28 幼い日の約束は(前編)
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「さっきのなに?レッド。」
外に出て真っ先にイミテが聞いた。
するとレッドはさぞ楽しげに言う。
「アイツら、しばらく時間かかると思うからさ、その間に俺達3人でこの辺観光しようぜ!」
「観光?」
「そ!ここにいても退屈だろ?グリーンに至ってはすげえ嫌そうな顔してたし。」
「あいつらが勝手な行動ばかりするからだ。緊張感がない。」
「まあまあ。今日は息抜きするって決めたんだからさ。」
「…。」
「レッド。観光ってどこか行きたいとこでもあるの?」
イミテが聞くと、レッドは満面の笑みをうかべて答える。
「ああ!逆にグリーンもイミテも、どっかねえの?」
「私は、別に…」
「俺もない。」
「なんだよー。夢がないなあ。じゃ、まずは俺の行きたいとこ目指しながらぶらぶら見て回って、見たいとこがあったら帰りに寄ってく感じにするか。」
「え、」
「よし、出発!」
「「…。」」
張りきって歩き出すレッドの背をイミテもグリーンも無言で見送っていたのだが…、
イミテが突然、クスリと笑った。
「なんだ?」
「昔もこうだったなあ…って思ってさ。」
「昔?」
「マサラにいた頃。いつも、レッドが突拍子もないこと言いだして。私もそれにのって。グリーンは、呆れて苦笑してた。」
「思い出しちゃった。」と、イミテはやわらかく笑う。
「たしかに。アイツにはいつも振り回されてばかりだ。現在進行形でな。」
「そう…ね。」
「おーい!イミテ!グリーン!」
レッドが少し離れた場所で、2人に向けて手をふって名前を呼んでいる。
早く来い、という意味なんだろう。
「待って!レッド。」
そう言って、イミテはレッドの元へと小走りで駆けだす。
「…。」
イミテの言うとおり、まるでこの光景はマサラにいたときのようだ、と、グリーンは思った。
まだ自分達が世界の汚さも無情さえも知らず、純粋だった頃と…。
「ここって…的当て屋?」
「そ!」
レッドが来たかったところとは、ここだったらしい。
的当て屋というだけあって店内には種類豊富な弓矢が所狭しと並べられていた。
「お前…イミテにやらせる気か?」
「違う違う。俺がやんの。」
「レッド、弓矢ろくにうったことないでしょ?」
「いつもイミテが弓うつとこ近くで見てたんだから楽勝だって!」
その自信はどこからくるのやら。
レッドはやる気満々といった様子で、店主に的当ての参加費を払った。
「的は全部で5つ!合計点によってもらえる賞品が変わるからな。兄ちゃん頑張れよ!」
的にはいくつかの円が描かれており、外側から10、30、50となっていた。
それはもちろん配点であり、的の中心にいくほど点が高くなるという一般的な的当てである。
しかし、ある的は隅っこの方にあり、ある的は動いていたり、ある的は的自体がやけに小さかったりと、かなり難しそうだ。
「よーし!イミテ、どれか欲しいものあるか!?」
弓を手にとり、レッドはイミテに聞く。
「…。」
ほんの少し、いたずら心がうずいたイミテは笑顔をつくって言った。
「じゃあ、あのグローブ。」
イミテが指差したのは最高得点の景品である、黒のグローブであった。
もちろんそれが欲しかったからではなく、ただ単に一番高得点の景品を選んだらそうなったのだ。
「え…」
最難関の景品を選ばれるとは思っていなかったレッドは大いに顔をひきつらせた。
「ぷっ…お嬢ちゃん、なかなかいい性格してるねえ。兄ちゃん、聞いたからにはとってやらねえとなあ。」
店主はカウンターに頬杖をつき、ニヤニヤしながらレッドに言った。
「分かってらあ!見てろよ…!」
レッドは半ばムキになって、ギリッと弓を構える。
「あ、レッド。違う。」
「ん?」
「右手の位置はここで、もっとこの腕はまっすぐ。…そう、平行に。」
イミテがレッドの後ろに周り、自分が弓をうつときのようにレッドの構えの上から重ねて修正していく。
「ぶっ…あっはっは!」
それを見ていた店主が、こらえきれないといった様子で笑い出した。
「なんですか?」
「あ、いやあ。わるいわるい。普段くるお客さんで、男が女にそうやって教えるのはよく見るんだが、逆パターンはお客さん達が初めてだったから、おかしくてな!」
決して悪気はないのだろうが、その言葉にレッドはカチンときたようで。
「当てればいいんだろ!」
…タン!と威勢のいい音をたてて一番手前の的の真ん中に矢が刺さった。
「よし!」
「!すごいじゃん、レッド!」
「へへ。この調子で…」
しかしあとの3本は明後日の方向に飛んでいき、もう1本は的のはしぎりぎりにあたるという結果だった。
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