26 それが心の全て
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「…俺が、頼りないからッスか?」
「…。」
「だから本心、打ち明けられないんスか?」
「…ねえ、ゴールド。だから違うって、」
イミテはため息まじりに続けようとしたが…
「違くねぇだろ…!」
ゴールドが大声をあげてそれを遮った。
次いで再び訪れた静寂。
夜風でカサカサと動く木々の音が妙に大きく耳に伝わる。
「……なんなんスか、それ。」
やがてゴールドが口を開く。
「イミテ先輩、ずるいッスよ。」
顔をあげたゴールドは、いつになく冷たい表情でイミテを見据えていた。
いつもとは違う。
痛いほど分かる、真剣な空気。
彼女は思わずごくりと唾を飲み込む。
「…何が、ずるいって?」
イミテもそんな彼に対抗して、凛とした態度で立ち向かった。
「そうゆうとこッスよ。先輩、優しさが時に罪になるって知っててやってるんスか?」
ゴールドは何を言い出すんだろう、そんなことを思いながらもイミテは彼の言葉に耳を傾けていた。
「先輩は優しすぎるんです。それでいて残酷なんスよ。」
「…何が言いたいの?」
「先輩は…、俺が元気のないときは気にしてくれた。いつも真剣にどんなことでも最後まで話を聞いてくれた。俺がずっと欲しかった、優しい言葉をかけてくれた。」
ゴールドは懐かしむように、でも少し悲しく微笑みながら話す。
「どうしてッスか?」
「そりゃあ仲間だからに決まってるでしょ?」
「へー。仲間だから?」
彼は小ばかにしたように笑った。
「仲間だって言うんなら、俺にだって頼ってくれたってよかったじゃないッスか!イミテ先輩は、俺に“甘えさせて”はくれるけど、“甘えて”はくれないッスよね?」
「……。」
「先輩は、いつも俺のこと年下だからって子供扱いして。いつだって、俺はレッド先輩やグリーン先輩と同じ位置に見られたことなんてなかった。」
ゴールドはイミテを見つめる。
「俺はイミテ先輩に救ってもらったから、今度は俺がって、そう…思ってたのに…。」
感謝しているんだ、すごく。
感謝してもしきれないぐらいに。
そしてそれと同時に、今度は自分が彼女の力になりたいと思っていた。
「俺は…」
一瞬、迷うようにゴールドは言葉を止める。
この先の言葉を言ったら、関係が変わってし。まうのは明白だ。
今のままではいられない。
今のこのタイミングで言うべきことではない。
だって彼女たちの世界を変えるという目的は達成されていないのだから。
だけど。
サアッと吹いた夜風が、それに揺れる心地よい木々の音が、ぼんやりと淡く光る月明かりが、
全てが…想いを助長させる。
言ってしまえ、言ってしまえ、
と、そう…ささやいている。
……止まらない。
気持ちが、抑えきれない。
「俺は…、アンタのことが好きだ。」
想いが、あふれた。
「…。」
それを聞いたときのイミテは、信じられない、そんな表情をしたが、
表情が変わったのはほんの一瞬で、すぐに元の表情に戻る。
そして、“いつも通り”を装って、うっすらと笑って言った。
「私も、ゴールドのこと大切な仲間だと思ってるよ。」
「…っ!!」
そんな返事に、ゴールドは切なそうに顔をゆがめる。
気づいているハズだ、イミテは。
自分が言った言葉の真意に。
そんな安っぽい好きじゃないってことに。
それなのに、…はぐらかされた。
「ちゃんと、向き合ってくださいよ。イミテ先輩。」
「なにが?」
あくまでもしらをきろうとするイミテに、ゴールドはグッと拳を握った。
「わざとやってんでしょう?気づいてるくせに。ずるいッスよ。」
「…ゴールド。」
イミテが、名前を呼ぶ。
「子供あつかいされるのが嫌っていうんならさ。」
ゴールドに向けて言う。
「察してよ。」
乾いた口調で、続ける。
「今、聞くべきことじゃないと思ったから、私はこういう答え方をしたの。」
「!イミテ先輩!俺は、」
「これでも引き下がらないのなら、まだまだ子供ってこと。」
「……。」
イミテに言われ、口を閉ざしたゴールド。
「(少し、冷たく当たりすぎたかな。
」
そんな彼の様子には少し罪悪感を覚えたが、表情には出さずにそのまま立ち上がった。
「…そろそろ交代の時間だね。戻ろうか。」
彼を子供あつかいしたつもりはない。
現に今だって、ゴールドならちゃんと分かってくれると思っている。
今晩のことは、なかったことにしてくれると、そう思って……、
「!?」
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