31 守るための武器とは
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「…レッド先輩。こんなやつの言うこと聞く必要ないッスよ。とにかく上に行きましょう。」
「待ってゴールド。その前に1つだけこの人に聞きたいことがある。…アンタの目的はなに?」
イミテが、聞く。
唯一そこだけが気になっていた。
自分も能力者である彼が、一歩間違えれば自身も生きにくくなる可能性があるのに、能力者を追放するような制度を作ったことが。
「フン、貴様に教える気はない。」
「てめえ…!この期に及んで…!てめえのやったことのせいで、人生変えられたやつがいるっつーのに!!」
ゴールドがサカキの胸ぐらをつかんで言う。
彼の脳裏に思い浮かんでいるのは…イミテやレッド達や、そしてクリスのことだろう。
「落ち着けゴールド。今話さないなら後でゆっくり聞けばいいことだ。上に行こう。…グリーン、立てるか?」
レッドはそう言ってグリーンを肩にかつぐ。
「ゴールド。私の背中にイエローのこと乗せてくれる?」
「…はい。」
「シルバー達がブルーのところについてるんだったよな?一旦そこと合流してから上に、」
「シルバー、だと…?」
レッドの言葉に、サカキがピクリと反応した。
「あ?なんだよ、知ってんのか?」
「ブルーとシルバーは、コイツの部下のマチスの手下だったから名前ぐらい聞いてたんじゃないか?」
能力者ということを明かしていたら、側にはおいておけなくなるからそこまでは明かしていないだろうが。
「ああ、そういうことッスか。残念だったな!ブルー先輩もシルバーも、もうお前らの言いなりにはならないからな!」
「マチスの手下…?いや、まさか……。おい、その、シルバーという者の特徴は…!?」
サカキに明らかな動揺が見られる。
マチスから名前を聞いていた、という予想は違っているようだ。
「赤髪で肌の色は白い。」
レッドが相手を見定めるような目付きで簡単に告げる。
「…っ、」
「…アンタが闇の能力者だけを集めていた理由に、何か関係があるの?」
サカキはまた動揺したのを見てイミテが口を開いた。
根拠はなにもないが、サカキとシルバーの唯一の共通点は闇の能力者であるということ。可能性は高い。
「シルバーという者についての、他の情報は?お前たちの仲間なのか?ここに、いるのか?」
「…。」
「教えてくれ。俺のことも、全て話す。…頼む。」
サカキが懇願する様子を見て、イミテはレッドに視線を送る。
彼も目で頷いた。
「…。長くなりそうだから歩きながら話す。ゴールド。ブルーとシルバーがいるところまで案内よろしくね。ただ、近くなったらそれ以上進まないで教えて。」
「?いいッスけど…なんでッスか?」
「シルバーにこの人を会わせていいかまだ分からないから。この人が企んでいることによっては近づけない方がいい。」
「…なるほど。」
「…。」
イミテの言葉にサカキはただ黙っていた。
蔓で縛られたサカキを見張りながら、ゴールドが先頭を歩く。
その後ろを、イエローを背負ったイミテ、肩にグリーンをかついだレッドと続き、さらに少し離れて、ルビーとサファイアが後に続いた。
ちなみにルビーとサファイアは、初めはサファイアが先頭を歩きたいと言っていたのだ。
しかし、レッド達とはここで別れて行動しようと考えていたルビーにもう反対され。
それでもサファイアが「あたし達がやったことで、未来が変わったのか、予言の本当の意味はなんなのか確かめたかよ!」と強く言ったため結局ルビーが折れ、何かあったとしても一番害のない最後尾を付いていくということで何とか落ち着いたのだった。
「シルバーは、幼少の頃に仮面をつけた男にさらわれて、人身売買され、その時に闇の能力がでた。媒介はマチスのもう1人の手下にもらった黒い手袋。気味悪がられて売れ残ったところを、マチスが買い取った。」
「……。」
イミテが言うと、まるでその言葉を一字一句確認しているかのような長い沈黙のあと、サカキが「クク…」と苦笑をもらす。
「闇の能力…やはり、予想はあたっていたか。」
「予想?どういうことだよ。」
「能力が遺伝するという話を聞いたことがあるか?能力者は皆、能力者になる素因を持っている。それに媒介や、危機的状況などの要因が合わさって能力が表れるのだ。その素因は、親から子へと受け継がれる。」
「つまり、能力者の子供も能力者になる可能性が高いっつーことか?」
「そうだ。親が能力を発動させているかは関係ない。加えて、同時に能力の種類も決まっている。炎の能力者の子は炎の能力。緑の能力者の子は緑の能力…といったふうにな。」
「…。」
「…お前たちは全員能力者だったな。お前たちの親が能力者でないのなら、能力が表れなかっただけで、条件がそろえば能力者になっていたはずだ。」
「…どうしてそんなことがいえる?」
「昔の奴らの発見が書物に残っていて、それを再現するために政府は集めてきた能力者を使って生体実験を行っていた。…まあそれは近年のデータしかないから統計で意味のある数値はでていないが。」
「生体実験って…!!」
「レッド。そこは後で聞けばいい。それで?続けて。」
サカキは目を伏せ、続ける。
「俺が闇の能力者を集めていた理由は自分の息子を探すためだ。シルバーは―…俺の息子だ。誘拐された時は能力は出ていたかったが、能力が発動する可能性は高い。」
「だから…“能力者をとらえた者には褒美を与える、反対に匿ったものには罰を与える”という条令を出すよう、王族と政府に圧力をかけたってわけ…。…息子を探すためだけに。」
「なんだと…!?1人息子がある日突然いなくなった気持ちが、お前に分からないだろう!!」
最後の少し皮肉の混じったイミテの言い方が気にさわったのか、サカキが声をあらげた。
「もちろん。そんなの分からない。」
「ならば口をはさむな!」
「私にも文句の1つぐらい言う権利はある。私は…アンタが作った能力者の制度のせいで両親を亡くした。」
対してイミテは乾いた口調で言った。
「どういうことだ…イミテ。」
グリーンがやや苦しそうに言葉を発する。
止血はしたが、出血が多かったのと、傷が痛むのか冷や汗をかいていて顔色が悪い。息も絶え絶えだ。
「マサラが襲われたのは、政府が奴隷を欲したから、だろう。お前の両親と、何の関係がある。」
呼吸は少し荒いが、はっきりとした言葉だった。
「グリーン、あまり喋るな。」とレッドが心配して言うが、彼は「イミテ。」と先を急かす。
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