31 守るための武器とは
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イエローは、グリーンの能力でつくられた狭い通路を這って進む。
即興でつくられたそれは、壁面などが整っているはずもなく、進む度にイエローの身体には切り傷ができていた。
「っ、」
痛みによってもれそうになる声を押し殺してただ進む。
「(レッドさんがこの先にいるんだ…!)」
痛みを気にしてなんかいられない。
今彼を助けられる可能性があるのは自分だけなのだから。
「!」
少し先に光が見えた。出口だ。
「あと、少し…!」
それが原動力となり、進むスピードは早くなる。
そして、やっとの思いで通路をぬけると今までの薄暗さとはうってかわって、一気に光が目に入った。
その眩しさに思わず目を瞑り、次いで、目を開くと…
「!レ…、レッドさん!!!」
倒れているレッドの姿が目に飛び込んできた。
一気に胸がギュッと苦しくなって、緊張で心臓がドクドクと音を立てていて。
恐怖から身体が震えた。
それは、レッドが生きているかどうかの恐怖─…。
そんな感情のせいで上手く動かない手足を動かし、四つん這いになりながらレッドの元へと近づく。
「レッドさん!レッドさん!レッドさん…!」
声はすっかり震えてしまっていた。
レッドの肩を必死で揺さぶる。
ニビシティの軍にいたとき、治療の基本は負傷者をむやみに動かさないことだと教わったはずなのだが、
今のイエローはそんなこと考えもしなかった。
ただ、返事をしてほしくて。
生きていることを確かめたくて。
「…、」
「レッド、さん…!!」
動いたわけではない。
返事もない。
ただ、かすかに息をしていることだけは分かった。
それはすごくすごく浅いものなのだけれど。
「(よかった…!とりあえず、怪我の治療をしなきゃ、)」
見たところ頬にざっくりとした傷が1つできているだけで、他に大きな傷はない。
だとすると、力の使いすぎで疲労しているだけなのだろうか。
そんなことを思いながら、頬からの血はまだ完全に止まってはいないようなので、イエローは光の能力を使ってそれを治す。
「(とりあえず怪我はそんなにしていないみたい、よかった…。)これで平気なはず…」
まだイエロー自身の震えは止まってはいないが、治療をしたことでほんの少し落ち着きを取り戻した。
イエローは辺りを見回し状況を確認する。
グリーンが暖炉に続く道を作った際に崩壊したのだろう、その周辺は瓦礫などが散乱している。
そして戦いの衝撃でボロボロになった壁には、所々に焼け焦げた跡が。
「!」
部屋の隅に人が倒れているのが分かった。
見覚えのある服装。あれは…キョウだ。
「(レッドさん、彼のこと倒してたんだ…)」
こんな、自分が瀕死の状態になりながらも…。
切ない思いがこみあげてきて、レッドに視線を戻す。
「(え…?)」
先ほどよりも明らかに顔色が悪くなっていた。
能力の使いすぎで倒れているのなら、少なくともこれ以上悪くなることはないはずだ。
大きな傷も1つしかなかったし、今それも治療したばかりなのに、
「…っ!…違う……、」
イエローは気づく。
傷が1つしかないことに安心してる場合じゃなかった。
たった1つでも傷があってはいけなかったんだ─…。
彼(キョウ)は毒の使い手だから、傷口から毒をくらったとすれば全てつじつまが合うのだ。
「そんな…!」
光の能力は外傷は治せるが体内までは治せない。つまり、解毒はできない。
「!」
そんな緊迫した状況のなか廊下から足音が聞こえてきた。
走っているのだろう、音はどんどん近くなる。
「(追っ手!?逃げなきゃ…!でも間に合わな)」
そうしているうちにバアン!と扉が音を立てて開いた。
「!見つけた!」
そこには棍棒を構えたゴールドの姿が。
イエローは驚きすぎて声が出ない。
見知った顔に安堵を感じ、さっきまでの緊張と焦りが少しだけほぐれて…次第に彼女の目には涙がたまっていく。
「レッド先輩…!?どうしたんスか!?イエロー先輩!なにがあったんスか!?」
「ぼ、僕も今来たところ、で…、傷はふさいだんですけど、違ってて、…毒のせいで、レッドさん、どんどん顔色悪くなってて、」
半ば放心状態のまま頭にうかんだことを喋る。
耐えきれなくなって、ついに涙がこぼれた。
「ど、どうしよう…、このままじゃレッドさん、が…」
また、声が震える。
その様子を見てゴールドはガシッと彼女の肩をつかむ。
「落ち着いてください、イエロー先輩。」
「っ、」
「レッド先輩は毒をくらったんスね!?」
コクリ、イエローが頷く。
「大丈夫ッスよ。クリスが一通りの解毒剤を持ってたから、アイツを連れてくればレッド先輩は助かります。」
「本当ですか…?よかった…」
イエローが安堵の笑みをうかべ、反動でポロッと目尻から涙がこぼれ落ちる。
ゴールドはそれを改めて見て思う。
ああ…この人も本当に彼(レッド)のことを大事に思ってるんだな、と。
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