29 正しいかなんて知らない
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ブルーの情報は正しかった。
レッド、イミテ、グリーン、イエロー、ゴールド、ブルー、シルバー…合計7人もの大人数で行動したにもかかわらず、見張りにバレることもなく城までたどり着けたのだ。
「すごいッスね!」なんてゴールドが褒めると、ブルーからは「当然よ」という案の定な言葉が返ってきたものの、その声色は緊張していた。
それもそれで当然なのだろう。
最後の、大きな戦いが始まろうとしているのだから。
「それにしてもこの城…なんか不気味ッスね。童話ででてくる魔女の城、みたいな!」
ゴールドは1人声を潜めてそう笑う。
ブルーやイエローなどから緊張が伝わってくる中、彼は上手に緊張を隠していた。
「場所も場所ですもんね。どんよりしてますし。…なんだかトキワの森とは正反対です。」
焼き払われてしまって今はないトキワの森は、草木が多く覆い茂っていて、そこに太陽の光が降り注ぐような…幻想的な明るい場所であった。
しかしこの森は対照的で、草木が多いもののその1つ1つがよく成長しているため(悪く言えば成長しすぎているため)、太陽の光は全く届かなくて、昼前なのに辺りは薄暗い。
おまけに霧が立ちこめていて、そのどんよりとした雰囲気を助長するかのようだ。
そんな中に建っているこの城は、城自体は不気味なものでもないのだろうけれど、どうしても不気味という印象を受けてしまう。
「入り口が一カ所しかないっていうのも…な。」
レッドの表情が歪む。
城は塀に囲まれていて出入り口は1つだけのようだった。
故に、中の様子は全く分からない。
「まずは情報を集めようか。」
イミテがスッと弓を構える。
「何するつもりだ?」
「蔓を出して、木の上に登って中の様子をたしかめるの。」
「それは賛成できないわ。木の上にトラップがある可能性がある。」
「その時は上手くかわすよ。バレるかもしれないけど、様子が分からないなら正面しか侵入するしかないし同じことでしょ?」
「そうじゃなくてあたしはアンタの心配してるのよ。起爆装置でも仕掛けられてても上手くかわせる自信あるの?」
「…じゃあ、どうするの?」
イミテは少しめんどくさそうに言った。
結局はどんな作戦だってリスクはつきものなのに…と心の中で静かに思いながら。
「そうねえ…まずは、目くらましかしら。昨日買った煙玉あるでしょ?あれをありったけ投げ入れるの。」
「それ、前が見えなくて俺達も進めなくなるって。」
「平気よ。これがあるから。」
ブルーはそう言って双眼鏡のようなものを取り出した。
「なんですか?」
「シルフスコープっていうの。全てを見通す効果があるのよ。これを使えば煙の中も余裕で進めるってわけ。」
「でもそれ、1つしかないんだろ?」
「あたしがスコープをつけて、この鈴を鳴らしながら走るから音を頼りに追ってきて。一気に城の中まで行くわよ。」
次いでブルーは自分の能力の媒体である鈴のついた仏具を取り出す。
「なるほど。」
「了解ッス!」
これならば戦闘になることもなく、とりあえずは城内までいけそうだ。
突破口が見えた、と一同は意気込む。
……が、
「…。」
イエローだけは神妙な面持ちで、胸の前で手をぎゅっと握る。
無理かもしれない、と心の中で小さく呟いて、うつむく。
自分以外の皆は戦闘経験が十分にあって鈴の音をたどるなんて容易にできるかもしれないが、自分には無理かもしれない…、と。
でも、足手まといになるのは嫌で、今の空気を壊すのも申し訳なくて、不安な気持ちを小さく押し殺す。
「(必死に、とにかく見失わないようにすればなんとかなるかも…)」
隠し通そうと意気込んで、うつむいていた顔をあげると…、
「あ…」
イミテと目があった。
少し遅れて、彼女が今までの自分の一連の行動をずっと見ていたのだと気づく。
「あ…、えっと…」
なんとかごまかそうにも良い言い訳なんて出てこなくて。
口ごもったイエローの手を、イミテがパッととった。
「イミテ、さん…?」
イミテはただ、にっこりと笑みをうかべる。
「大丈夫。私がイエローの手を引くから。一緒に行こう。」
「…っ!はい!」
その流れを見ていたレッドも口元にうっすらと笑みをうかべて、真剣な表情になって「…行くぞ。」と告げる。
それを合図に、ブルーとシルバーが城の中に煙玉を投げ入れた。
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