25 音をもてない言葉
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その日の夜のうちにブルーとシルバーはクチバ行きの貨物船に忍び込み、翌日の朝早くに出発した。
それはいいものの、レッド達は行き先を考えている最中だ。
彼らの真ん中には地図が広げられてはいる。
「このまま進むとなると…次はマサラに着いちまうんだよなあ…。」
レッドは本当に困った様子で声をもらす。
「レッド先輩達の故郷なんスよね?マサラタウン。」
「ああ。追い出された身だからさ、俺達は。立ち入るわけにはいかないってわけ!」
レッドは明るく笑う。
その笑顔に無理をしている素振りはない。
「だからってブルー達の後を追いかけても効率悪いから、町を避けて通ろうか。」
「そうだな。裏側ならマサラの人にも気づかれないし。」
「…。」
…彼らは何も悪いことはしていないのに。こうして故郷を避けなければならないなんて。
ゴールドはそれを心の片隅でほんの少し、苦しく思っていた。
「ルートは決まりましたけど、観光船の出航はいつからなんでしょう?」
「カツラさんに確認してこないとな。」
グレン島に来るときは仮面の男のせいで必要最低限の貨物船しか出航していなかったが、それが解決した今、じきに観光船も出航するだろう。
「カツラさん、迎えに行ってくる。」
そう言ってイミテは立ち上がり、弓矢の準備をする。
カツラは今朝、やけに慌てた様子で新聞を買いに町に出かけて行った。
そろそろ戻ってきてもいい頃だろう。
「あ、僕も行きます!」
嬉しそうに言ったイエローの様子からして、1人じゃ危ないなどではなく、単純にイミテと一緒にいたいのだろう。
イエローが立ち上がって、ワンピースの裾を直したそのとき…、
バタン!と勢いよく扉が開いた。
「君たち!良かった…ここにいたのか…。」
現れたのは、カツラで。
肩で息をしていた彼は、レッド達の姿を確認してホッと息をもらした。
その姿に、ただ事でないことを知る。
「どうか、したんですか…?」
イエローがおずおずと聞いた。
「ああ…大変なことになったよ。」
カツラはそう言って、ずっと握っていたためくしゃりと折り曲がってしまった新聞紙を広げ始めた。
レッド達が囲んで見ていた地図の上にそれを広げて、軽く手でシワを伸ばしていく。
「「「!」」」
その記事の内容を見たレッド、イミテ、グリーンは、思わず息をのんだ。
「え…!」
「!?」
イエローとゴールドと驚いた表情を見せる。
「“マサラタウン、襲撃予定”…記事の内容はこのタイトル通りだ。」
「なに、これ…」
思わず声をもらしたイミテに、グリーンは言い辛そうに続ける。
「原因は…能力者の裏切りによるもの。イミテくん、君のことだね。」
「っ…!」
甘く考えていた。
イミテは、思う。
“お前、軍人になって俺の国の城を守れ ”
“そうすればこの町にはもう手をださない約束してやる”
確かに自分がニビシティの軍人となるのと引きかえに、マサラの人達の安全は保証されていた。
でも、死刑判決を受け、イエローが、レッドが、助けに来てくれたあの日…
死刑判決を下したのならば、もう契約は切れたも同然だろうと思い脱獄したのだが…
そんな甘い解釈、許されなかったらしい。
「どうして今になって…!」
ギリッと、悔しさで顔が歪んだ。
新聞紙に載っている、マサラタウンを襲ったあの男の写真を睨みつけ、イミテは拳を握る。
「軍がマサラを襲う前に俺達が先に着けばいい話だ!カツラさん!マサラへの船で一番早い出航時間は何時ですか!?」
「観光船で、今日の夕方出航だ。グレンからマサラまでは早くても1日はかかる。…残念だけど、間に合わない。」
「そんな…!」
イエローが口元に手を当てる。
「…間に合わなくても少しでも可能性があるなら行こう!」
「落ち着くんだ、レッドくん!恐らく軍は君達をおびきよせるためにこれを仕組んだんだ!今行ったら、相手の思うつぼだぞ!!」
「だけど…!このまま放っておくわけにはいかない!」
レッドがダン!とその想いの強さを表すように、勢いよく机をたたいて言う。
「マサラは俺達の故郷なんだ…!」
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