26 それが心の全て
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ちょうどそのとき、後ろから「先輩!」と2人を呼ぶ声が聞こえた。
「イミテ先輩!グリーン先輩!早いッスよ!!」
2人を追いかけていたゴールドが追いついたようだ。
「…!」
ゴールドは2人の先にある死体に気づき、棍棒に手をやると表情を固まらせた。
「心配するな。今、ここに敵の気配はない。…いや、正確に言えばその人物が敵か味方が分からないが。」
「…どういうことッスか?」
「よく見てみろ。ここにあるのは全て軍人の死体だ。」
「!」
「だが、マサラにそれほどの実力者はいない。」
「つまり誰がやったか…分からない、と。」
しかし政府を敵に回してまでマサラタウンを守る人物なんているのだろうか?
マサラタウンの住人以外で、かつ、マサラタウンに相当な思い入れがある人物…
考えてみたが思い当たるはずもなく、グリーンはイミテに目をやる。
震えてもいなければ、泣いてもいない。
ただ無表情で前を向いていた。
…平気そうだ。
「ゴールド。レッドとイエローはどうした?」
「途中でレッド先輩が具合悪くなって、後から追いかけるから先行ってくれって。一応イエロー先輩がついてるんスけど…」
「(記憶の問題か…?)」
「俺、戻って様子見てきた方がいいッスか?」
「いや、ここに来るまでに人の気配はなかったから大丈夫だろう。それよりもイミテとここにいてくれ。」
「へ…?」
グリーンはイミテの手を離し、刀を抜いた。
「とにかく何があったのか情報を集めたい。息がある者がいないか調べる。」
「!それなら私も手伝う。」
「いい。2人でやるほどのことでもない。」
「…グリーン。別に私、動けるから。」
イミテは意志のはっきりした瞳でグリーンを見る。
過去にとらわれてなんかいない。
あの日のように、泣いているばかりの自分じゃないと。
「…分かってる。」
グリーンはポンとなだめるようにイミテの頭を撫でると、1人、血であふれる広場へと足を踏み入れた。
びしゃり。
少し粘液性のある赤い液体が、一歩一歩と足を出すたびに音を立てる。
ー…気持ち悪い。
その感覚と鼻をつく臭いに、生理的にそう感じた。
そんな中グリーンは、自分を心配する2つの視線を感じ思わず苦笑する。
吐き気さえするこの場に、やはりイミテを踏み入れさせなくてよかった、とそう思いながら足を進めた。
「(皆殺し、か。)」
改めて倒れている軍人の傷跡を近くで見て、攻撃した相手が全く容赦をしていないことが感じ取れた。
迷いのない、傷跡。
殺すことになんのためらいもないような、むしろ…もはや殺すことを目的とした傷跡だ。
この場にいる軍人達にやはり息がないことを確認すると、グリーンは2人の元へ戻り、首を横に振った。
「全部同じ傷口だった。おそらく1人でやったんだろう。」
「これだけの人数を1人で!?軍人が弱かったんスかねえ…」
「それは…ない。明らかに腕が確かなヤツ(軍人)が1人いる。」
「え?何で分かるんスか?」
イミテの言葉にゴールドはたずねたが、彼女がそれに答えることはなかった。
「これ以上ここにいても何も得られないだろう。とりあえずレッド達と合流するぞ。」
「…うん。レッドに、この様子見せない方がいいしね。」
「?レッド先輩、血、苦手でしたっけ?」
「そうじゃなくて…似てるの。あの日に。」
“あの日”も、この広場だったから。
血も、火薬も、人がたくさんいることも。
もしかしたら、嫌な場面を思い出させてしまうかもしれないから。
「!そうッスか…。」
その言葉から察したゴールドは、そう言って黙り込む。
「…行くぞ。」と、グリーンが歩き出したとき…
「「「!」」」
3人とも、同時に反応した。
「(何か、気配が…動いた!)」
建物のかげ。
ゆらりとこちらの様子をうかがうように、息を押し殺す、1つの気配。
その態度からしてレッドでもイエローでもないことは確かだった。
「姿を現せ。」
グリーンがイミテとゴールドの一歩前に出て、刀を握り直して言う。
「やはりその声…お前達だったか。」
ややかすれたその声に、イミテとグリーンは聞き覚えがあった。
「おじい、ちゃん…?」
思わずグリーンがつぶやく。
肯定するかのように建物の陰から姿を現したのは…この町の長老であり、そしてグリーンの祖父である、オーキド博士であった。
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