25 音をもてない言葉
夢小説お名前変換こちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そうですよ、ゴールドさん。カツラさんのおかげでこんな美味しい料理食べれるんですから、感謝しないと。」
「ほら、ゴールドも少しはイエローを見習えって。びっくりするぐらい真っ白な心だぞ。」
「えっ…ちょ…何言い出すんですか!レッドさん!//」
「そうッスねー。何の汚れもない綺麗な心ッスねー。もはや女神様に見えるッスよ。」
「ゴ、ゴールドさんまで!//」
照れて赤くなるイエローに、ハハハ!と楽しげな笑いがおこったのだが…
「……。」
イミテは1人、全くの無反応だった。
どうやら会話自体を聞いていないようで、ぼーっと上の空で、食事をする手も止まっている。
そんな様子に気づき、皆、戸惑う。
おそらくイミテはマサラタウンのことが気がかりなのだろう。
「おい。」
「…。」
「イミテ。」
「…。」
「…おい。」
グリーンの三度目の呼びかけに、ようやくイミテは「え?」と反応した。
「冷めるぞ。」
「なにが?」
「スープ。」
グリーンがさっきからずっとスプーンの上にのったままのコーンスープを指差す。
「あ…うん。」と短い返事を返してイミテはそれを口に運んだ。
「…イミテさん、大丈夫ですか?」
そんな彼女の様子を見たイエローが不安気に聞くと、イミテはにっこりと笑って見せた。
「イミテ。あとで部屋に行く。」
「え?」
「話がある。いいな?」
「…うん。」
「レッドも。いいな?」
「…おう。」
そう言ってグリーンは、食堂をあとにして自室に戻っていった。
いつもなら「仲間はずれにするんスか!?」などと言ってゴールドがちゃかすのだが、今回ばかりはイミテの様子にただ黙っていた。
自室に戻り数十分たった頃、グリーンは約束通りイミテの部屋に向かっていた。
「お、グリーン。」
その途中でタイミング良く、同じようにイミテの部屋に行こうとしていたレッドに会う。
「タイミングばっちりだったな。」
「イミテはもう部屋にいるのか?」
「ああ、たぶん。俺と同じぐらいに部屋に戻ったから。」
「そうか。」
「…。」
「…。」
「…なあ、イミテも俺達と同じ、なんだよな?」
「?どういう意味だ?」
「いや…。俺達と同じでずっとマサラタウンで生まれ育ったんだよなって…。」
「…ああ。」
「だったらあんなふうに不安になって当たり前、か。」
レッドはどこか悲しげに言う。
レッドの中の昔のイミテとの記憶は一切ない。
だから、彼女が今どんな思いを抱えているのか想像しにくいものなのだが…おそらく自分達と同じ想いでいいのだろう。
ただ単純に、故郷(マサラタウン)が心配なんだ。
「それとイミテが“私に責任がある”って言ってたけどあれって…」
「グリーン。レッド。」
レッドが話している最中、後ろから声がした。
2人が振り返ると、そこにいたのはイミテだった。
「イミテ!え?なんでそっちから来たんだ?」
イミテが来たのは、彼女の部屋がある方とは反対側だ。
「イエローの部屋で少し話ししてきたから。すごく心配されちゃった。…『イミテさんのせいじゃないですよ!』だって。」
イミテは苦笑いをうかべて続ける。
「グリーンも、そのことについての話なんでしょう?」
「ああ。」
「もういいよ。慰めの言葉はイエローにもらったから。それに、レッドもいるのに話したら頭痛がおきちゃうし。」
イミテは笑って言う。
レッドが眉間にしわを寄せる一方で、グリーンは目を伏せて言った。
「慰めなんて…お前にはそんなの意味がないだろう?」
「え…」
「お前は別に、自分を許して欲しいわけじゃない。他人に何を言われようと自分の考えは変わらない。それがお前の性格だ。違うか?」
「…まあ、そうかもね。」
イミテは少し悔しそうに笑う。
「で、そこまで分かってて何を言おうって?」
「昼間の言い方だと勘違いしているようだったから訂正しようと思ってな。俺達はお前に頼まれたから協力するんじゃない。マサラタウンが自分達の故郷だから助けに行くんだ。」
「…。」
「だからイミテ。俺達はお前と同じ立場で戦う。1人じゃないからな。」
グリーンは柔らかい笑みと共に言った。
協力してもらっている、という意識があれば、彼女は自ら率先して戦いにいくだろう。
イミテが多く負担を背負ってしまう。
そんなのは嫌だった。
「…分かった。」
イミテも微笑んで縦に首を振る。
.