26 それが心の全て
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「(傷つけちまったかな。)」
そんなことを思いながら、レッドは1人、道を歩く。
気分転換なんて嘘で、きちんと目的があってのことだったけれど、
イミテの表情からして勘違いさせてしまったのは明らかだった。
「(なんで、俺…)」
どうして自分がこの行動をとろうとしたのか、彼自身も分かっていなかった。
ただ、やるせない思いがずっと心に突き刺さっていて…。
やらなきゃいけないと思った。
伝えなければいけないと思った。
正直なところ、今自分は本能のまま行動している。
「(…着いた)」
足を止めた。
懐かしい、その場所。
ここは昔、グリーンとよく修行をした場所…そして今、マサラの住民が避難している場所だ。
ポツリ、ポツリ、と2、3の灯りがあり、その近くに簡易なテントが数十個たっていた。
「だ…誰だ!?」
レッドに向けられたおびえきった声とともに、ぴくり、と小さな灯りが動く。
気配は消していなかったため見つかって当然だ。少し見つかるのが遅かった気もするが…。
「!?お前、は…!」
見張りをしていたマサラの住人が、驚いた声をもらした。
そんな騒ぎを聞いて、わらわらとテントから人が顔をのぞかせる。
「レッド!どうしてここに…!」
オーキド博士も驚いた表情をして、テントから出てきた。
それもそのはず、レッド達には昼間確かに言ったのだ。
彼らのせいだと思っている住民もいるから、マサラの者達には近寄らないでほしい、と。
彼らもそれを了承して、今晩は反対側の林に泊まると言っていたはずなのだが…。
「すいません、博士。1つ訂正したいことがあってきました。」
ザワザワと、マサラの人達にざわめきがおこる。
「お前たちのことはわしから説明して、ちゃんと誤解をとく!心配しなくとも、「そうじゃないんです。俺達のことは、どうだっていい。」
言った後で、“俺達”とするのは少し語弊があるな、とレッドは思った。
自分が何よりも早く誤解をときたいのは、イミテのこと、ただそれだけだ。
「能力者の俺が何を言っても信じられないかもしれないけど、聞いてほしいことがあるんだ。」
その言葉は、マサラの皆に向けたものだった。
マサラの住民の反応は人それぞれで。
明らかに反感心を持っているもの、疑いを向けているもの、視線をそらして戸惑っているもの、とにかく緊張した面もちでこちらを見ているもの、…武器を構えて今にも襲いかかってきそうなもの。
「…皆には、誤解しないで欲しくて。」
スッと、レッドは地面に片膝をついた。
何をするのか警戒して、周りの空気がピクリと動く。
そんな中、レッドは自身の剣を鞘ごとはずして、地面に置いた。
「…。」
そして、迷いのない瞳でマサラの皆に再び目を向ける。
昔と変わらない、強い瞳であった。
「…皆、武器をおろすんじゃ。」
「でも、長老、」
「早くおろさんか!!」
オーキド博士の大声に驚いて、カランカラン、と皆の手から武器が地面に落ちていく。
「レッド。話してみろ。じゃが、ここにいる皆がお前の言うことを信じるとは限らんぞ。」
レッドはコクリと頷いて口を開く。
「伝えたいのは、イミテのことで、」
レッドは静かな空気の中、話し始める。
彼がここに来た理由は1つ、イミテがマサラが襲われた原因であると思われていることを、何とか訂正したかったからである。
彼女の想いを、
彼女の気持ちを、
伝えたくて。
マサラタウンのことをすごく想っている彼女だから。
マサラタウンの皆にも、”今まで通り”、彼女のことをマサラの一員として、想っていてほしかった。
「(今まで…通り?)」
今まで、なんて、覚えていないはずなのに。
どうして…
でも、確かに…
“レッドー、また連れ出して…怪我させるんじゃないぞ!”
“分かってるって!”
“大丈夫!おじさん!私がレッドのこと守るから!!”
“おい!?”
“あんまり遠くには行くんじゃないぞー”
““はーい!””
覚えていない、はずなのに
でも今つくられた想像にしてはやけに鮮明な一場面が、頭の中をかけまわる。
“なんじゃ。今日はレッド1人か。喧嘩でもしたのか?”
“俺は何もしてないのに、あっちが勝手に怒ったんだ!!”
”ハッハッハ!何があったかは知らんが、あの年頃の女の子は難しいからのう。…そうじゃ、レッド。もうすぐ看板が完成しそうなんじゃ。呼んできてくれんかのう?”
“なんで俺が…!”
“わしがあの子にみせてあげたいんじゃ”
“…し、しょーがねーな!行ってくる!”
“…やれやれ”
会話も、人の表情も、情景も、
どうしてこんなにも鮮明で…。
そんなぐるぐると渦巻く思考の中、レッドは話しを続ける。
ここにくる前にあらかじめ話す内容は一通り整理していたため、ただそれを淡々と話すだけで良かった。
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