28 幼い日の約束は(前編)
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おい、「!」
文句を言おうとしたグリーンをよそに、イミテは急にピタリと足を止めた。
「?なんだ?」
レッドが聞くと、イミテは「あれ…」とだけ言ってどこかに走っていく。
彼女が立ち止まったのは一件の店のショーウインドウの前。
次いで、レッド達の方を振り返って言った。
「見て!懐かしいものがある。」
嬉しそうなイミテにつられるように、レッドとグリーンもそこに近づきガラスの向こうをのぞき込むと、
そこには綺麗なベールがあった。
「あ、見たことある。これ踊り子が羽織るようなやつだろ?」
「なつかしいってまさか…」
「そう。マサラに踊り子が来たときのこと、思い出して。」
イミテは少し、目を細める。
数年前、マサラタウン。
その日はたしかマサラタウンができて何百年目という記念日で、朝からわいわいと人でにぎわっていた。
遠方から招いた芸人達による芸や踊りや歌が披露されていたからだ。
レッド、グリーン、イミテも3人一緒にその様子を見ていた。
特にマサラタウンから出たことがなくてこういった武芸をみるのは初めてのレッドとイミテは目を輝かせて感嘆の声をもらしていた。
そんな出し物の一種にでていた踊り子の衣装が、イミテの目にはそれはそれは魅力的に映ったらしく、数週間は『私、将来踊り子さんになる!』と言っていたほどだった。
『あのベール綺麗だったなあ』とか『装飾品、どこに売ってるんだろ』とかあまりに言うものだから(たぶん無意識)、何とかしてやりたいと思ったレッドとグリーンは、わずかばかりのお金を握りしめて少し離れた隣町に衣装を買いに行ったのだ。
しかし、当然それは子供のおこづかいで足りるようなものではなく、結局何も買わずにマサラタウンに戻り、しかも事情を知らないイミテには『私をおいて2人だけでどこ行ってたの!?』と泣かれる始末。
その数日後、せめてもということで彼らは手作りで装飾品をつくることにした。
イミテにまた仲間はずれにされたと流れては困るということで、作業はもっぱら夜だったが。
レッドは家にあった布を花を利用してキレイなピンク色に染めあげて、グリーンはなんとせっせと花の飾りつくったのだった。
普段はイミテが好んでやるようなことを自分たちがやっているという状況が何ともおかしかったが、まあ数日かかってそれらはなんとか完成したわけで。
それをイミテにあげたときの反応は、思わずあげたこっちが恥ずかしくなるような嬉しいものだった。
『嬉しい』と『可愛い』と『すごい』を何度も繰り返し、本当に嬉しそうに笑っていた。
その後さっそく彼女は、グリーンがつくった花の装飾品(首飾りや冠、ブレスレットなど)をつけ、レッドが染めた布を身にまとったてみたのだが…
『『…!』』
その姿は、マサラにきた踊り子とはだいぶ違ったが、とても…とても可憐で、レッドもグリーンも頬を赤くそめて息をのんだ。
身にまとうものだけで、こんなにも人の印象は変わるのか、と…
そんな2人の反応に、イミテはまた心底嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに微笑んだのだった。
「レッドとグリーンがいろいろ準備してくれて…感動したなあ。グリーンが作ってくれた花の飾りはさすがに枯れちゃったけど…」
「あーあ。イミテにも見せてやりたかったぜ!グリーンがちまちまちまちま、花くっつけてるところ!似合わねえのなんのって。」
「…ほっとけ。」
すると…、
「ぷ…あはははは!」
イミテが、お腹をかかえて笑い出す。
レッドとグリーンはそれに驚き、彼女の方を見ると、イミテはまだ笑いが収まらないといった様子で言った。
「想像したらすごく楽しくなっちゃった!」
そう言って、満面の笑みをうかべる。
「「…。」」
その様子に、レッドもグリーンも、何となく安心感を感じた。
ニビシティの軍人になってから、イミテの雰囲気は変わった。
根本的な考え方が変わっていないのは分かっているのだが…、ただ、マサラタウンにいた頃のような無邪気な笑顔をみせることはなくなっていたから。
そんなイミテが今。
自分たちの前で昔と同じ、楽しそうな笑顔をうかべているのだ。
「…なに、その顔。」
レッド達がやわらかく笑みをうかべていることに気づいたイミテは少しだけ照れくさそうに顔を背けた。
「いやー…本当になつかしいなあ。いろいろと。」
「その含んだ言い方、すごく気になるんだけど?」
「気にすんなって!…さて、と。このまま戻るのも、なんとなくもったいないな。もう少しぶらぶらしようぜ。どこか行きたいとこあったか?」
レッドがグリーンとイミテに向けて言う。
それに答えたのは、意外にもグリーンであった。
「だったら…、」
.