26 それが心の全て
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あまりに自分の心の内そのものだったので少し苛立ちを覚えたが、
グリーンは動揺を表には出さず、変わらないままの口調で言う。
「悪いが。自分のことしか考えられない奴が何言ったって、ムキになった子供が道理の通らないことを言っているようにしか思えない。」
「!…っ、」
「…お前はイミテの気持ちを考えたことがあったか?」
「は?」
「質問に答えろ。」
「……当たり前ッスよ。俺は、いつだって、イミテ先輩の力になりてえって思って、」
「じゃあ聞くが。それなのに何故さっきのような行動がとれた?」
「なぜって…」
答えようがない質問にゴールドは言葉をつまらせる。
確実に自分を追いつめて、責め立てているような、グリーンの口振り。
「アイツは数年間、ニビシティの軍人として城に閉じ込められるように、使われていたんだ。」
「…。」
「ニビシティの軍人はイミテ以外は皆、男。力にまかせて何かをしようとする奴もいただろう。一瞬も、安心できなかったはずだ。」
グリーンは現に、ニビを出たすぐ後にこっそりイミテに聞いたことがあった。
『襲われたりはしなかったのか?』と、ストレートに。
もう少しデリカシーのある言い方はなかったのかと言われそうだが、鋭い彼女のことだ…むしろ変に気を使ったほうがいい気はしないだろう。
イミテは一瞬言葉につまった様子であったが、すぐに微笑みを浮かべて、『ちゃんと返り討ちにしたから。』と笑っていた。
『そうか。』と返し、しばらく黙っていたら…イミテがポツリと、つぶやいた。
『本当に危ないときもあったけど、タケシとか…助けてくれる人もちゃんといたから。』
不審に思いイミテの方を盗み見ると、懐かしそうに笑っていて。
ー……でもその裏には悲しみが見えているような気がした。
「ゴールド。お前がさっきやったことが、イミテにどれほどの苦痛を与えたか、分かるか?」
例え何もなかったとしても、ゴールドの行動はその時の状況を少なくとも思い出させてしまっただろう。
「あ…」
今気づいた、というように、ゴールドは小さく声をもらした。
そして口元に手を当てる。
…だから彼女はあの時、あんな表情を見せたのかもしれない。
じわじわとゴールドの中に後悔の念が押し寄せる。
「…。」
無言のままのゴールドに、グリーンは変わらず軽蔑するような眼差しを向けて言う。
「…頭を冷やしてこい。」
グリーンの言葉に、ゴールドはゆっくりと立ち上がると、その場を立ち去った。
うつむいていたため表情は見えなかったが、何も言わなかったことからして彼にも思うことがあったのだろう。
一方で。
イミテの手を引き、半歩先を歩くレッド。
林に入ってから結構な時間が経っていた。
「(懐かしい、この感じ…)」
レッドはその間ずっと妙な違和感を感じていた。
この温もりを…覚えている気がするなんて。
「っ、」
バッとふいに、イミテが手をふりほどく。
レッドが「え、」と驚いて振り返ればイミテは気まずそうに顔を背けた。
「大丈夫なの?」
「?」
「…頭痛。」
レッドはああ…と納得する。
イミテが心配していたのは自分のとだったのか。
「ああ。大丈夫だ。」
相変わらずだな、と思いながら返事をした。
「…。」
イミテは疑いの眼差しを向けながらも、レッドのその笑顔に嘘はみられないと判断し、「…そう。」と短く返した。
「何があったのか、聞いていいか?」
むしろ聞くタイミングは今しかないだろう。
イミテはしばらく黙っていたが、やがて数歩先を行き…
くるりと振り返った。
そして何事もなかったかのような笑顔をうかべ、
何事もなかったかのように言う。
「ゴールドが、私に好きって言ったの。それで、少しもめただけ。」
短い説明。
でも大事な点はちゃんと伝えた。
…これ以上は、レッドにはあまり知られたくない。
聞かないで欲しい、とイミテはレッドの表情を盗み見する、と…
「(え…)」
レッドは驚いたように目をまん丸にさせて、自分を凝視していた。
何だろう、その反応は。
自分の言い方に不自然さがあったのか。なるべく気にしていないように言ったのに。
「…遠くまで来ちゃったね。戻ろう。」
なぜか緊張で異常にうるさい胸のあたりをキュッとおさえて、また、足を進めた。
すると…
「イミテ?」
その声に。
足が、止まった。
自分に問いかけたわけではないのはその声色で分かった。
むしろ彼自身、自分に問いかけたような…
いつもと同じ、レッドの声。
でも、いつもとは明らかに違う。
振り向けなかっ、た…
心臓の音が、さっきの緊張感とは比べものにならないくらいに大きく響いている。
どうして?まさか…
「…イミテ。」
もう一度。
熱のこもった声。
勘違いじゃない…、と、確信を持った瞬間だった。
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