02 揺れる金は儚くて
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「(弓で剣を…!?すごい…!)」
イエローは素直にその事実に感動していたが、やがて我に返り、あわてた様子で言った。
「イミテさん…!こんなことしたら、イミテさんまでまきぞえくらっちゃいますよ…!」
「いいよ、別に。いい加減、あんな王の言いなりになるの、うんざりしてたとこだし。」
「イミテ、貴様…!裏切るつもりか…!」
「裏切るもなにも…アンタへの忠誠心なんて最初から持ち合わせてないから。」
さらっと答えたイミテに、王はますます怒りにふるえる。
「…おい。この場にいない他の隊の軍隊も呼べ。そして確実に、アイツらの息の根をとめろ。」
「しかし王!イミテは…」
「殺してかまわん!そもそも、以前から気味が悪かったんだ。あんな得体の知れない力を持っている奴がこの城にいるのは。」
「…!」
反論しようとしたタケシだが、王にそんなふうにズバッと返され口を閉じる。
「(散々利用されて、まさかそこまで言われるなんて、ね…)」
王が発した自分に対する非難の言葉。
想像を超えるほどの言われように、イミテは呆れたように苦笑した。
「(イミテさん…)」
心配そうにイミテを見つめるイエロー。
イミテはその視線に気づいて、少し考える。
「(このさき一生、ここから逃げるつもりはなかったけど、このままだと確実に殺される。イエロー1人で逃げ切れる可能性も低い…、か。)」
そして、真っ直ぐとイエローを見つめて言った。
「イエロー。分かったでしょ?あんな奴に復讐する価値なんてない。」
「え…。」
「それと、やっぱりイエローはこんなところにいるべきじゃない。もっと明るくて自由でいられる場所のが全然似合うよ。」
「……。」
「逃げよう。一緒に。」
言い終えた直後、イミテはイエローの足元に矢を放った。
矢からは蔓がでて、イエローの体に巻きつくと、ひゅるる、と城壁の高さまで伸びた。
そしてストンとイエローを城壁の上におろすと、スルスルと戻っていく。
「(よし。次は私が城壁に登れば…、)」
イミテが自分の足元に矢を放とうとした直後…、
「イミテさん!後ろ…!」
「いっ…!」
イエローの忠告もむなしく、イミテの腕に太い針のようなものが刺さった。
振り返れば、吹き矢を構えた王の側近が立っている。
「その吹き矢には睡眠薬がしこんである。そうやすやすと逃げられると思うなよ。」
「ッ…!イエロー!東に行けば木があるから、そこをつたって降りて。そのまま町に行けばきっと…逃げ切れるから。」
「嫌です!そんな…!イミテさんも早く…!」
イエローが精一杯手を伸ばして叫ぶ。
もちろん、城壁の高さからして届くはずはないのだが。
イミテはそれを見て苦笑して言った。
「行って。このままじゃ私もイエローも捕まる。」
「でも…!」
「私なら大丈夫。これでも数年ここで働いてたんだから、なんとか、な…る。」
くらりと、視界がゆがんでイミテはその場に膝をつく。
「イミテさん…!」
「いいから!イエロー、早く…行って。」
「…っ!」
「早く!!」
イミテが大声で叫んで、イエローはやむを得ず城壁の上を駆け出した。
「追え!」
すかさず王が命令して何人かの軍人が走り出す。
「行かせない!」
イミテは足止めしようと弓矢を片手に立ち上がるが、
「!?」
立ちくらみと、強烈な眠気が一気に襲いかかってきて、その場に座りこんだ。
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