表情(かお)には、その感情は1つもでていなかった。
(こんな時ぐらい、素直に怒ればいいのに―……)
そう思った直後、サカキが息子(シルバー)を探すためにやむを得ずにやったことだと知ってしまったから、直接的に怒れないのだと気づいて…苦笑する。
「…俺は反対ッスよ。シルバーにコイツを会わせること。理由がどうであれ、コイツは多くの人を苦しめた。それなりの罰を受けるべきッスよ。」
イミテが怒れないのなら。
彼女の代わりに自分が、と。
「だからシルバーのところに行くのはやめて「ゴールド。」
イミテがゴールドの言葉を遮って、
「ありがとね。」
優しく笑った。
「っ、」
自分の気持ちを全部分かっているんだろう、この人は。
伝わってしまうのが悔しいけれど、ほんの少しだけ嬉しくて。
「会うか会わないかはシルバー次第だね。」
少なくともシルバーは何も悪くないから、とイミテはいつもの表情で言った。
「となると、この事を合流前にシルバーに伝えてくるか。もうすぐ着くし。ゴールドとイミテはここで待っててくれ。グリーン、悪い、一旦床におろすぞ。」
「ああ。」
レッドがグリーンを肩からおろそうとすると、ルビーが「…それぐらいなら僕が手伝いますよ。」と、少し気まずそうに言った。
「え、手伝ってくれるのか?」
「俺達に手貸していいのか?またお師匠様にどうこう言われるんじゃねえの?」
「大丈夫です。ただ従っているだけじゃ何も守れないって分かったので。」
ルビーが目をそらすことはなく、何かを決心したかのような強い眼差しだった。
レッドはそのことに一瞬驚きながらも、「じゃあ頼む。」と笑顔で自分の肩からルビーの肩へとグリーンをあずける。
その少し後ろでは、サファイアが嬉しそうに笑っていて。
「(ああ…)」
このまま全て幸せに終わればいいのに、とイミテは思う。
武力なんてなくなって、支配者なんていなくなって、争いなんてなくなって。
能力者に対する妙な偏見も、王族が絶対という制度も、政府が支配する生きにくい世界も。
全部全部終わって、平凡で平和な世界になれば―…
「(え…?)」
ズン、と。
背中の重みが確かに増した。
「イエ、ロー…?」
(どうして現実はこんなにも残酷で)
イミテの震えた声を聞いて、ルビーとサファイア、そして数十分前にそれを知らされたゴールドはあの予言の言葉を思い出す。
“今日この中の誰か1人が死ぬ”
悲劇は、続く。
愛しています
どんなことがあっても
貴方を守ることができるのなら、
私は、僕は、
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