27 従うべき道とは
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鮮明に、覚えていた。
1本の矢が放たれた、その瞬間を。
シュッ……
グサッ!!
それは綺麗な直線上を進み、的のど真ん中に当たる。
『まあ……ざっとこんな感じだな。』
矢を放った男は得意げに振り返り、それを食い入るように見ていた少年に目を向ける。
『す……すっげえ!!親父さんがそんなすごい人だったなんて……!うわあっ……!』
少年は目を輝かせながら男を見つめていた。
『だから言ったでしょ?私のお父さんは弓矢だけは上手いって!』
『イミテ……誉めてくれるのは嬉しいが、弓矢だけってなんだ、おい。』
『えへへー。』
男……イミテの父がそう言ってイミテの頭を軽く小突くと、彼女はイタズラな笑みを見せた。
『すげえなー……俺にも教えてくれよ!』
『レッド君には剣術の上手いお父さんがいるだろう?』
『うーん…。まあ……剣もいいけど…、親父さん見てたら、弓矢もかっこいいなーって思ってさ!』
レッドはへへっと笑う。
『はは、俺は、レッド君には剣術のが向いていると思うがね。』
『え?どうして?』
イミテが不思議そうにたずねる。
『剣は接近しないと攻撃できないだろう?相手に立ち向かって行く勇気が必要なんだ。レッド君にはそれがある。』
『俺に……?はは、なんか照れくさいなー。』
『じゃあ、弓矢使いのお父さんは勇気のない腰抜けってこと?』
『おいおい、イミテ。ひどい言いようだな…。』
イミテの父は苦笑し、弓矢を太陽の光にかざすと優しく微笑んだ。
『確かに弓矢は遠くからの攻撃のが有利だ。でもな、その分集中力が必要なんだ。もし外してしまったら敵に自分の居場所が気づかれてしまうし、最悪、仲間を危険にさらしてしまうこともあるんだ。』
『仲間を……?』
『ああ。例えばレッド君のような剣使いが敵と戦っているとしよう。そこに援護のために弓をうつ。戦う人はもちろん動いているから、もしかしたら仲間に当たるかもしれないだろ?』
『仲間に殺されるなんて嫌だ…。弓矢って怖いよ…。』
イミテの父は、すっかりおびえてしまったイミテの頭を優しくなでた。
『だからそんなことにならないために、弓矢使いには冷静な判断力と、どんな時も平常心を保っていられる強い心が必要なんだ。』
『へー…』
『じゃあやっぱり親父さん…すごい人なんだな!』
『ははは。だいぶ練習したがね。』
『決めた!』
『『?』』
イミテは父の弓矢をつかみ、すっくと立ち上がる。
そしてタタタ…と少し走ったところでクルリと回るようにふりむいて言った。
『私も弓矢使いになる!お父さん!教えて教えて!』
『ダメだ。イミテはまだ幼い。遊びじゃないんだぞ?』
『そんなの分かってる!』
イミテの勢いに2人は少したじろいだ。
『私もね、強くなってレッドを守ってあげるの!』
『お、俺を……?』
『うん!頑張るから待っててね!』
『イミテー!ちょっと手伝ってちょうだい。』
『お母さんだ!はーい!』
イミテは元気よく走っていった。
『はっはっは!よかったなレッド君!イミテが守ってくれるそうだ。』
『親父さん勘弁してよ…。男が女に守られるなんてかっこ悪いじゃんか。』
『あっはっは!ごめんな。イミテは思いたったら止まらないところがあるから。だから、レッド君…』
『親父さん!』
今後はレッドがすっと立ち上がり、剣を構える。
『俺がイミテを守ってやるよ!だから心配すんな!』
『……頼もしいな。まかせたぞ。』
『ああ!まかせろ!』
レッドはへへっと、彼らしい元気な笑顔を見せた。
『レッド!レッド!』
イミテがたたっとレッドのそばまで駆け寄って、彼の腕をつかむ。
『さっきお母さんから聞いたんだけどね、オーキド長老のお孫さんが帰ってきたんだって!会いに行こうよ!』
『孫…?』
『ああ、確かグリーンという子だったな。お前達と同い年の男の子だよ。』
『同い年!?やったやった!レッド早く行こう!!』
『え…ちょっと待……』
イミテは構わずレッドの手をつかみ。
『お父さん!行ってきます!』
元気よく駆け出した。
『気をつけてな。』
『はーい!』
手をにぎったまま、嬉しそうに笑うイミテを見て、レッドは呟いた。
『俺が…守ってやるからな。』
『……ん?何か言った?』
『いや。何でもない。』
『?』
俺が守る
俺は、確かにそう誓ったんだ
どんなことがあっても、
そばにいるって、
心に決めてた
ー…たった1人の、女の子
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