30 心の奥深くに眠る
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数分後。次第に、彼女の呼吸は落ち着いてくる。
「すげえな。効き目バッチリじゃねえか。」
「アンズっていう、キョウの娘が調合した解毒薬だからね。短時間で最大限の効果が出るように研究に研究を重ねて作られたものらしいわ。」
「っ…、う、」
「!姉さん!」
ブルーが目を開ける。
その瞳はしっかりとゴールド、シルバーの姿をとらえた。
「大丈夫!?姉さん、苦しくない!?」
「平…気。アタシは大丈夫だから、それより、アンタ達…早く先に行って…」
額に手を当てて疲れきった様子で言うブルー。
解毒薬を飲んだといっても完全に回復するまでにはやはり時間を要するらしい。
少しぼんやりとする意識のままブルーは続ける。
「アタシがキョウのこと食い止めるはず、だった。でも負けちゃって…彼は、あの子達の後を追って……」
「!イミテ先輩達はこの先に?いつの話ッスか!?」
「つい…さっき、よ。」
「…っ、おい。シルバー、クリス。ここは頼んだぞ。」
「!?アナタ1人で追いかけるつも」
クリスの言葉が終わらないうちにバタン!と扉を乱暴に閉める音が響いた。
「(…バカ!)」
ついさっきまで冷静に物事を見ていたはずなのに、いきなり感情に任せて突っ走るなんて。
「(本当に、バカ。1人で行っちゃうなんて。)」
……自分はまだ彼(ゴールド)に、まともにお礼を言っていないというのに。
お礼に、力になれたらと思っていたのに。
閉じた鉄の扉をガンッガンッと叩く音が辺りに響く。
しかし熱で変形したそれは、まるであたかも最初から天井の一部だったかのようにびくともしなかった。
「なにやって…!う、うそ…、この扉、どうすれば開くの!?」
ガラにもなく完全に冷静さを失っているイミテ。
レッドが。1人で。
キョウと戦うことになってしまつなんて。
しかも使える能力だってほとんどないというのに。
「おい!イミテ!」
グリーンが、鉄の扉に向けて再び振り上げられたイミテの手を掴んだ。
天井裏は薄暗くてはっきりとは見えない。
しかし、今イミテの手が真っ赤になってしまっているであろうことは明らかだ。
「別の部屋に移動するぞ。」
「でも…!」
「その扉はもう開かない。この場所にいてできることは何もない。」
「っ、だけど…、」
イミテが、うつむく。
この扉を1枚はさんだ向こう側でレッドが戦っているのだ。
全てを背負って。独りで。
「…っ、(レッドはずるい)」
自分には、ちゃんと人に頼れと怒ったくせに。
1人で何でも背負おうとするのはむしろ、彼の方だ。
今だって、そう。
決戦前。
『守らなくていい。そんなことしなくていいから、だから…』
『お願いだから、いなくなったりしないで。』
『お願いだから、絶対に…そばにいて。 』
そう告げた自分を抱きしめて、彼は確かに『分かった。』と。
そう、言ったのに。
それなのに。
なんで、
どうして。
もう、自分のせいで誰かが傷つくのは見たくない…のに…、
「!イミテ、さん…」
イミテの様子に気づいたイエローから、思わず言葉がもれる。
「…。」
グリーンも気づいていながら…声はかけなかった。…何も、言えなかった。
「…ご、めん、」
ぽたり、と涙が落ちる音がする。
イミテ自身、どうしてこんなことになっているか分からない。
この現状に苦しくなってしまったのだろうか。
でもあの場にレッドが1人で残ったからと言って、まだ彼が負けたわけじゃない。
彼が、怪我をしてしまったわけでもない。
まだ、何も起きていないのだ。
予想できない先のことに不安を感じるなんて、バカだ。無意味だ。
分かっている。
分かっている、のに。
…重なる。
あの日、自分を庇って怪我をしたレッドが。
重なる。
あの時の、張り裂けそうな思いが。
息ができないほどの、切なさが。
罪悪感、が。
重なってしまう。
あの日を、思い出してしまう。
もう幼いままの自分ではないのに。
今はもう。あの日と同じ現状を辿らないぐらいの力がついた。
今すぐここから脱出して、それから策を考えればいい。
ここで悲観的になって不安な時間を過ごすより、冷静になって、今やるべきことを考えて、最善の策をー
分かってる。
頭では、どうすべきか分かっているはずなのに。
ああー…
本当に情けない。
「うっ…、」
口元を手で覆うが、声がもれる。
先に進まなければいけないのに。
……涙が、止まらない
足がすくんで、動けない。
震えが…止まらない。
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