28 幼い日の約束は(前編)
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グリーンが行きたいと行った場所は、丘の上にある展望台だった。
「へー!気づかなかったな。こんなところに展望台があるなんて。」
レッドは手すりから少し身を乗り出して街並みを眺める。
「ほんと。…静かでいいね、ここは。」
賑やかな街とは対照的に、この場所には彼らの他に数人程度の観光客しかいなかった。
とてものんびりとした時間が流れている。
「人ごみを歩くよりこっちのが落ち着く。」
グリーンも手すりに背中をあずけて息をつく。
彼らしい、とレッドもイミテもこっそりと笑った。
いつの間にか辺りはオレンジ色に染まっている。
気づかないうちにけっこう時間がたっていたらしい。
「ブルー達、探してるかな。俺たちのこと。」
「おそらくな。」
「そう?意外とあっちはあっちで観光してるんじゃない?」
サア…と風がふき、いたずらにイミテの長い髪をゆらした。
そんな彼女の姿をレッドが少し目を細めて見つめ……そして言った。
「なあ…イミテ。聞いてもいいか?」
「なに?」
「ゴールドのこと、どうするつもりなんだ?」
「…。」
レッドの言葉にイミテは目を伏せる。
彼女自身も、このままうやむやにするのはよくないと思っていた。
気まずい雰囲気で周りによけいな気遣いをさせないためにも。
そして、自分を好きだと言ってくれたゴールドのためにも。
返事をしないなんて。
なかったことにしようなんて。
逃げるなんて。
卑怯なことはしたくなかった。
ちゃんと…自分の気持ちを伝えなければいけない。
「ちゃんと今日、時間をとろうと思う。」
イミテは凛とした口調で続けた。
「ゴールドと、話す時間。」
笑顔で、言う。
心配しなくても、もうイミテの中で答えはとっくに用意されていたようで。
「そっか。」
「…。」
レッドもグリーンも、その様子を見て穏やかに笑った。
「…はーあ!楽しかったなー!今日!」
レッドが絶縁グローブをはめた左手を夕日にかざして言った。
この瞬間がすぎていってしまうのが…とても惜しい。
「私も。3人でこうして出かけるのはマサラタウンにいたとき以来だったから。」
「グリーンもなんだかんだで楽しんでたようだし。」
「は?」
「楽しかっただろ?実際。」
「……別に、いつもと変わらない。」
「『くだらない』とか言わないってことは楽しかったってことだね。」
「な…!」
何かを言い返そうとしているグリーンをよそに、イミテは綺麗に笑った。
「これで、雰囲気だけでも約束果たせたな。」
「約束?」
イミテが聞き返せば、レッドは穏やかに笑って……。
「“3人でいろんなところを旅する”って、約束しただろ?」
「っ…!」
「今までのは旅っていうより戦いが中心だったし、イエローとゴールドもいたしさ。だから、今日俺達だけでいろいろ見て回れて良かった。」
「フッ…お前らしいな。」
穏やかな温かい空気が。
3人の周りをつつんでいるようだった。
「…イミテ?」
ふと、イミテの目が潤んでいることに気づいてグリーンが彼女の名前を呼ぶ。
「…あれ、なんで、だろ……」
イミテは顔の前に手を持ってきて涙がこぼれそうになるのを、慌てて隠した。
なんで、なんて…分かってる。
嬉しかった。
こうして3人でいられることが。
こうして昔の思い出に浸ることができるのが。
「…、」
嬉しい…はずなのに。
そう感じる度に、心のどこかでひどく切ない気持ちがこみあげてくるのはー…
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