24 君が生きた証
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「イミテ先輩には適わないッスね!しょーがない。行きますか!」
ゴールドは明るく笑って言う。
イミテは歩きだそうとする彼の服の裾を掴み、微笑をうかべた。
「ねえ。やっぱりハヤトさんのこと、許せないの?」
「え…」
「だから、ずっとここにいたの?」
「…。」
「それとももう、許してる?」
イミテの言葉を聞き、ゴールドは頭をガシガシとかいてその場に座り込む。
イミテもフッと笑いその近くの壁に立ったままもたれかかった。
「…どーせ、ウソついてもイミテ先輩には見破られるんでしょうね。」
「…どうだろうね。」
「アイツは…今どこにいるんスか?」
「もう出航したよ。この島にはいない。」
「…そうッスか。」
ポツリ、つぶやいた。
また沈黙が続く。
「……分かんないんスよ。」
ゴールドは静かに心の内を口にした。
イミテも「…うん。」と静かに相づちをうつ。
「…許すとか、許さねぇとかそういうのじゃなくて…なんつーか……、自分の気持ちが分かんねぇ。」
「…。」
「今まで俺はずっとアイツに裏切られたって思ってて、実際、そうだし…でも、それにアイツ自身が責任感じてるなんて……笑っちまう。」
ゴールドはダンッと床を叩く。
やりきれない想いをこらえるかのように。
「軍を辞めたって…なんなんだよッ…!!」
切ない…、切ない口調だった。
「俺が生きてること確認できればいいって…!そんなので罪滅ぼしした気になって……!」
「…。」
「軍人でいることが、何よりの誇りだったくせに…!なに簡単に辞めてんだよッ…!」
“俺は、軍に入ることに小さい頃から憧れていたんだ。”
かつてハヤトは言っていた。
“そのきっかけは、君の父親なんだよ、ゴールドくん。”
どこか照れくさそうに笑って、
“憧れだった。”
そう、彼(ゴールド)に語っていた。
「俺のせいで辞めたも同然じゃねーかよ!…ふざけんなっ…!!」
グッと拳を握る。
今自分が感じているのは、怒りか、後悔か、同情か、哀れみか。
分からない、全く。
ただ……苦しい。
…苦しくておかしくなってしまいそうだ。
そんなとき。
「…!?」
スッと、包み込まれるような優しい感覚にゴールドは伏せていた顔を上げた。
気がつけば、イミテが横からゴールドのことを優しく抱きしめていた。
「イミテ先ぱ、」
「よかったね。」
イミテがゴールドの言葉を遮って言う。
…ああ、触れている部分が温かい。
なんで、こんな…、
「悪い人じゃなかったんだよ、ハヤトさん。」
「悪い人って…俺は、アイツに裏切られて…」
「彼のした行動はゴールドにとっては決して味方とは言えないかもしれないけど。でも、少なくとも敵なんかじゃない。」
「…。」
「だってちゃんと、想っててくれた。ゴールドのこと。」
「…っ!」
そう…だ。
ずっと恨んでた、憎んでたはずなのに、今日彼の話を聞いて、そのせいでそんな気持ちを抱いていた自分に対して少なくとも後悔した。
でも許してしまったら、
自分は何を、恨めばいいのか。
今までの気持ちは一体どこにぶつければいいのか。
「自分の過ちを認めたの。だからハヤトさんは軍を辞めた。ゴールドが責任を感じることじゃない。」
「ゴールドは悪くないよ。」とイミテは優しく付け足す。
温かい。優しさが。
温かい。ぬくもりが。
じわりと、包み込まれているよう。
「それと、クリスの人質も逃がしたんだよね、彼は。」
「…そんな罪滅ぼし、俺は認めねえ。」
ハヤトはクリスがとられていた人質…ミナキの脱獄を手伝ったと言っていた。
でもそれが褒め称えられる対象だと言うのならば、やはり、許せない。
そんな罪滅ぼしの栄光は、認めたくない。
「ゴールドだよ。」
「は…?」
イミテが唐突に言った言葉に、ゴールドは思わず聞き返す。
「ゴールドの存在がハヤトさんをそうさせた。だから、ゴールドなんだよ。」
「なに、が、」
「助けたのはゴールドだよ。間接的に、ひとりの少女を救ったの。」
「っ、」
息が苦しい。
胸が苦しい。
この気持ちは、いまだに分からない。
「ゴールドは今の気持ち、分からないって言った。私だって、ゴールドの気持ちは分からないけど…、でもね。」
もう続きを、聞きたくない気がした
だって、今にも、
涙があふれてしまいそうだから。
「きっとこれは、喜んでいいことなんだよ。」
イミテに言われて、ハッとした。
喜んでいい?
まさか。なんで。
喜ぶべきところなんて、そんな。
頭の中を、様々な想いがかけめぐる。
「(よろこ、ぶ…?)」
ああ…、見つかった気がした。
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