29 正しいかなんて知らない
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しかし。
「え、」
ぐらりと視界が揺れて、ブルーは床にひざを突いた。
「どうした?もう終わりか?」
その声になんとか顔を上げれば、
「…っ、どうしてっ!?」
水の柱はすっかりと消えており、何事もなかったかのようにキョウがそこに立っていた。
「その泡のガードも、微粒な毒素は防げなかったようだな。」
「毒素…!?」
「先ほど俺が放った手裏剣には、もちろん毒が仕込んであった。それも、揮発性の毒がな。」
「揮発、性…」
薄れる意識の中でブルーが繰り返す。
能力者自身の力が弱まったため、いつの間にか泡のガードもすっかり消えていた。
「液体が蒸発するし、気化することだ。つまり毒素は空気に溶けて、お前の体内に入った。武器が直接当たらなくても問題はないというわけだ。」
「は、」
「もう聞いていないか。お前も知っている通り、俺の毒は即効性がある。特にその毒は特別でな。あと10分もすれば確実に全身に回る。」
キョウはブルーに歩み寄り、そして仏具を持っている方の手首を思いきり踏みつけた。
「っ、」
「気味が悪い。化物が。」
その言葉は、冷たく響いた。
「くそ…!まだいるのか!」
一方で。先に進んだはずのレッド達も苦戦している真っ最中であった。
少し進んだ先の部屋に、強いわけではないが数え切れないほど大勢の手下達が待ち伏せしていたのだ。
もう何分も戦い大分数は減ったのだが、元の数が多すぎるためにまだ数十人ほど敵が残っている。
能力者の能力にも違いがあり、レッドとグリーンは“攻撃型”で、出せる能力の回数に限りがある。
無駄なところで能力を使いたくないのだが、やむを得ず先ほどから結構な回数、能力を使っている。
イミテの場合は能力の使用回数に限りはないのだが、媒介である矢がもうない。
数十本備えていたのだが現在の戦いで使い切ってしまい、自分とイエローの周りにきた敵のみを武術で倒しているといった状況だ。
不本意にも、レッドとグリーンの能力に頼らざるを得ない。
「くそ、」
ブルーが先に行かせてくれたというのに、これでは全く意味がない。
同じ場所で、ただ足踏みをするばかりの現状…。
「焦るな。あとはコイツらだけだ。」
苛立った様子で剣の柄を握り直したレッドに、グリーンが冷静な口調で言う。
「レッド。俺よりもお前の方が能力を使っている。あとは俺がやる。」
「気持ちは有り難いけどさ、ここまできたらもう大して変わりはないだろ。」
レッドは苦笑し、剣を大きく振りかざした。
半月状に炎の輪が放たれ、数十人残っていた敵は熱風により皆とばされ、壁に叩きつけられ意識を失った。
「無駄に能力を使いすぎだ。」
「最後ぐらい派手にやりたいだろ。イミテもイエローも、無事か?」
「うん。」
2人に大きな怪我がないことを確認し、レッドはほっと胸をなで下ろす。
途中からイミテの矢が飛ばなくなったことに気づき、どれだけ冷や汗をかいたことか。(ただ矢がなくなっただけだったが)
「ここにこれだけの見張りがいるってことは、サカキが居る場所が近づいてるってことだな。」
「そうだといいが。」
「?どうかしたんですか?」
「…見ろ。奇妙なことにこの部屋には扉がない。」
「は!?」
グリーンの言葉に辺りを見回して見れば、確かに入ってきた扉以外には何も見当たらなかった。窓すらもない。
「ここまで来て行き止まりかよ!?」
「でも僕たちはキョウの居る部屋をでてから、続く廊下を真っ直ぐ進んでこの部屋にたどり着きましたよね?この部屋以外の道なんてないはずです。」
「ああ。これだけの手下を配置させておいて何もないわけがない。何か、あるはずだ。」
「…。隠してあるんじゃない?通路が、どこかに。」
イミテが冷静な口調で言った。
「隠すって、どこに、」
「ニビシティの城にも隠し通路がよくあったんだよね。」
「(あ…)」
イミテの言葉に、イエローは彼女が自分を逃がしたとき、牢屋にある隠し通路を使ったことを思い出す。
隠し通路について聞いたらたまたま見つけたと返されたが…隠し通路なのにそんなに簡単に見つかるものなのだろうかと、少し心に引っかかっていた部分があったのだ。
もしかしたら彼女は…。
「隠し通路を見つける簡単な方法があるんだ。」
イエローの予想通り、イミテはそう言って艶然な笑みを浮かべる。
「隠し通路があるってことは、その通路に縁取ってずれがあるってことでしょう?」
「はい。」
「音が、変わるの。他のところよりも軽い音に。」
そう言って、イミテは壁に刺さっていた矢を一本抜いた。
そして足元の床に突き刺す。
するとそこから部屋の四方八方に向かって蔓が伸びた。
びったりと壁にまとわりついた蔓。
「…あれ。ない。」
「おい!なんだそれ!」
あれほど説得力のあることを言っといて見つからないなんて!と思わずレッドがつっこむ。
イミテは「壁にないとしたら…」と続け…。
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