24 君が生きた証
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グッと。
無意識に、ゴールドは自分を抱きしめているイミテの腕を掴んでいた。
「俺、は、」
声が、震えていた。
ポタリ、ポタリ。
ゴールドの瞳から涙が落ちる。
限界だった。
「今まで、ずっと、…恨んでたのに、」
「…うん。」
「んなこと、言われたって…今さらすぎる。」
「うん。」
「ずっと…俺のこと、心配してたなんて、」
自分でも情けなくなるぐらいの、弱々しい、声。
それでも話し続けていたのは、隣にいる相手がイミテだったからだろう。
「なんで、俺、なんか…」
今度ははっきり分かった。
じんわり、じんわりとこみ上げてくるものは…嬉しさだ。
母がこの世からいなくなったとき、自分は1人になったと思っていた。
1人きりなのだと思って生きてきた。
でも違った。
自分のことを想ってくれる人はちゃんといた。
それが……嬉しい。
「ゴールドが生きた証は、ずっとハヤトさんがもっててくれたんだね。」
「…っ、」
今度こそ、止まらない。
自分の気持ちを代弁したかのようなイミテの言葉に、ボロボロと涙がこぼれる。
「すいませ、ん、こんな…」
ゴールドがイミテに言った。
泣きやまなければいけないと分かっているが、涙が止まらない。
「いいよ。ゆっくりで。」
相変わらず抱きしめたまま、子供をあやすようにポンポンと、優しくゴールドの背中を叩く。
「夕飯とっといてって頼んでおいて正解。」
イミテはなぜか楽しそうに笑っていて。
「お見通しだった、ってわけッスか。はは、ずりぃ。」
ゴールドも穏やかな口調でそう言って、笑った。
「…よかった」
ゴールドは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「イミテ先輩が…居てくれて、よかったッス。」
ゴールドは笑って続けた。
「…会えて、よかった。」
明かりも灯っていない薄暗い倉庫の中、なぜかその言葉が悲しく響いたのは気のせいだろうか。
「お皿、片付けますね。」
「ああ、すまないね、イエローくん。」
「しょーがない!あたしも手伝うわ。」
「姉さんが手伝うなら俺も手伝うよ。」
夕飯も終わり、イエローとブルーとシルバーが後片付けを手伝っていた。
「……遅いな。2人とも。」
取り分けられた2人分の食事を見ながら、レッドが言う。
ゴールドも、もちろん彼を探しに行ったイミテも、まだ戻ってきていない。
「探しに行くぞ。」
「え…、…ああ、そうだな、行くか!」
少々迷ったレッドだったが、これだけ時間が経っていればイミテとゴールドの話も終わっているだろうと探しに行くことにした。
レッドとグリーンはイエロー達にその旨を伝え、外に出て行く。
「この周辺と言っていたな。」
「ああ。グリーン、そっちから回ってくれ。俺、こっち探すから。」
手分けして探すことになり、それぞれ別の道を進んだ。
「(まあすぐに見つかるだろう。しかし何をやってるんだ、アイツらは…)」
はあ、とグリーンはため息を1つ吐き、家の周りを歩きだす。
そこは追われている身だから目立たないようにするためか、それともめんどうだったのか、その意図は分からないが、やけに草が多かった。
それにうんざりしながらも、サクサクと草をかき分けて進む。
ぐるりと一周してみたものの、イミテとゴールドの姿はなかった。
「(レッドのほうか…)」
グリーンはレッドの進んだ方へ足を進める。
すると、しばらく歩いて、倉庫の前にたどり着いたところでレッドの姿を見つけた。
「レッ…」
声をかけようとしたけれど、思わずためらってしまった。
レッドが何ともいえない表情をして、倉庫の方を見ていたから。
やりきれないような、苦虫をかみ潰したような。
そんな、表情。
「…レッド。」
今度はちゃんと、彼の名を呼んだ。
レッドもそれに気づき、顔をグリーンの方に向ける。
「おー、グリーン。心配いらなかったみたいだ。2人とも、ここにいたぜ。」
パッと変わったレッドの表情はいつもと同じ。
すぐに声をかけていれば、その前の表情になんて、微塵も気づかなかっただろう。
「中にいるのか?なぜ入らない?」
「まあー、もう少しそっとしといてやろうぜ。俺達は戻ってこれからの作戦でもたててさ。」
「な!」とレッドは明るく言い、家の方へと歩き出す。
「…。」
グリーンは違和感を覚え、去り際に扉の隙間から倉庫の中をのぞき見た。
そしてチラリと見えたその光景。
イミテがゴールドをまるで母親が子供を愛しむかのように抱きしめていて、ゴールドは肩をふるわせていた(おそらく泣いていたのだろう)。
「(ああ…、それであの表情、か。)」
先を行くレッドの後ろ姿を見ながら、グリーンは心の中で全て納得していた。
分かって当然だ。
自分が彼女(イミテ)を想う気持ちと、彼(レッド)が彼女を想う気持ちは、寸分の狂いもないのだから。
自分の気持ちがわからないとき
言葉に表せなくなったとき
答えを指し示してくれる人がいることが
こんなにも心強いなんて
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