26 それが心の全て
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グリーンと別れてから、ぼんやりと泉の前に片膝をついて座っていたゴールド。
「ゴールドさん。」
そう言ってゴールドに近づいたのは、いつもと変わらぬ笑顔を浮かべたイエローだった。
「イエロー、先輩…」
「ふふ。驚きました?」
「いや、気づいてたんで。」
「え!?」
「俺とグリーン先輩が話してるとき、イエロー先輩、木の陰に隠れてたでしょう?金髪がチラチラ見えてましたよ。」
「あー…そうでしたか。驚かす作戦失敗です、残念。」
イエローは苦笑してさり気なくゴールドの隣に座る。
「グリーンさんにバレてることは分かったんですけどね。」
「?俺の位置から見えたってことは、グリーン先輩は気づいてねえんじゃないッスか?」
「いいえ。気づかれてましたよ、きっと。彼をとりまく空気がそう言ってましたもん。」
「…何て?」
「『ゴールドの様子、見てきてくれ』って。」
ふふふ、とイエローは可愛らしく笑う。
キツい言葉を向けながらも、心配している、…そう、グリーンの表情を見て感じていた。
「頭は冷えました?」
「まあ…これだけ寒い中、ずっと外にいりゃあ少しはひえますよ。」
「そう。良かったです。…大変でしたね。」
「…怒っていいッスよ、別に。言いたいことあるんなら言ってください。」
「怒りませんよ。その役目はもうグリーンさんがやってくれましたから。」
「…。」
「まあ確かに、イミテさんを傷つけたことに対しては少しムカついてはいますけど。」
「イエロー先輩も、イミテ先輩のことが好きなんスか?」
「違いますよ!い、いや!イミテさんのことはそりゃあもう大好きですけども!!」
慌てながらイエローは心の内で思っていた。
『イエロー先輩“も”』という言葉の真意は何だろうと。
ゴールド自身が含まれているのか、はたまたグリーンのことを指しているのか、もしくは…。
そんなことを考えているとき、唐突にゴールドが耳を疑うような発言をする。
「わかってるッスよ。レッド先輩ッスよね?イエロー先輩が好きなのは。」
「はっ?えっ?…はー!!??//」
「…めちゃめちゃいい反応ッスね。」
顔を真っ赤にして思わず叫んでしまったイエローに、ゴールドは苦笑した。
「な…え…!?いつから気づいて…!?」
「いや、今知りました。」
「へ…!?」
「てきとーに言ってみただけだったんスけど…レッド先輩のことそんな風に思ってたんスか。」
「~っ!!//」
何かを言おうとするが、結局何も言えずイエローは口を閉じて1つため息をつく。
「もう…いいです。」
「あれ?怒っちまいました?」
「いいえ。開き直りました。よし!この際だから報われないもの同士、ぱあーっと愚痴っちゃいましょうか!」
「(報われない…?ああ…レッド先輩も…イミテ先輩、か。)…ぱあーっとって…、ま、悪くないっすね!ぶちまけちゃいますか!」
「ゴールドさんからどうぞ。」
「俺からッスか?えー、じゃあ、」
ごほん、とわざとらしい咳払いを1つして、ゴールドは続ける。
「最初好きになったのは近所のリエちゃんで、次は向かいの洋服屋のヨウコちゃん、それと、旅先で会ったユアちゃん。」
「え…ゴールドさーん。」
「まっ、いいなあって思った子がいたらいろいろ声かけて、いろいろ程よくてきとーに遊んできたわけッスよ。」
「てきとーにって…」
「ガキの頃の話はさておき、途中から俺の目的は軍に復讐すること…、それだけになってたし、そんなに執着するような相手、いらねーし、必要ねーって思ってたんですけど、」
「…。」
「…でも、イミテ先輩と会って、そんな思いはどっかにふっとんじまって。つーか、気づいたら、もう手遅れで。」
ゴールドは苦笑して続ける。
「イミテ先輩への感情は、今まで感じたことない感情で。……好きで、好きで、好きで…どうしようもないんスよ。」
それが、心の全てだったのに。
言い過ぎただろうか?
ゴールドが居なくなって1人になったところでグリーンは少し考える。
…いや、まだ言い足りないぐらいだ。
表には出さないようにしていたが、改めて考えるとやはり気が立っていて、あの時のイミテの表情を思い出すと、なおさらそれが増す。
「(イエローにまかせるか。)」
さっきまで自分たちの会話を、イエローが木陰で聞いていたのだ。
自分が見つけたのは偶然金髪が目に入ったからだったが。
今、彼女がこの場にいないことから推測するとゴールドを慰めに行ったのだろう。
「(まあ、なんとかなるか。)」
それよりも気になるのはイミテの方だ。
成り行きでレッドにまかせてしまったが、マサラに来てから彼の体調は思わしくない。
イミテの心も少なからず不安定な今、敵にでも遭遇してしまった場合まともに戦えるかどうか…
様子を見に行った方が良さそうだ、と、グリーンは林の方へ足を進めようとした。
まさに、そのとき…
ダダダ!という走る音が聞こえ、グリーンは思わず刀を抜いて構えた。
足音は1つ。しかも林の方から。
「(誰だ…!?)」
ガサッ!と草むらが音をたてて、次いで出てきたのは…イミテだった。
はあ、はあ、と息を切らし、目には涙がたまっており、今にも泣き出しそうだった。
「!?どうした!?」
グリーンが慌てて駆け寄ると、イミテは一度大きく空気を吸って息を整える。
「レッド、が…!」
しかしそのかいなく、発した声は途切れた。
「レッドが、何だ!?」
周りにレッドの気配はない。
しかし、イミテに傷がないことから襲われた、というわけではないだろう。
そうなると、また頭痛が起きたか…
…その予想は呆気なくはずれることになるのだが。
「レッドの記憶が、戻ったの…!」
「な…!」
イミテが勢いよく言った瞬間、
反動で彼女の片目から、ツーッと涙が流れ落ちた。
あふれた想いは
涙と共に
息つく間もなく
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