30 心の奥深くに眠る
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彼らの通った道はイミテの蔓が残っていたからすぐに分かった。
おそらくこの蔓は、様子を探るために使われたものだろう。
「こっちよ!ついてきて!」
クリスは身体に無数の細かい切り傷を負いながらも率先して先頭を走っていく。
「たくましすぎるだろ…さっき戦ったばっかだっつーのに。」
その後ろを走るゴールドは思わず苦笑してしまった。
クリスがゴールドから人質にとられていたミナキの無事を知らされたのはつい先ほどの話。
そしてそれをきっかけにクリスがゴールド達に協力する形となり、彼らと共にナツメを倒したのだ。
超能力者との戦いは苦戦を強いられたが、クリスが日頃の戦いからナツメの攻略法を分析していたため勝つことができた。
まあ彼らの身体にたくさんの真新しい傷ができていることから、相当苦戦したことは一目瞭然ではあるが。
「(たくましいよな。…ホントに。)」
クリスの背中を見て、ゴールドは心の中で思う。
彼女はミナキを人質にとられていたため、政府に従っていた。
でも実際はその人質は無事に逃げていて、従う理由なんて何もなかった。
もっと早くそれを知ることができれば経験せずにすんだことも多々あるはずだ。
でも。
真実を知ったときクリスは、「よかった…」というたった一言をもらしただけだった。
彼女自身が経験した日々の苦痛よりも、他人が無事であったという嬉しさの方が、何倍も…何倍も勝っていて。
「!待って!」
ちょうど階段を降りていたとき、クリスがぴたりと足を止めた。
シルバーはそれに反応してすぐ止まったが、ゴールドは考え事をしていたからか少し反応が遅れてシルバーの背中にドンとぶつかる。
「わり」
「ボケッとしているな。これだからバカは。」
「~んだとてめえ!」
謝ろうとしていたのに咎められ、ゴールドはシルバーの胸ぐらをつかむ。
「もう!アナタ達、喧嘩してる場合じゃないでしょ!さっきはなかなかのチームワークだったのに…。」
ナツメと戦った際には、実にお互いの個性を生かした戦いであった。
クリスから得た、ナツメは1つのものにしか超能力を使えない、という情報をもとに、
ゴールドが右から攻撃すればシルバーは左から、ゴールドが前から攻撃すればシルバーは後ろをねらって…といったように言葉を発しなくとも状況に応じて最善の動きをとることができたのだ。
「急ぐぞ。早く姉さんと合流しないと。」
「はっ。シスコンが。ブルー先輩がいないと不安で不安でたまりませーん、てか?」
それがどうして今はこうも仲が悪いのか。
ゴールドとは数回会っただけ、シルバーとは先ほど知り合ったばかりだけれど、彼らの相性の悪さが手に取るように分かってしまい、クリスはため息をつく。
「バカはほうっておくとして、」
「なんだと!?」
「おい、なぜ止まった。」
今にも殴りかかろうとしているゴールドは無視して、シルバーがクリスに問いかけた。
「この先…視界がくすんでいる気がするわ。空気が違う。」
「空気が?」
洞察力に長けているはずのゴールドもシルバーも、言われるまで気づかなかった。
空気の違いというものは分からないが、よくよく見てみればその先にある蔓はすっかり枯れて茶色になっている。
この先に有害なものがあることは間違いないようだ。
「へー…よく気づいたな。」
「“風”が私の専門だもの。そして、おそらくこれは三幹部…キョウの毒よ。」
「!」
「キョウ…」
ブルー同様、同じ三幹部であるマチスからキョウの事を聞いていたシルバーはぴくりと反応した。
一方、ゴールドは眉間にシワをよせる。
彼と実際に会ったことはないが、以前レッド達が戦ったときの様子を聞いていたから、その名前に覚えはあったのだ。
「彼は毒の使い手で、毒を仕込んだ様々な武器を持っているわ。こんなふうに毒を粒子にしたものもね。」
「空気中に毒がとけているというわけか。」
「じゃあこの先でイミテ先輩達がそいつと戦ってる可能性が高いっつーわけだな!早く加勢にいかねえと!」
「ここが通れないとなると引き返して、別の道を探すのが無難か。」
「んなまどろっこしいことしてられっかよ!」
ゴールドは大声をあげ、ガシガシと頭をかく。
それを見てクリスがにっこりと微笑んだ。
「まかせて!言ったでしょ?“風”が専門だって。」
クリスはバッと札を出し、前方に向けて素早く飛ばした。
「(!そうか、風なら、)」
ビュッと勢いをたてて札の周りの空気が動いた。
目に見えて分かるものではなかったが、どうやらクリスは風を操って毒を吹き飛ばしているらしい。
「これで大丈夫。行きましょ!」
「おう!」
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