31 守るための武器とは
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おい!もういい!そいつのことはほっとけ!とにかくその方法を教えてくれ!」
「お願いします!教えてください!何をすればいいんですか!?」
煮え切らないルビーの態度にしびれをきらしたゴールドとイエローがサファイアに向けて言う。
「…それは、彼に光の能力を移すことったい。」
サファイアは少し顔を背けて告げた。
「光って、イエロー先輩の能力を…!?」
「光の能力は特別ったい。前にあたし達の力で光の能力を重い病にかかっている人に移したことがあったと。移されて能力者になった人は、少しだけど病が治癒したとよ。」
「待ってください、光の能力は風邪とか熱とか、そういった体内の変化には通用しないんじゃないんですか!?」
「そうったい。だけど能力の移動にあたって少し変化した形で体内に影響したのかもしれない。だからもしかしたら彼の場合も、少しだけ毒が回るのを抑えられるかもしれないったい!」
「よっしゃ!それなら解毒剤を取りに行っても間に合うっつーことだな!俺はクリスを呼んでくる!ここは頼んだぜ!」
「待て!僕はやるとは言ってない!能力者の能力の移動はアダンさんの決めた掟に従って行わなければいけないんだ!それに、能力者に他の能力を移すなんて前例がないからどうなるか分からない!体内に能力が2つなんて、それこそ死ぬかもしれないし…!」
「考えるのはあとにしやがれ!先の未来を心配したことでどうにもなんねえだろ!考える前に行動しろよ!どっちみちこのままだとあぶねえなら、リスクがあってもやるしかねえだろ!それともお前は自分に得のあることしかやりたくないってか!?」
「!ぼ、僕は協力する立場なのに、なんでお前にそんな言い方される筋合いはない!…それにこの場合、能力を移した方だってどうなるか分からない。」
「え…?」
「どういうことだよ?」
「移す対象が能力者だから十分に能力を移せるかどうか分からないんだ。うつしきれなくて、能力が中途半端に残って死ぬ可能性もある。」
「!」
それは最悪、レッドが助からないだけでなく、レッドもイエローも死ぬ場合もあるということ。
「僕は別にかまいません。」
イエローが迷いのない声で言った。
「アナタ達の予言では死ぬのは“1人”なんでしょう?だったら僕もレッドさんも2人とも死ぬ可能性は低いと思う。それに…。もしもそれで、僕が死んでしまったとしてもレッドさんが助かったのなら…僕は本望です。」
「イエロー先輩…!なんてこと言うんスか!!」
「あはは。今のはちょっと極論すぎましたね。…でも、ゴールドさんだって分かりますよね?自分がどうなってでも、大切な人を守りたいっていう気持ち。」
イエローがあまりに儚げに笑うものだから、ゴールドは一瞬なにも言えなくなる。
でもやがて、「…そうっすね。」と低く静かな口調で呟いた。
「おい!ルビー!」
「…なんですか。」
「この人は…、俺の大切な人が、大切に思ってる人なんだ。だから絶対助けてくれ。頼む。」
それって、とイエローが頭の中で思った一瞬のうちにゴールドは駆け出して、部屋から出て行った。
「行っちゃったったいね。やるしかなかとよ、ルビー。アンタもなんとか未来を変えたいと思ったから、あたしについてここにきてくれたんやろ?」
「僕は別に…。」
「ルビー。もしもあたしが同じ状況やったら…、もし何もしなければ死んでしまうとしたら、あんたはどうすると?アダンさんとの約束だから何もしないと?」
「!っ、そんなわけ…!…、」
はあー…と、彼は深い深いため息をついた。
「全く…、君は1度決めたら何を言っても無駄なんだから。…まあ何となくこうなることは分かってたけどね。」
「ルビー!」
サファイアが嬉しそうに笑い、それにつられてルビーもフッと笑った。
「…時間がない。急ごう、サファイア。イエローさんと言いましたっけ?」
「は、はい!」
急に声をかけられてイエローは思わず声が裏がえる。
そんな彼女にルビーはにこりと、安心させるように微笑む。
「アナタはただ彼を助けることだけを念じてくれればいい。」
「ね、念じる…?」
「さっきみたいなことをずっと心の中で思うんです。まあ自分が死んでもはいきすぎですけど、“絶対に彼を助けたい”って。」
「大丈夫。絶対に2人とも助かりますよ。さあゆっくり、目を閉じて。」
「はい…!」
本当は彼(ルビー)はとても優しい人なのかもしれない。
そう感じながら、イエローは言われたとおり目を閉じた。
「サファイア。もしもアダンさんのところに戻って罰を受けることになっても……、」
「?ルビー?」
「僕が守るから。」
「……うん。」
ルビーの槍の先についた紅色の玉と
サファイアの槍の先についた藍色の玉が同時に、静かに光り始めた。
.