31 守るための武器とは
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身にまとった黒のタキシードが印象的な男。それがサカキだった。
彼の名を聞いてイミテは弓を、グリーンは刀を一瞬のうちに身構える。
…といっても、イミテは先程の戦いで使い果たしてしまってもう矢は残っていない。
それを隠すかのように背に担いでいる矢を入れるホルダーのベルトを少し緩めて、サカキから見えないようにした。
「…お前がサカキか。」
グリーンがつぶやく。
冷静に見えて、気を張っているのは空気ですぐに分かった。
「俺の周りをかぎまわっている奴がいると聞いて、顔も知られているものだと思ったが、違うのか。」
サカキは見下すように、冷たく笑う。
「ここにいるということは、ナツメやキョウを倒してきたのか?…いや、かぎまわっているやつは数人だったという情報だったが、ここにいるのがお前達2人ということは…」
静かな、ワザとらしい間。
「ああ。他の仲間達を捨て置いてきたのか。」
ニヤリとサカキは笑った。
「…。」
それに対して、イミテもグリーンもなにも返さず無言をきめこむ。
明らかに挑発されている。
のるわけがないが。
「答えないということは図星か?」
「お前と無駄なやり取りをする気はない。単刀直入に言う。お前が能力者追放の制度を作った張本人だということはもう分かっている。」
「ほう。それで?復讐にでもきたか?」
「そんな自身の気持ちをはらすだけの行為に興味はない。私達は、能力者に対する制度を、…世界を変えるためにここに来た。」
「世界を変える?世間のことをなにも知らないガキ共が何をほざいてやがる。」
「確かに、そのために色々と知る必要はあるな。サカキ。お前の目的はなんだ。」
「目的だと?」
「アンタは自分自身が闇の能力者でありながら、能力者が生きにくい世界を作っている。一見すると能力者に対する差別だけど、でもそこに別の目的があったとしたら?」
イミテは様子を伺うようにしながら話を進める。
サカキの表情に変化はない。
「知ってるの。アンタが能力者を周りから隔離し、追放によって政府の元に集め、そして、闇の能力者を集めたがっていること。」
「……。」
それはただブルーが集めてきた情報で、事実確認は何もしていない。
けれど確信しているように言った。
返ってきた反応は、無言。
でも、先ほどのような見下す態度が出ないのは図星ということ。
「闇の能力者を集めている目的はなんだ?」
「知ってどうする。」
「その理由次第でお前をどうするかを決める。」
「フハハハ!俺を貴様らごときがどうできるというんだ。情報が欲しければ、奪ってみろ。……力づくでな。」
サカキが言い終えた瞬間、その場の空気が変わった。
緊張感が一気に高まる。
「俺の能力は知っているんだったな。“闇”に対して、お前達は“大地”に、“緑”。勝てると思うか?」
「ああ。別に不利な条件は何もない。」
「フッ…、その甘さと過剰なまでの自信が命取りになることを忘れるな。」
サカキは懐に手をやり…1冊の古びた本を取り出した。
彼の腰には武器であろう剣が刺さっている。ということは、
「あれが媒介…!?」
「くるぞ!」
彼が本を開くと、瞬時に中から黒い玉が浮遊し、勢いよくイミテ達に向かって飛んできた。
「!」
グリーンは刀を床に突き刺す。
すると床が割れ、そこから土が壁のように盛り上がった。
グリーンはイミテの腕をつかみ自分の方へと引き寄せて、ちょうど1人分隠れられる程度の大きさのそれに共に隠れる。
ここが地下でよかった。
地面が近いからこそできたことだ。
あまり派手にやると建物が崩れる可能性があるから、そう何度もはできないが。
しかも急いで作ったため強度はそれほど高くなく、闇の能力で作られた玉が当たる度にパラパラと土が落ちた。
「グリ、」
イミテが声をかけようとした瞬間、
「「!」」
迫り来る気配に気づいて、グリーンもイミテも土の壁から出てそれぞれ別の方向へと避ける。
直後、土の壁は真っ二つに裂けた。
その割れ目から剣を構えたサカキの姿が見え、彼はにやりと笑っていた。
チラリとサカキがイミテの方を見た瞬間、
「っ、」
グリーンがサカキに向かっていき剣を交える。
カキイインと、甲高い音がした。
「刀か。珍しいものを使うな。だが、使いこなせていない。」
「っ!」
サカキはグリーンの刀を軽くはじく。
「刀は速さと切れ味が特徴。力不足でそれが全く活かされていない。簡単におし勝てる。」
見下しているからではなく、サカキの発言は事実に基づいたものだった。
一度武器を合わせただけだが、サカキが強いということは明確だ。
能力抜きで考えれば仲間のなかで一番強いのはグリーンなのだが、その彼がこうも簡単におし負けるということは…勝算は薄い。
「…。」
グリーンはサカキと一定の距離を保ちながら考える。
イミテの矢はもうない。
確か短剣を隠し持っていたはずだが、剣術を得意としている自分でも全く歯が立たないのだから、一緒に戦ったとしても何のダメージも与えられずに終わるだろう。
自分とサカキがこのまま戦って。
もし…、もしも。
自分が倒されたら、次に標的となるのはイミテだ。
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