29 正しいかなんて知らない
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だけど、
「そんなことない。」
イミテは、真剣な表情で言う。
次いで軽く微笑むと彼女はブルーに、静かに耳打ちをした。
「…。あーあ。アンタが何で周りの奴らをそんなにとりこにするのか、今身にしみて分かった気がするわ。」
「なにそれ。」
イミテもブルーもお互いにクスッと笑いあう。
「さーて…、」
向き直り、ブルーがもう一度仏具をリンと振りかざす。
すると、キョウとブルーの周りを囲うようにして水の壁が出来た。
「行って。ここはあたしが食い止めるから!」
必然的にレッド達からは彼女の姿は見えないが、その声は凛としていた。
「行こう。」
イミテが先人をきって、入ってきた方とは違う扉に向かって走り出した。
「…、」
あのキョウと1対1なんて。
不安と心配は消えないが、イミテはブルーを信じてこの場をまかせた。
そう考えれば、もう答えは決まっていた。
ブルーを信じて。
そして、その決断をしたイミテを信じて。
「…っ、お願いします!ブルーさん!」
「頼んだぞ!」
レッド達も、イミテの後に続き走り出した。
扉が閉まった音を確認してから、ブルーは自身とキョウの周りを囲っていた水の壁をとく。
はりつめた空気の中、バシャン…と水が床にぶつかる音はやけに大きく聞こえた。
「どうも見覚えがあると思ったら…お前、マチスに買われた水の能力者か。」
「そうだけど、それが何か?」
「クク…、お前のことはマチスからよく聞いている。能力の性質、特徴…事細かにな。」
「そうでしょうね。」
自分のことが伝わっている可能性は予想していた。
知らないにこしたことはないが、別に能力について伝わっていたとしても別に問題はない。
戦いの場に水があることには変わりはないし、シルバーのように“能力の反射”などといった特別な弱点があるわけでもない。
それに、
「あたしも、アンタについてはマチスから聞いていたわ。お互い様ね。」
ブルー自身も、キョウの戦いの特徴、武器等については情報を持っているのだ。
不利有利の条件として、何ら差異はない。
彼の武器には全てにおいて毒がしこんであり、傷口から入り込んだ毒はまず神経に対して作用する。
ショックで意識がなくなり、毒が全身に回るにつれて発熱がおこる。
最終的には身体の各組織の機能が停止し、死に至る。
毒が全身に回る前に解毒ができれば大事には至らないだろうが、この戦いの場では意識がなくなったが最後、確実に殺されるだろう。
「クク…、すぐに殺してしまっては面白みがないからな。お前から仕掛けてみろ。遊んでやる。」
「…っ、(武器には当たらなければいいだけの話。コイツの攻撃は全て水でガードする!)」
水があれば、圧倒的にこちらが有利なのだ。
自分に言い聞かせる。心配ない、と。
もう一度、媒介の仏具を堅く握りなおした。
「(まずは…)」
リン、と仏具についている鈴が大きく鳴った。
すると、大きな泡ができてブルーの身体を守るように包み込む。
「ガードのつもりか?指でつついただけで割れそうなガードだ。」
キョウの嘲笑に、ブルーも笑みを浮かべる。
「これだけで終わりなわけないでしょ。」
言い終えてすぐ、シャラシャラシャラと、今度は連続的に鈴をならす。
すると大きな泡の内面に小さな無数の泡がぷくぷくとでき始めた。
「…。」
様子見のために、キョウは手裏剣を1つ放つ。
それは泡のガードに思いきり刺さったが、内面の小さな泡が1つ割れただけで、大本の大きな泡は微動だにしなかった。
「…フッ。小さな泡に衝撃を吸収させたというわけか。」
「ええ。意外と頑丈でしょ、この泡。」
ブルーは余裕の笑みをうかべる。
しかし内心はそんなことはなかった。
さっきは手裏剣という攻撃範囲が一点にしぼられている武器であったから攻撃を防げたのであって、剣などを大きく一振りされればこの泡はいとも簡単に壊れてしまうだろう。
だからこそ、相手と一定の距離を保ちながら早く決着をつける必要があった。
「次は攻撃するから覚悟しなさい。」
その焦りを決してキョウには悟られないように、ブルーはまた大きく一振りして鈴を鳴らす。
「…ほう。」
瞬時にキョウを囲うように円上に水が集まり、そして、それを中心にバッと天井までの高さの水の柱ができた。
中にはもちろん、キョウが閉じこめられている。
以前ブルーがレッドとグリーンの足止めをするときに使ったのと同じ戦法だ。
上から下へ向かって流れる水流の圧は相当なもので、一度手を入れたものなら簡単に切断されてしまうだろう。
「大人しくしていてちょうだいね。」
さあ。後は水を上手く彼の首にあてて、気絶でもさせておけば終わる。
狙いを定めるために、少し近づこうとブルーが足を一歩踏み出す。
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