28 幼い日の約束は(前編)
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「2本の合計点は、えーっと、5等か。はい、あめ玉ね。」
「…。」
店主に差し出された小さな可愛らしいあめ玉を、レッドは無言でうけとった。
「…イミテ。」
「うん。」
グリーンがイミテの名前を呼ぶと、彼女はそれにだけ返事をする。
お互いに思うことは同じのようだ。
「レッド。次は私がやる。」
「…やっぱりあめ玉じゃ欲しくないよな。」
「そうじゃなくて。まあ、レッドは弓うつことに集中してたぶん気づきにくいんだろうけど。」
「え?」
「グリーンに聞いて。」
「…あ、お店の人にはばれないようにね。」と、最後に小声でつけたすと、イミテはサッと店主にお金を払い、自身の弓矢を準備する。
「!ちょっとちょっとお嬢ちゃん!弓ならまだしも、矢まで自前はちょっと…」
「そうですか。」
あわてる店主にしらっと応えて、イミテは店用の矢を手に取った。
冷静に、手でその重さ、矢羽の形を確認する。
店主はその様子を不安げに見つめていた。
「おい、グリーン。さっきのイミテの言葉、」
レッドはその間にグリーンのそばにより状況を確認しようとする。
「気づかなかったか?お前が最後の矢をうったとき、あの店主は不自然に右手を動かした。」
「!?」
「動く的があっただろう?右手が動いたと同時に、その的が動く速度が一瞬だけ急速に早くなったんだ。」
「的は店主が操ってるってことか?くそ!じゃあそれがなかったらもっと点数高かったのに!」
「違う。不自然だったのはその1回だけで、見当違いな方向にとんでいった3本の矢はお前のせいだ。」
「…。」
何はともあれ、明らかに今度も不正が行われるであろうにイミテは大丈夫なのかと、彼女の方に視線を戻すと…
「!」
そこには5つの的、全て中心に矢が刺さっている光景があった。
店主は驚きのあまりこれでもかというくらいに目を見開いている。
「最高得点ですよね?景品のグローブ、もらっていきますね。」
イミテは清々しいくらいの笑みを浮かべ、グローブを店主に見せつけるように手に取った。
「まさか…全部あてる奴がいるなんて…」
呆然とつぶやかれた言葉に、イミテはこれまた綺麗に笑って言った。
「“不規則に動くもの”を狙うの、得意なんです。」
「あー、楽しかった。」
的当て屋から出て来た道を戻る最中、イミテはご機嫌といった様子でレッドとグリーンの一歩前を歩いていた。
「…。」
レッドは思った通りの結果にならなかったせいか、どこか不服そうだ。
対照的な2人を見てグリーンの口元
には密かに笑みがうかぶ。
「ああ、そうだ。レッド、さっきの景品ちょうだい。」
ふいにイミテがふりかえり言う。
「え、あめ玉だぞ?」
「?うん。」
別に気にもしていない様子のイミテに、レッドは一瞬呆気にとられたが、ズボンのポケットからそれを取り出して彼女に差し出した。
「ありがと。」
イミテはそれを手でちょいっとつまんで笑うと、あめ玉がなくなったレッドの手のひらに「はい」と何かをのせる。
「グローブじゃん。」
「うん。あげる。」
それは先ほど景品としてもらったグローブで。
「!?イミテ、これ欲しかったんじゃないのか?」
「え、まさか。ただ単に最高得点のやつ選んで、レッドが驚く顔見たかっただけ。」
いたずらに笑ったイミテに、レッドはますます不服そうな顔になり「たく…」と納得いかなそうにつぶやいた。
「それに私、弓矢用のグローブあるし。…ああ!レッド、左利きなんだから右手のグローブ、グリーンにあげなよ。」
イミテはレッドの手からグローブの片手のみをとり、グリーンに差し出す。
「…。」
グリーンは無言のまま動かず、それを受け取ることはなかった。
「両方レッドにやれ。俺まではめたらペアルックみたいになるだろ。」
「いいじゃん。このグローブ、いいやつらしいし。絶縁グローブだっけ?」
実はレッドが弓をうってる間(つまりまだイミテが店主の不正をやんわりと指摘する前)に、店主が流暢に話していたのだ。
このグローブは見た目もかっこいいだけでなくて、電気を通さない…つまり絶縁性があるのだと。
見た目からも機能からも、結構いい値がするものなのだろう。
…絶対に最高得点をたたきだす客はいないと思ってこの品を賞品にしていたことが安易に想像できる。
「うん…でもさ、イミテ。笑いこらえながら言っても説得力ないからな!」
レッドとグリーンがペアルックというところがおかしかったらしい。
イミテは今にも笑い出しそうな表情をしていた。
「あはは。じゃ、気が向いたらつけて。」
イミテは無理矢理グリーンのズボンのポケットにグローブをいれた。
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