25 音をもてない言葉
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「ゴールドがそれを私に対する恩だと感じているのなら、少し間違ってる。」
「へ?」
「私は特別、感謝されるようなことはしてない。ただ自分のやりたいことをしただけ。」
「それが俺にとってはすげぇ有り難かったんスよ。」
「ただちょっとクサい台詞吐いただけなのに?」
ゴールドが笑いながら言った言葉に、イミテも苦笑してそう返す。
「俺もできることなら同じようにクサい台詞の一つや二つ言ってイミテ先輩をなぐさめたいかったんスけどね…、それはレッド先輩達に先こされちまったし、俺にはそんなの似合わないってイミテ先輩がうるさいんで…。」
ゴールドは棍棒をクルリと一回転させて、イミテに見せつけるように目の前で止めた。
「明日は能力(ちから)で、イミテ先輩に恩返しするッス!」
イミテの力になりたい、と。
救ってもらったあの日から。
「…。」
イミテは一瞬笑いただ「…そう。」とゴールドに一言返したのみだった。
その口調は穏やかに思えたが、くるりとた背を向けてしまったため、その表情までは読み取れなかったのだが。
「(あ…)」
寝付けずに船の甲板にでると、さらあと闇によく映える金色がまず目に入った。
手すりにもたれかかるようにして海を見つめるその様子は、なんだかイミテの面影をも思い出させる。
「(一緒に旅してると仕草とか似てくるもんなのか?)」
そんなことを頭の片隅で思ったのは一瞬の話。
それよりも普段はもうとっくに寝ている時間であるのに、彼女がこんな時間に起きているなんて珍しい、なんて思いながら、レッドは彼女に近づいた。
「イエロー。」
「!?レッドさん!」
レッドが近づく気配に全く気づいていなかったらしく、イエローは本当に驚いた反応を返す。
「何してるんですか?こんな時間に。」
「目がさえちまったからさ、気晴らしに散歩してた。イエローは?」
「僕もそんな感じです。」
イエローはどことなく力なく笑った。
「心配事でもあるのか?」
「え…なんで、」
「イエローがこんな時間まで起きてるなんて相当めずらしいからさ。それほどの気がかりがあったりするのかなって思って。」
「相当って、僕だって起きてようと思えば起きてられますよ!」
「ははっ。ゴールドに聞いたぞ?シオンタワーの見張りしてたとき、イエローかなりの早さで寝てたって。」
「え…;」
「ま、言いたくないならいいけどさ。」
そういうとレッドは腕を後ろで組んでぐーっと大きくストレッチする。
「(きっと感づいてるんだろうな…。)」
そうイエローは思った。
この状況で心配事だなんて、イミテのことぐらいしかないのだから。
レッドはあえて待ってくれているのだろう。
「…イミテさん、とっても悲しそうな顔してたのに、僕、上手く元気づけられなかったんです。」
イエローはしょんぼりとした口調で話し始めた。
「イミテさんはいつも僕にステキな言葉をくれるのに、僕は何を言っていいか頭が混乱しちゃって…。結局、イミテさんに気をつかわせてしまいました。」
すると、ポンとイエローの頭に手がおかれた。
えっ…と思いレッドの方を見れば、次いで目に入ってきた優しい笑み。
「俺はイミテは、気をつかったなんて思ってないと思うぜ。イエローが心配してくれたって言ってたし、イエローの気持ちはちゃんと伝わってる。気にすることじゃないって。」
「でも…」
「それにイエロー1人じゃないんだ。俺とグリーンもあのあとイミテと話したし、さっきイミテがゴールドと部屋出て行くのを見た。」
「ゴールドさんも…?」
「ああ。イミテを心配してるのは皆同じだから。きっとそのそれぞれが似てるけど少し違った思いとか言葉で励ましてて、それがうまい具合に足りないとこを補い合って伝わって、…まあ、イミテも何か思うものがあるんじゃないかなーって、俺は勝手に思ってる。」
「明日にはもうすっかりいつも通りだぜ、きっと!」と、レッドは明るく笑って続けた。
「レッドさんは、強いですね。」
「ん?」
「だってイミテさんと同じように、レッドさんだってマサラタウンのこと心配なはずなのに、こんなにも明るいじゃないですか。」
「まあ…な。でも、そんなこと言ったらグリーンも同じ状況だぜ?でもアイツもいつも通りだし。」
「あ…そうですよね。」
「俺が思うにさ、」
一拍おいて、レッドは続ける。
「イミテがいるから、俺もグリーンも、いつもと変わらないんだろうなあって思うんだ。」
「イミテ、さんですか…?」
「俺は大まかにしか知らないから…というか知れないからそんなに詳しい事情は分からないんだけどさ、それでも、マサラタウンが襲われることで俺とかグリーンよりもイミテのが傷つく立場にいるっていうのは分かる。」
確かに、レッドもイミテもグリーンも、マサラタウンは故郷であるから心配したり不安に思うのは当たり前だが
イミテにはさらにマサラが襲われた原因は自分にあるという罪の意識が加わっている。
「それなのに、俺らが不安がってたら余計イミテも傷つくだろうし。それと、何より、マサラを心配に思う気持ちもあるけど、イミテ心配に思う気持ちも同じくらい…いや、それ以上あるから。」
だから、イミテがいるから強くいられる。
その言葉通りの意味だ。
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