25 音をもてない言葉
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「あのさ。」
レッドが少々言い辛そうに口を開いた。
「それってやっぱり過去と関係してることだよな?俺が詳しく聞いたらまずいのか?」
「…ザッとなら、大丈夫な気もするけど。それに、そのためにグリーンはレッドのこと呼んだんでしょ?」
イミテはグリーンの様子をチラリとうかがう。
それに応えるかのように、グリーンが口を開いた。
「…大まかに言うと、イミテがニビシティの軍人になることと引きかえにマサラの平和が約束されていたってことだ。」
「イミテの能力を政府が利用したかったから、か?」
「ああ。」
「(だからイミテは“私の責任”って言ったのか…)」
レッドはふーんと、1人、納得したような表情をした。
そして、口を開く。
「それって別に、イミテの責任じゃないだろ?」
「…うん。もう責任なんて感じてないから平気。イエローにも言われたし。」
「そうじゃなくて…なんて言うか…、ああ。」
まるで闇の中から、光を見つけ出したみたいに。
レッドは今の気持ちにぴったりな言葉を見つけて、明るく笑って言った。
「イミテのおかげ、だろ?」
「!」
その言葉にイミテは目を見開く。
「俺は今の話聞いて、マサラが今まで平和だったのはイミテのおかげで、むしろ感謝される立場にあっていいと思ったけど。」
イミテはじんわり、と、
レッドの言葉が心に染み入るように思えた。
「(私、は…)」
きっと、そうだったんだ。
何よりも、その言葉が欲しかったのかもしれない。
イエローに自分のせいじゃないと言われても、
グリーンに俺達がいると言われても、
どこか他人事のように感じていたのは、
まず何よりも自分自身の行動を悔やんでいなかったからだ。
自分のやった…マサラを守るための選択は、正しいことだと信じていて。
でも自分で思っているだけじゃ、とてもじゃないけど不安で。
だから、他の誰かにも言って欲しかった。
間違った道を歩んでいないという言葉が、欲しかった。
「(ああ…)」
昔から、そうだ。
レッドはいつも、私が一番欲しい言葉をくれる。
いつも、私に一番必要な言葉をくれる。
だから、私は、
(前を向いていられる)
「(私は、間違ってない。)」
(強く、いられる)
「迷わない、から。」
イミテが顔を上げた。
「今私が…ううん、私達がやることは、マサラを守ることだけ。守り抜いてみせる。」
後悔なんて、ない。
自分の選んだ道は正しいと。
そしてこれからもその道を歩んできたことを後悔しないように、今、故郷を守る。
イミテが笑顔を見せ、それを見たレッドも愛おしそうに笑った。
その後、3人はそれぞれ別の自室に戻った。
その中でも特にグリーンは足早に部屋へと戻ると、扉をバタン!と少々荒々しく閉める。
…苛立っている。
そんなこと、自分自身がよく分かっていた。
「…っ!」
電気をつけるなどという心の余裕もなく、ダアン!と壁に拳をぶつけた。
苛立ちをぶつけるように。
「(何をしているんだ、俺は…)」
次いで、自嘲を含むため息がもれる。
背を壁につけて、ズルズルとその場に崩れ落ちるように座る。
レッドのことは内容を説明するために呼んだんじゃない。
状況を説明するつもりなんてこれっぽっちもなく、むしろ…教えたくなかった。
「(じゃあ、どうして俺はあの場にレッドも呼んだ?)」
自分の中に、単純にイミテを心配している気持ちがあったならば、
2人で話せば良かったはずだ。
なぜ?
…そんなの決まってる。
レッドに、見せつけたかったからだ。
記憶喪失でうまい言葉をかけられるハズもないアイツに、自分がイミテの心を和らげるところを見せつけたかった。
「最低だな、俺は…」
グリーンはポツリと呟いた。
最低だ。
イミテのこと心配するしておきながら、しょせん、自分のことが一番にあったのかもしれない。
レッドを親友だと思っておきながら、優越感にひたろうとしたのかもしれない。
その結果が、これだ。
自分では無理だと思い知らされた。
自分よりも状況を知らないはずのレッドの方が、イミテをより安心させる言葉をかけた。
「(どうして、だ…)」
レッドも、イミテも、仲間だ。
何よりも大切な…。
なのに
どうして、疎外感を感じる?
どうして、嫉妬してしまう?
どうして、幸せを願えない?
「っ…!!」
やりきれない気持ち全てをぶつけるように、
グリーンは再び壁をガンッ!と叩いた。
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