29 正しいかなんて知らない
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「安心しろ。この部屋には毒は入らない造りになっている。」
キョウはスッと立ち上がり、視線はそのまま、続ける。
「本当はお前たちは様子見をするヤツらとその場に残るヤツらで分かれると思っていたんだが…面白味がないな。」
キョウはククッと喉を鳴らして言う。
イエローは告げられたことを想像し思わず身震いした。
もし彼の言ったとおりの行動をしていたら、廊下の外に残った者達は毒を吸い込み最悪の事態がおこっていたかもしれない。
「予想が外れて残念ね。5対1じゃ、流石の3幹部さんもキツいんじゃない?」
ブルーが見下すかのような笑みとともに言う。
「お前たちごときが何人増えようと結果は一緒だ。忘れたか?以前戦った時に歯が立たなかったことを。」
「あの時とは違う!」
「クク…。威勢がいいのは相変わらずだ。ガキだな。」
「…っ、」
キョウの淡々とした口調で会話が進んでいく中、ブルーはチラリと横目で部屋の様子を確認する。
改めてみてみると、部屋の隅の方には半径2メートルほどの中規模な水をためる場所が設けられていた。
一瞬、風呂かとも思ったが、部屋の中には湯気がたっていないため違うようだ。
水浴びようか、鑑賞用か…。
依然としてチョロチョロと石像のようなものから水が流れているそれに、ブルーはしめたと笑みを浮かべる。
“水”があるなら、戦いの場はこちらが有利。
「…ふう。ようやくあたしが活躍できる時が来たようね!」
ブルーが一方前に歩み出る。
手には、媒介である鈴のついた仏具。
「…。」
「…。ブルー。1人で相手できるような人じゃないよ。」
「でもね、この先にもう水がある場所がなかったら、あたしは戦わないままになるじゃない。そんなの嫌よ。」
「自分の力を過信するな、と言ったはずだが?」
「アンタは相変わらずいちいち嫌みな言い方するわね。心配してるんだとか言えないの?」
「!ブルーさん、まさか1人でこの人の相手をするつもりですか!?」
「ええ。あたしもね、ゴールドと同意見なの。」
そう言うとブルーの表情はひどく真剣なものになった。
彼女は続ける。
「レッド、グリーン…イミテ。アンタたちが決着をつけるべき。この戦いは。」
「ブルー…」
「それならせめて、僕がブルーさんと一緒に残ります!」
「あのねえ…正直言って足手まといなの。」
「っ、」
一瞬で傷ついた表情になったイエローに、ブルーは苦笑を返す。
「アンタが戦えないからとかじゃないわよ。あたしは今まで単独で戦うことしかしてこなかったから、治癒専門のアンタを守りながら戦う自信がないだけ。独りの方が上手く戦える自信があるのよ。」
「でもね、ブルー」
「もうっ!しつこいわね!その他にも理由はあるわ。まず1つめ。この戦いの場には水があるから、あたしの能力が思う存分活かせること。」
納得いっていない様子のイミテに、ブルーは人差し指を突き立てて諭すように言う。
「2つめ。相手は毒の使い手だから、接近戦のアンタたち(レッドとグリーン)には不利。遠距離戦のイミテも、さっきみたいに毒で蔓を枯らされたら意味がない。つまり、有効な攻撃ができるのはあたしだけ。」
「…。」
「ね。何が最善か、分かったでしょう?……早くしないと、敵はいつまでも待ってはくれないみたいよ。」
そう言った直後、彼らに向けて手裏剣が放たれた。
グリーンがすぐに反応し、刀の刃でそれをはじく。
…が、
「!?」
はじいた部分から紫色の小さな煙が発生した。
「チッ…(毒か、)」
慌てて後ろに飛び退こうとしたとき、ザバァ!と水がグリーンの真上を通り越し、煙にぶつかった。
もちろん煙はその衝撃で跡形もなく消える。
「フフ…、論より証拠ね。分かった?あたしの能力が一番有効だって。ちょっと水がかかっちゃったけど、まあ、水もしたたるいい男ってやつ?」
オホホ、とブルーの高笑いが辺りに響く。
「……あのね、イミテ。あたしは本当にアンタに感謝してるの。アンタと出会ってなかったらこうはなってなかったから。」
ブルーはイミテの手を取り、微笑む。
「少しでもアンタの役に立ちたいの。アンタにとってあたしはただの他人かもしれないけど、あたしはこれでもアンタのこと、すごくすごく大好きだったのよ。」
「ブルー、」
「…まっ、アンタの中でのあたしの順位なんてイエローやグリーンやレッドに比べたら低いもんだろうけど。」
さっきまで微笑みながらも真面目な雰囲気だったくせに、イミテの次の反応を見るのが少し不安だったのか。
ブルーはひらりと、それを上手く冗談としてまとめようとした。
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