29 正しいかなんて知らない
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レッド達の足音に続いて無数の足音が後方から聞こえてくる。
「ゴールドとシルバー、大丈夫かしら…。さっき見たのと同じくらい足音が聞こえるけど…まさか、」
「追いかけてくる中にナツメがいなければ大丈夫。彼らがくい止めてくれてる証拠だよ。」
「…ええ。そうね。」
イミテの言葉にブルーは前を向き直った。
今自分がすべきなのは心配じゃない。
「それにしても、この数…いずれ追いつかれる。」
「だったらここでくい止める!」
イミテがザッと音を立てて止まり、後ろを振り返る。
そして今来た通路の壁…それも少し遠くの方に向けて矢を放った。
イエローは緑の能力で蔓を出して道をふさぐのか…とも思ったが、イミテはそれっきり後ろを向いたままだった。
「イミテさん?何を…」
「しっ。足音が聞こえなくなる。」
やがてバタバタと数十人の家来たちがその場にたどり着いた。
「いたぞ!あそこだ!」
「絶対に逃がすな!!」
おおお!と気迫のこもる声とともに、家来たちはこちらに向かって走ってくる。
その大半が先ほど放った矢の刺さっている地点を通り過ぎた、という頃。
「(このへんでいっか。)」
イミテがグッと力をこめた。
すると、あっという間に矢から蔓がでて、その一画に新たな壁ができたかのようにまんべんなく覆い尽くす。
「な、なんだ!?」
一瞬ひるんだすきをついて、今度は自分がいるところと家来たちがいるところの間に矢を放った。
その矢からも先ほどと同様に蔓が伸びていく。
こうして彼らを追ってきた家来たち
は見事に蔓で仕切られた空間に閉じ込められた。
「!なるほど、両方を蔓で遮ったのって、」
「うん。行き場をなくした彼らをエントランスの方に戻さないため。」
ゴールド達のところに戻ってしまっては彼らの戦いが不利になってしまうから。
「何人かは取り逃がしちゃったけど。」
後方を走っていた家来たちはさすがに閉じこめることはできなかった。
でもイミテの今の顔は満足げだ。
全員とまでは言わないが、数人戻ってしまう程度は許容範囲内なのだろう。
「!階段だ!」
またしばらく走ったところで、先頭を走っていたレッドが上の階へとつながる階段を見つけた。
サカキが居る場所は特定できていない。
しかし、最高位の位のものがいる場所といったら、やはり城のてっぺんの可能性が高い…か。
「とりあえず進もう。」
「待って。」
足を進めたレッドの腕をブルーがつかんで止める。
「そっちじゃない。サカキがいるのは…きっと地下よ。」
「地下!?普通の城なら地下は武器庫とか食糧庫だって決まって…」
「あたしがマチスに仕えていたとき、アイツも自分の城では地下に自室を構えてた。相手の裏をかいて、ね。それは、直属の上司にあたるサカキの真似をしたって可能性も、すてきれないと思うわ。」
「なるほどな。一理ある。だがそれだけでは根拠不足だ。」
「どうする?地下に行ってから上の階に戻る時間はないぞ。たぶん。」
「二手に別れてもいいけど…」
「それは最悪の場合だな。ブルー。他にマチスがしていたことで普通と違うことはないのか?」
「…そうねえ、」
ブルーはしばし考え、そしあることを思い出す。
「地下って、たいてい貯蔵庫になっているから襲われるリスクが高いじゃない?それを補うためか、あたしかシルバーがマチスの部屋までの順路に配置されることが多かったわ。」
「途中で侵入をくい止めるってことね。ニビシティの王もそうだった。」
「だったら…キョウがいる先にサカキがいるってことか。」
「キョウがどこにいるかが分かれば解決するんだけど…」
サカキがいる場所を見つけるにはキョウがいる方へ進めばいいということは分かったが、そもそもそのキョウがいるところが分からない。
話がふりだしに戻ってしまった。
「…あるわ。キョウを見つける方法。上手くいくかは分からないけど。」
そう言ってブルーはちらりとイミテに目をやって言う。
イミテは全く動じず「なに」と単調に返した。
「キョウは毒の専門家でしょう?人に影響は与えないとしても、彼の近くには毒のついた武器からでた空気中に他とは違う成分が少なからず含まれていると思うの。」
「たしかに、ね。」
「それで、その毒の成分を一番感知できるのは何かって言ったら生きている、植物だろうから、」
「イミテが能力で蔓を伸ばして違いを感知する、ということか。できるのか、イミテ。」
「…。やったことはないけど、蔓の伸びる早さは調節できるし…うん、できるかもしれない。」
とりあえずやってみる、とイミテは弓を構え、矢を1本壁に突き刺してみせた。
そこからまた蔓が伸びていく。
枝分かれした蔓は、1本は階段の上へ、1本は階段の下へと進み…。
ザワ、ザワ…、
静かに蔓が揺れる。
イミテは弓を持っている左手に右手を重ねて、目を瞑り、それを感じとっていた。
少しずつ少しずつ伸びていく蔓、そして-…
「!蔓の伸びる早さが変わった!」
「どっちだ!?」
「遅いのは、地下のほうの蔓。ほんの少しだけど確かに違った。」
「上出来だ。毒素の影響を受けたってことか。」
「ビンゴ、ね。行きましょう。」
ブルーはにこりと綺麗な笑みを浮かべて言った。
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