31 守るための武器とは
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「レッド。そいつは例の、」
「サカキ、だろ?ルビーに聞いた情報と一致してる。それよりグリーン、大丈夫か!?」
見た目通りのひどい怪我をおっているグリーンに、レッドは心配そうに目を向ける。
そのすきをねらって、
「レッド先輩!前!」
「!」
サカキが剣をふりおろしてきて、レッドは咄嗟にそれを受け止める。
「(この力…)」
グググ、と自分を押すサカキの剣にレッドは顔を歪めた。
前にグリーンが、本当にその道を極めたものは一、二度剣を合わせれば相手の力量が分かると言っていたのを思い出す。
そして、今がまさにその状況だ。
「レッド先輩!」
「さがってろ!ゴールド!」
「1人で俺に対抗する気か?剣の腕はお前よりもあのガキのほうがまだ楽しめそうだったが。ああ…能力でも使うか?」
「く、」
レッドは自身の剣を握る力を少しゆるめ、素早く後ろに一歩下がる。
次いですぐに踏みこみサカキのふところに入ると剣をふるうが、やはりそれは止められてしまう。
「なかなかの身のこなしだが、俊敏さですきをつこうとしても無駄だぞ。」
「さっき、1人で対抗とか言ってたな。そんなつもりはない。仲間と協力して、お前を倒す!」
「ふん。お友達ごっこか。まさか、仲間が見てるから強くなれる…のような身の毛もよだつ戯れ事を言うつもりじゃないだろうな?」
「まさか。」
今のレッドに使える能力は残っていない。
イエローの光の能力により体内にまわった毒を少し緩和できて、後にゴールドがクリスからもらってきた解毒剤がきいただけで、炎の能力自体が回復できたわけではないのだ。
それでも、勝機はあった。
ああ、ほら。足音が聞こえる。
「…イミテ!助っ人、頼んだからな。」
「え、」
「見つけたったい!」
威勢のいい声とともに、扉のところにはサファイアが立っていた。
すぐあとにイエローを背にかついだルビーが現れる。
「ルビー!サファイア!」
「まかせるったい!」
サファイアは1、2回腕を大きく回し、槍投げのように手にしているものを投げた。
それは放物線を描いてイミテの近くに落ちる。
「これ、私の矢…」
「ああ!ルビー達には部屋に残った矢を集めて追いかけてくるように頼んだんだ。」
「!貴様ら…!」
「いかせるわけないだろ!」
気づいたサカキがイミテに殺気だち動こうとするが、もちろんレッドがそれを許さない。
イミテはその間に素早く弓を引き絞り、矢を、自分の足元近くへ放った。
「レッド!」
「ああ!」
イミテの言葉でレッドがさがる。
直後、矢からサカキに向けて勢いよく蔓がのびた。
「!」
サカキは自身に迫るそれを剣で切り払うが、蔓は切り口からまた新たに伸び、あっという間に彼の身体にまとわりつく。
「…!」
胸から下の身体全体に蔓は巻き付き、サカキを完全に拘束した。
「よかった…。もうほとんど血は止まったね。」
グリーンの傷口からタオルをはずし、イミテがほっと息をつく。
「すごいったい!あの木の実で血が止めるなんて、知らなかったと!」
ひょいっとサファイアがのぞきこみ目を輝かせていた。
たまたまサファイアの持ち物の中に薬効をもつ木の実があり、それを使ってイミテが簡単な応急処置を行ったのだ。
「これは止血反応に必要な成分を含んでいるの。さっきみたいにつぶして温めてから水に溶かして飲むと薬効が高くなるよ。」
「…む、難しい話しは苦手ったい…。」
「それにしても…よくこんなに持ってたね。この木の実のなる木は結構な高さがあるのに。」
「あたしは木登りは得意やけん!あのくらいの高さならどうってことなかよ!」
「君が野生児でよかったと思う日がくるなんてね…」
「ルビー!せからしか!」
仲がいいなと微笑ましく思いながら、イミテはグリーンの手首を握る。
「でも、脈は遅いし、顔色も悪い。本当ならまだ動かない方がいいんだけど…」
「敵陣でのこのこ休んでいるわけにはいかない。意識もはっきりしてきた。平気だ。」
「…あれだけ血を流して平気なはずがない。本当はまだ手足に上手く力が入らないでしょ?ついでに、呼吸しづらいのも隠して、いつも通りに話そうと無理してる。」
「…。」
ぴしゃりと言い当てたられ、グリーンは珍しく何も言い返せない。
「でもグリーンの言う通りここに長居できないな。グリーンは俺が肩にかついでいく。イミテはイエローのこと背負えるか。」
「うん。イエローの重さぐらいなら全然。」
「レッド先輩。俺がイエロー先輩おぶっていきますよ?」
「いや、ゴールドは上までサカキを見張りながら歩いてくれ。手足が動かないといっても、何をするか分からないから。」
「!了解ッス。」
「貴様ら、俺をどうする気だ?俺は悪事には何も加担していない。政府に引き渡したところで、意味はないぞ。」
一連の流れを見ていたサカキがニヤリと笑って言う。
サカキはトキワの森を焼き払う、など民を苦しめる行為を指示しているときくが、あくまで裏で王族達を指揮しているだけ、自身は手を下していない。
万が一、何か悪事を働いたという証拠がでてきても、政府とつながりがあるため揉み消すのは容易いだろう。
「それがどうした。別にお前を罰したいわけじゃない。」
「…何か他の目的があるとでもいうのか?」
「ああ。能力者は悪だという偏見は、お前が植え付けたものだ。だからそれを原因の張本人であるお前自身に撤回してもらう。」
「はっはっは!」
その空気には似合わない笑い声が響く。
「その程度で変えられると思っているのなら、甘い。世界をなめないほうがいい。」
「…どういう意味だ。」
「俺は王家でもなんでもない。俺の言葉にはなんの権限もない。誰も耳は貸さないぞ。」
「だったらお前と他の王族のつながりを利用するまでだ。お前の名前で王族との話し合いをとりつける。」
「…甘いな。一度植え付けられた価値観はそう簡単には変わらない。覚えておくといい。」
こんな状況でも決して態度を変えず、サカキはにやりと笑みをうかべて言う。
.