26 それが心の全て
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「おじいちゃんって…」
「グリーンの祖父のオーキド博士。この町の長老でもあるの。」
思わず繰り返したゴールドにイミテはこっそり耳打ちする。
「…グリーン、イミテ。」
懐かしむように2人の名前を呼ぶ。
その音は少し切なく心に響いた。
「マサラのことを聞いて戻ってきたのか?」
「ああ。…でも、必要なかったみたいだったが。」
「いや、」
「おじいちゃん、世間話は後だ。まず状況を教えてくれ。これをやったのは、誰だ?」
「!これは、お前たちがやったのかと思っていたが…違うのか!?」
オーキド博士は眉間にシワを寄せて、大きく驚いた。
「じゃあ、やはりあの男が1人で…」
「あの男!?誰だ!?」
ポツリと彼の口から漏れた言葉に、グリーンがすぐさま反応した。
「博士、私達、今ここについたばかりなんです。今日マサラで起こったことについては関わっていないし、何も知りません。」
「…そのようじゃな。」
「最初から順を追って説明してもらえませんか?」
イミテの瞳は、昔とは違っていた。
強い意志を宿した瞳。
そらされることのない真っ直ぐな瞳。
探るような、疑うような…
相手を信じていないといったような悲しい瞳。
「(イミテ…)」
オーキド博士は、毎日毎日、自分に楽しそうに話しをする彼女を思い出し、ひどく悲しくなった。
それと同時に、少し、嬉しくも感じた。
「(強く、なったな…。)」
幾度となく、様々な困難をのりこえてきたのだろう。
目の前にいるこの子は、
もう、あのときのような人を疑うことを知らない無知な子供じゃない。
「おじいちゃん?」
「!ああ、すまない。…もちろん、説明しよう。その前にこの場で話すのも気が引ける。わしの研究所に移動しよう。」
確かにすぐ側には血だまりがある。
この場に長時間いるのは精神的に辛い。
しかし…
「援軍が攻めてくる可能性はないのか?それに、マサラの住民が無事なのかも確認しないと…」
「それは大丈夫じゃ。この現状を見る限りではな。」
深い意味がこめられているようなその言葉に、イミテとグリーンは顔を見合わせた。
「そのことも話を聞けばすぐに分かるじゃろう。」
「…。俺は一旦アイツらと合流してから行く。おじいちゃんを1人で行かせるのは危険だから、イミテとゴールドは先に、」
「あ。」
グリーンが話している途中、ゴールドが声を上げた。
その視線の先には、レッドとイエローの姿が。
しかし、レッドは頭を押さえたまま、苦しそうな表情をしている。なんだか顔色も悪い。
それを心配するように隣をイエローが歩いている。
「レッド!イエロー!」
イミテが名前を呼んで2人にかけよる。
グリーンとゴールドも後に続いた。
「さっきより顔色悪いじゃないッスか!」
「はい…光の能力使って直そうともしたんですけど、全く効果がなくて。原因は完全に記憶喪失の方なんじゃないかと…。」
「!レッド、大丈夫?」
イミテがレッドのそばに寄ろうとするが…。
「平気、だ。」
レッドが手を出してそれを静止する。
「(イミテの、顔、見る、と)」
重なる、変わらなかったあの日常と。
重なる、たくさんの思い出と。
重なる、あの日の、惨状と。
その日常を、覚えていないくせに。
「…っ、」
イミテもレッドの様子に困惑し、伸ばしかけていた手を止めた。
「とりあえずお前は…この先は見るな。よけい頭痛がおきるぞ。」
「でも、軍は、」
「どうやらひとまず心配しなくて平気なようだ。詳しい説明を、これからおじいちゃんにしてもらう。」
「へ…!?オーキド博士がここにいるのか?」
「ああ。」
グリーンがサッと身体をずらす。
そのすぐ後ろにオーキド博士の姿があった。
「レッド…」
「!博士!お久しぶりです。」
「ああ…体調は大丈夫か?」
「はは、平気ですよ。これくらい。」
笑ってみせるが、その表情は明らかにつらそうだ。
しかし、オーキド博士は「…よかった…」と、そうつぶやいた。
レッドの心配させまいと放った言葉を鵜呑みにしたのだろうか?
…いや、違う。
「3人とも、無事で良かった…。」
「え?」
「さっきまではグリーンとイミテの姿はあったが、レッド、お前がいなかったから……わしは一瞬、最悪の事態を想像してしまっていた。」
「博士…」
「本当に…無事で何よりじゃ。」
優しく笑ったオーキド博士は、昔と何の変わりもなかった。
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