29 正しいかなんて知らない
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「…!」
一気にその場が緊張で張りつめた空気に変わる。
その変化にフフフ…とナツメは満足げに笑った。
「お前たち、指示があるまでそいつらを攻撃するな。下がっていろ。」
「ですが…、」
「二度も同じことを言わせるな。」
「…はっ!」
ナツメがギロリと睨めば、その手下はひるんで黙り込んだ。
「…さっき入り口をふさぐために地面を盛り上げたせいで地盤が緩んだ可能性もある。急いだ方が賢明だ。」
「だったら私が相手をする。」
「え、イミテさん、」
「対抗できるのは、私の能力だから。」
ナツメは能力者ではないが、超能力をもっており無生物を操ることができる。
それを無効化できるのは、“生物”である蔓や木々を出す、緑の能力者のイミテのみだ。
「笑わせるな。それを補うために私は常にコイツと動いているんだ。」
ナツメはチラリと後ろに自分の視線だけをやる。
そこにはいつの間にかクリスの姿があった。
「ゴールド。たしかアイツは…風の能力者だったか?」
「そうッス。媒介は札。風にのせて札を飛ばして、それが貼りついた相手を操ることができる。」
「風、か…」
風、ということは、レッドの炎の能力は少なからず影響を受けそうだ。
ブルーの水の能力はここには水がないから発揮できず、シルバーの能力は自身に負担がかかるためそのすきを狙われたら終わりだ。
有効なのは、自分の大地の能力か、ゴールドの雷の能力…だが、
「(ゴールドはイミテと連携して戦った経験は少ない。ここじゃ派手な戦い方はできないだろうが、動きやすいのは俺の方か…。)」
「グリーン先輩?」
「ここは俺とイミテでやる。お前らは先に行って…サカキを探せ。」
グリーンは刀を構えて、彼らに言う。
「……ダメッスよ。」
スッと、グリーンより一歩前にゴールドが出て、振り返らずに言う。
「先輩たちは、先に行かなきゃダメッス。これは、アンタ達の物語なんだから。」
世界を変えたい。
特にそう強く願っているのは、レッドとグリーンと、そしてイミテなのだから。
彼らが主役の戦いでなければいけない。
彼らが自身で、本質にたどり着かなければいけない。
「ゴールド。戦いにも相性があるの、分かるでしょ?有利な状況をわざわざ自分から手放す必要はない。」
イミテが諭すように言う。
ゴールドの気持ちは正直言って、嬉しい。
けれど、ダメなのだ。
感情論でどうにかなる相手ではない。
「俺だって、アイツ(ナツメ)と戦ったことはある。対策ぐらい考えてますよ。」
しかしゴールドも譲る気はなさそうだ。
「…じゃあ私とゴールドでここをくい止める。グリーンは先に行って。」
「イミテ先輩。デリカシーないッスよ。昨日自分をふったばかりの女と共闘しろっつーんスか?」
「冗談言ってる場合じゃ、」
「そっちこそ。冗談言うの止めてくださいよ。…アンタ達は、先を視るべきだ。」
ゴールドがもう一度言う。
「惚れた人の前でぐらい、少しはかっこつけさせてくださいよ。」
いつものようにへへっと冗談混じりに笑いながら。
「つっても、さすがに俺1人じゃ厳しいし、ブルー先輩は水がないから戦えねえし、頼みたくねえけど…お前に頼むしかないみてえだな!シルバー!」
「…。」
「お前、俺と一緒に戦え。」
「…それが人に物を頼む態度か。」
はあとため息をつきつつ、シルバーは自身の媒介である黒の手袋をギュッとはめ直す。
次いで、顔を上げたときには少し殺気だっていたようで、ギロリと動いたその目に手下達がひるんだことが空気で伝わった。
「シルバーが能力の副作用を受けたときすきができる。そこで札を貼られれば、風の能力者の思うつぼだぞ。」
グリーンの言葉を予想していたかのように、ゴールドはニッと笑みを浮かべた。
「風の能力者?俺はそんな奴とは戦うつもりはないッスよ。俺が戦うのは、アイツのみ。」
ゴールドはビッとナツメに棍棒の先をを向けて言う。
「私は相手にもならないとでも思ってるの?なめないで。」
クリスは札を取り出して、構えるようにしてゴールドに見せつける。
「ちげえよ。お前はこっち側の人間だから。」
「…どういう意味?」
「つまり、この戦いは3対1になるっつーこと。」
ニヤリとゴールドが笑った。
「イミテ先輩。行ってください。こっちは…大丈夫ッス。」
「…。」
今のやりとりを聞いて、イミテはゴールドがやろうとしていることを察した。
風の能力者がこちら側についたならば…なるほど、だいぶ有利だ。
「お願いね、ゴールド。シルバー。」
「いいのか?」
「大丈夫。まかせよう。」
きっぱりと言い切ったイミテに、周りも何かあるようだと悟る。
「シルバー。無茶しちゃダメだからね?」
「分かってるよ姉さん。」
「行こう!道は…こっちだ!」
レッドがそう言って剣をふるうと無数の火の玉がとんでいった。
手下達はそれを避けるためにいとも簡単に道をあける。
迷わず彼らはその道を走っていった。
「何をしている!早く追え!」
「ここに残った奴らはどうすれば、」
「私達が始末する。さっさと行け!」
「は!」
少し遅れて、手下達がその後を追った。
「(まあアイツらは雑魚っぽいからイミテ先輩達なら簡単に倒せるだろうし、ほっとくとして…)結局、お前を行かせなければいいんだもんな。答えは簡単だ。」
ゴールドは棍棒を大きくぐるんと回し再び構える。
やる気は十分だ。
「かっこつけてる暇があるなら、風の能力者についてさっき濁していたことを教えろ。」
「あ?なんだよシルバー。気になってたのか?んじゃまず、緊張をほぐすために世間話でもしようぜ。」
「世間話、だと?」
「おう。独りの元軍人のちっぽけな正義感がでっけえ意味をなした話なんだけどよお…、」
……自分が小さい頃、一番あこがれていた人の話。
ゴールドはクリスを見てニッと笑い、続けた。
「クリス!お前をつなぎとめてる鎖…解いてやるよ。」
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