25 音をもてない言葉
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「…。」
それを聞いて、イミテが黙って立ち上がる。
「イミテ、先輩…?」
「マサラタウンが狙われた責任は…私にある。だから…」
「「…。」」
レッドもグリーンも、黙ってイミテの次の言葉を待った。
イミテならば、自分に責任があるから、自分独りで何とかする…とでもいいそうだ、と。
でも、顔を上げた彼女の瞳は、それよりももっと強い意志を宿していた。
「…だから、絶対に守りたい。マサラを、皆を。レッド、グリーン。お願い。手伝って。」
その言葉に少し驚きながらも、レッドは頷いて言う。
「おう!当たり前だろ!」
次いで、グリーンも、
「ああ。」
フッと笑みを返した。
「なんなんスか!イミテ先輩!2人にだけ頼るなんて、俺とかイエロー先輩とかじゃ頼りないってことッスか!?」
「え…」
「水くさいッスよ。俺はマサラタウン出身じゃないッスけど、イミテ先輩たちが苦しそうな顔してんの見たくねーから…」
ゴールドはニッと笑って続ける。
「俺にも、協力させてくださいよ。」
「ゴールド…」
「僕だって!ゴールドさん以上に、イミテ先輩の力になりたいって思ってます!」
「ちょ…!イエロー先輩!俺がビシッとかっこよく決めたのにかぶせないでくださいって。」
イエローは「え…?」と一瞬戸惑ったが、「とにかく!」と続けた。
「たいして力になれないかもしれないけど…僕も何かしたいです。…故郷を失う辛さは、分かるから。」
イエローは悲しそうにうつむいて、それでも笑って言う。
「…ありがとう、イエロー。」
イミテもそんな彼女に笑みを返した。
「危険だと言ってるのに、君達は…」
一連の話しを聞いていたカツラははあ、とため息をつくと、懐から紙切れを取り出した。
「カツラさん、これは?」
「ここグレン島からマサラ行きの船のチケットだ。こうなるだろうと思ってね、さっき町に出かけた時に買ってきた。」
「!」
「5枚分、無駄にならなくて良かった。」
カツラは優しく笑って、そのチケットを一番近くにいたレッドに手渡した。
「私は君たちに未来をかける。私に何かできることがあれば全力でサポートするつもりだ。」
「…。」
「だから、どうか、無事でいてくれ。」
おびきよせるための罠だということは誰が見ても明らかだ。
でも、逃げることはしたくないから、あえて立ち向かう。
そんな小さな勇気を誇らしく思い、
そんな彼らの幸せを願う。
「はい。」
カツラの言葉にレッドは力強く頷いた。
「…行こう、マサラタウンに。」
さあ、生まれ故郷へ。
レッド達は船へと向かい、またひとりになった部屋の中。
カツラは静かに受話器をとり、電話をかける。
「もしもし。ワタルくんか?…ああ。そうだ。君の言ったとおり、彼らはマサラに向かったよ。」
まるで若い頃の自分を見ているような、周りを引き込むような強さを持っていたよ、彼らは。
そんなふうに語るカツラからは、どこかしみじみとした雰囲気が漂っている。
「しかし、とてもじゃないが間に合わないだろう。早くて明日の昼に着く程度だ…。君は?今、どこにいるんだ?…え?…!!まさか、ワタルくん、君は…!」
受話器越しに聞こえた内容に、カツラは大きく声をあげる。
直後、プツッという音をたてて電話がきれた。
彼の性格上、かけ直したとしてもでないだろうと、カツラは受話器を置く。
「ワタルくん…」
ああ…彼らが真相を知るのは、間もなくか、まだまだ先か、それとも一生こないのか。
カツラの言ったとおり、船は夕刻、時間通りに出航した。
マサラが襲撃されるという情報はすでに町で噂になっており、今日の昼頃一度出航が見合わされたらしいが、
幸いにも船着場はマサラのはずれにあるため問題はないだろうという結論に落ち着いたらしい。
カツラの配慮のおかげで部屋も1人1室用意されていた。
「思ったんスけど、カツラさんって結構な金持ちなんスかねえ?」
場所は食堂。
夕食のビーフシチューをすすりながら、ゴールドが言った。
「なんで?」
「だってこんな最上級の宿泊プランなんスよ?おかしいと思いません?」
たしかに彼の言うとおりで、ゴールド達が泊まる部屋は、部屋の中に内に広々としたバス、トイレがついていて、
おまけにベッドや高価そうな机、電気スタンドなど、ありとあらゆるものが完備されている。
加えてこの何かのパーティーを思わせる、一品ずつでてくるコースの料理。
決して客が多いわけではなく、2、3ランクを落とした部屋も十分に用意できたはずなのに。
「元科学者って言ってたし、それなりに稼いでたんじゃねえの?」
「ふーん…。金はあるのにあんなボロい馬小屋みたいなところに住んでるなんて、もったいないッスね。」
「…ゴールド。口が悪いぞ。」
パンを口に運びながらグリーンがぴしゃりと言い放つ。
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