28 想いと共に脳裏をよぎる(後編)
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夕食を終えて。
彼らは男子5人が泊まる部屋に集まって、翌日の作戦をたてることにした。
「まず、サカキの本拠地はここよ。」
ベッドの上に大きく開かれた地図の一点を、ブルーが指差す。
え!?、と最初に声をあげたのはイエローだった。
「トキワの近く…ですか?」
ブルーが指差したその場所は、彼女の生まれ故郷トキワの森…そしてそれに隣接するトキワシティのすぐ近く。
「でもトキワは至って平和な町でした。そんな高い地位の人達が出入りするような立派な建物もありませんし…」
「いいえ。ここ見て。トキワの森から、トキワシティを挟んでちょうど反対側…ここに小さな林があるの。そこがサカキの本拠地よ。」
「林…。あ、そういえば、ひっそりとですけどありました。でもそこはいつ行っても靄がかかっている不気味なところで、迷いやすいらしくてその林に行ったっきり帰ってこなかった人も何人かいました。」
「小さな林じゃないのか?帰ってこないヤツがいるって…そんな、」
レッドが言って、自身の言葉にハッとする。
イエローも気づいたみたいで、「まさか…」と青ざめた顔で言った。
「サカキが口封じのために、林に入った人達を消したってこと?」
変わりにイミテがその予想を口にする。
「その可能性は高いわ。今はその林どうなってるか分かる?イエロー。」
「少なくとも僕が町にいたときには立ち入り禁止になっていました。」
「それを命令したのは?政府か?」
「いえ、トキワシティの王子です。」
「王子…?」
「ちっぽけな町だったんですけど、ちゃんと王子様がいたんです。僕はトキワの森に住んでいたのでその姿を見たことはありませんが。」
「名前は分かるか?」
「分からないです…すいません。」
しゅん、とイエローはうつむく。
トキワに住んでいた者でさえはっきりとは知らない、ぼやけるトキワシティの王子の存在。
…十分すぎるほど怪しい人物だ。
「そいつとサカキが繋がっている可能性があるな。ブルー、シルバー。そこは調べてないのか?」
「ええ。あたし達も今初めてトキワの王子の存在を知ったから。」
「よそ者には他言無用な内容なのかもしれないッスね。」
「そのことについて情報不足だな。体制を立て直すか。」
「いいえ。確かにトキワの王族のことについては分かっていないことは多いけど、サカキの本拠地についてはばっちりよ。ほら。」
そう言ってブルーが取り出したのは、またもや地図であった。
そこにはトキワから本拠地のある場所までの、見張りがいない上での最短ルートが記されていた。
「さすがに城の中までは侵入できなかったけどね。十分でしょう?」
「すご…!これ、ブルー先輩が実際に言ったんスか?」
「ええ。シルバーと一緒にね。」
「無理はしないでって言ったのに。」
「このくらい楽勝よ!そもそも、手強そうな奴らは林にはいなかったから。」
「?どういう意味ですか?」
ブルーに変わってシルバーが落ち着いた口調で答える。
「サカキの強力な手下であるナツメやキョウは林にはいなかった。」
「!それってすげえチャンスってことじゃねえか!」
「そうでもないわ。確かにナツメ達が本拠地にいなければチャンスだけれど…城の中にいたとしたら、建物の構造を知っている彼らの方が圧倒的に有利になる。」
「…俺達がサカキのことを調べていることはもう相手には知られているんだ。城にいて戦いに備えている確率のが高いな。」
ナツメにおいては超能力で無生物を操ることができ、まともに対抗できるのは生き物である蔓を使う緑の能力を持っているイミテのみ。
キョウにおいては以前一戦交えたとき、圧倒的な力の差を見せつけられた相手だ。
サカキに至っては闇の能力者という情報しかなく、実力も分からない。
「……勝てるでしょうか、僕達…。」
その場にいた誰もが一瞬不安に思ったことを、イエローがぽつりと弱気に呟いた。
辺りに流れる、重い空気。
それをまず破ったのは、レッドだった。
「平和な世界を望む限り、いつかはヤツらと戦わなきゃいけない。…俺達が十分な自信がつくほど強くなるまで時間をかけてたら、余計に世界は不幸になっていく。」
「…はい。」
それは分かっている。
今やらなければいけないことぐらい、分かっている、けど…
誰かが傷ついてしまうことが怖くてー……
次いで、レッドはニカッとその場の暗い雰囲気を吹き飛ばすかのように笑った。
イエローの気持ちは分かっていたから。(だってそれは彼自身も心のどこかで思っていたことで。)
だから笑って、彼女に言う。
「大丈夫。絶対に勝てる。」
励ましの言葉を。
「勝って、今とは違う平等な世界になる。絶対に。」
根拠なんてないけど、すがりたい未来を語る。
それが現実になればいいと、願いを込めて。
「…そうですね。」
イエローは目を細めて笑った。
どうして、彼の言葉は…こんなにも勇気をくれるんだろう。
確信なんて、何もないのに。
彼の言葉だから、信じられる気がした。
「(彼のためなら、“私”はー…)」
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