29 正しいかなんて知らない
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「天井!」
床の矢をぬくと、今度はそれを天井に放った。
またそこから蔓が出て、今度は天井にまとわりつく。
「…ああ、今度こそあった。」
うっすらと笑みをうかべると、蔓がまた動き、ある一点に向けて勢いよく突き刺さった。
「…あ、」
しばらくして、ゴゴゴという音とともに天井の一部が動き、取っ手のついた鉄の扉が姿を表した。
「鉄…それも天井かよ。」
「届きそうにないな。」
「グリーンさんの能力で床を盛り上げて足場を作ったらどうでしょう?」
「そんなことしたらこの建物が崩れるぞ。」
「じゃあ私が蔓を出して、皆を上に持ち上げるよ。」
そう言い、イミテがさっきの戦いであちこちに刺さりっぱなしの矢をぬきにいこうとしたとき、
「…!」
扉のそばにいたレッドがぴくりと反応した。
「レッドさん?」
「良いこと思いついた!」
レッドはしゃがみ、バッとグリーンの足の間に頭を入れると、そのまま立ち上がった。
…そう、肩車だ。
「…おい。」
一気に不機嫌になったグリーンとは対照的に、レッドはニッと楽しげに笑う。
「ほらグリーン。早く扉開けろって。」
「ふざけるな。この体制、罰ゲームか。俺じゃなくても良かっただろうが。」
「仕掛けがあって開けたら何かがふってきたりしたら、イミテは矢がないから対応できないしイエローも無理だろ。グリーンが適任なんだって。」
「それならお前が上でも良かっただろ。」
「説明するの面倒だし、俺、男に肩車されるのとか恥ずかしいし。」
「こっちのセリフだ。…おい、イエロー。笑うな。」
「ご、ごめんなさい!でもなんだか新鮮で…ぷっ。」
「…。」
後で覚えてろ、とグリーンは内心思ったが、とにかく一度この体制になってしまっては仕方ない。
そのまま天井にある扉の取っ手に手をかけた。
特に仕掛けがあるわけでもなく、すんなりと扉は開く。
「はーい、そのまま登って登ってー。…っいて!何すんだよ!」
レッドの軽快な口調がかんにさわったため、グリーンは天井に上る際に彼の頭を踏みつけてやった。
「たく…。次はイエローだな。グリーン、上で引き上げろよ。」
「ああ。」
「え、僕重いですって、」
「よっ!」
「ひゃ!?」
イエローが言いかけている途中で、レッドは彼女を肩に担ぎあげた。
「イエローの1人や2人、軽いに決まってるだろ。」
「(うー…//)」
爽やかな笑顔を見せたレッドの顔がこんなにも至近距離にあることに、イエローは恥ずかしさから顔を真っ赤にさせる。
グリーンに引き上げられ、イエローは簡単に天井の上へと上がった。
「で、次はイミテ、」
「その前にレッド。正直に話して。」
ぴしゃり。
イミテが言い放つ。
「は?何を?」
「私の能力で皆を上に上げるって言ったのに、なんで突然こんなことを?」
「なんだよ怖い顔して。…しいて言えば、グリーンを肩車して辱めたかったから…とか。」
はは!と冗談めいたことを言い笑うレッド。
だがイミテは表情を変えない。
「…まあいいけど。何か隠しているにせよ、もうちょっと待って。矢を集めてくるから。」
先の戦いで矢を使い果たしてしまったのだ。
回収できるものは集めておこうと、イミテはくるりとレッドに背を向ける。……が、
「…ごめんな。本当のこと言うと、時間がなかったからなんだ。」
呟くように囁かれた言葉が、妙に頭に残った気がした。
イミテが再び振り返る間もなく、「それって、」と思ったときにはもうレッドに担がれ、彼女の身体は上に放り投げられる。
「ちょ、レッ、」
「グリーン!」
「!」
グリーンもよく理解しないまま、とにかく宙に投げ出された彼女の腕を反射的に掴み、天井へと身体を引き上げた。
天井に上がってすぐにイミテは体制を直し下にいるレッドに目をやる。
彼は扉の方をじっと見据えている。
「…なにしてるの?」
さっきの彼の言葉の意味と今の行動からレッドがしようとしている事を想像し、
どくん、どくん、とイミテの心臓の音は早くなる。
「早く、上がって。」
うるさいほどに高鳴る心臓の音を無視して、落ち着いた口調でイミテは言った。
大丈夫。まだ間に合うでしょう?
そんな意味を、こめる。
だけど、レッドは動こうとしない。
「ほら、4人乗っちゃうと天井落ちちゃうかもしれないだろ?」
そんな冗談を言って、ただ笑う。
「な、なに言ってんの!?ほら!早く!早くレッドも上に上がって!!」
そんな彼の反応にさすがに動揺を隠せず、イミテは天井の上から精一杯レッドに向けて手を伸ばす。
レッドが手を伸ばせば届く距離。
「引き上げようとしてイミテが落ちたら元も子もないしな。」
「バカなこと言ってないで!レッド、使える能力、ほとんど残ってないでしょ!?」
「(!足音…!?)!レッド、お前まさか…!」
グリーンも、近づく気配と、レッドがしようとしていることを予想し、声を上げた。
「っ、」
こうなったら飛び降りてしまおうとイミテが身を乗り出す。
しかしそれより先に、レッドは剣を握り直し天井に向けて一振りした。
火の粉が上に向かってとび、隠し通路の扉のすぐ横にあたり、熱風によって扉がバタン!と閉まる。
「ちょ…嘘でしょ!?」
扉を開けようと思い切り叩くが、熱風によって変形したのかそれはビクともしなかった。
次いで聞こえた、別の扉が開く音と。
「なんだ。貴様1人か。」
敵(キョウ)の、声。
迷いはなかった
後悔もない
大切な仲間(ヒト)を守るためなら
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