30 心の奥深くに眠る
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その後、風で毒素をとばして順調に進んではいたのだが、クリスの足取りは次第に重くなっていた。
「…。」
「おい!なにしてんだ。急ぐぞ!」
「能力の使いすぎで疲れたのか?」
「違うわ。」とクリスは首を横に振る。
「今まで何も考えずに蔓をたどってきたけど、もしこれまでの部屋のどこかに入っていたらって可能性を考えちゃって…。」
「はあ?ボスの部屋はまだまだ先なんだろ?部屋に入るわけねえじゃん。敵に遭遇して戦ったとしても、すぐに倒して出てくるだろうし。」
「倒せたら、ね。でももし、逆にあの人達が倒されてたら…?」
「!先輩達がそう簡単にやられるわけねえ!!」
「でも、」
「例えその可能性かあったとしても1つ1つ部屋を確認している時間はない。行くぞ。」
「…。ええ。」
クリスも渋々ではあるが頷き、再び足を進めようとする。
しかし、
「やっぱ待て。」
ゴールドが、それを止めた。
「なんとなくだけど、この部屋の周りにある蔓だけ枯れ方がひどい気がしねえか?」
「しない。行くぞ。」
「即答!?少しぐらい考えろよ!」
「時間がないと言っているだろう。第一クリスが言うまで、お前、そんなこと微塵も思わなかっただろ。ただの思い込みだ。」
「ずいぶんと余裕ねえなあ、お前。」
「今はお前の喧嘩を買ってる暇はない。」
シルバーはため息を1つつき「行くぞ」と言うと、踵を返す。
「(コイツ、まるで…)」
ブルーのことを心配して内心先急いでいるであろうシルバーに、ゴールドは以前の自分自身の面影を見た気がした。
以前、グレンタウンに向かうサントアンヌ号に乗船したときの、グリーンの言葉が脳裏に思い浮かぶ。
『速攻型というのはただ素早ければいいというものじゃない。』
『それに伴う素早い判断力と状況を処理する力、それに勘の良さが必要だ。今のアイツは勘だけで身体を動かしているようなもの。』
ただ早さだけを求めていた今までの自分。
それを客観的に分析していたグリーンの分析は正しかった。
実際、グリーンに修行を見てもらってからと言うもの、無闇に攻撃を仕掛けることも少なくなり断然戦いやすくなったのだ。
相手がどう動くかを考え、予測し、それから動く。
早さに固執しなくても、十分に強くなれる。
何よりも重要なのは物事を客観的に見る冷静さー。
「…。」
ゴールドは大きく息を吐いた。
もう一度落ち着いて周りをよく見る。
シルバーの言うとおり思い込み?
いや、そんなハズはない。
これと断言できる根拠はないけれど、何かが違うことは確かだ。
上手くは言い表せないが、この場を取りまく雰囲気が告げている。
冷静に見れば、簡単に分かった。
「俺が適当言ってるかどうか、自分で確かめてみろよ!」
そう言って、ゴールドは側にあった扉をやや乱暴に開けた。
するとそこにはー………。
「え…?」
当てずっぽうを言ったつもりはなかった。
だからと言って確信を持っていたわけではなかった。
でも、自分の判断をこの時ほど褒めたことはなかっただろう。
ゴールドが勢いよく扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたのはうつ伏せに倒れるブルーの姿だった。
「!?姉さん!!」
それに気づいたシルバーがゴールドを押しのけて部屋の中へと入る。
「!おい!」
制止する間もなかったため、ゴールドは仕方なく周りに意識を集中させ、敵が出てきてもすぐに反応できるよう備えた。
気は抜けない。
倒れているブルーも敵が仕掛けた罠かもしれないのだから。
「(気配はない。他には誰もいねえみてえだな…。)中に入るぞ、クリス。」
「…ええ。」
クリスも、慎重に行動するゴールドの様子に内心驚いていた。
ゴールドは無鉄砲に行動しているように見えて、いつも少し先のことまで見ている。
「姉さん!」
「う…、」
「!」
シルバーの問いかけにブルーがかすかに反応する。
ちゃんと息はある。
ほっと息をついたのもつかの間、よく見れば顔全体が青白く、異常なほどに汗をかいている。
普通でないことは一目瞭然だ。
「何があったの!?」
「っ、」
反応はあるものの、問いかけに答えることはできない状態。
「…外に毒素が充満してたことを考えれば…、そのキョウってヤツと戦ったって負けたってことか?」
「だとしたらどうして姉さんだけがこんな状況になってるんだ!?他の奴らは!?どうしてどこにもいない!」
「落ち着いて、シルバー。まずはこの人の治療をしましょう。」
「治療って…。医学が分かるのか、お前。」
「いいえ。でもこの症状は見覚えがある。キョウの毒だとしたら、首回りに赤い湿疹が…、ほら。あった。」
政府の手先として従わされていたクリスにとって、三幹部の先頭の特徴は半ば強制的に叩き込まれていた。
もちろんキョウの毒の種類、症状、そしてその治療法も。
クリスは手持ちのカバンから小さなケースを取り出す。
そこには数十種類の小さな小瓶が綺麗に並んでいた。
「この種類の毒は…これ!この薬を飲ませて!」
そのうちの1つを取り出してすぐにシルバーに手渡す。
シルバーも急いでブルーの身体を傾け、それを口に含ませた。
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